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第103話

「凄く楽しそうな蒼ちゃんを見て、学びました。今まではラスボスや敵が存在して、重厚なストーリーを主人公に提供するのが私たちの務めで、それが異世界転生なのだと思ってました。でも、必ずしもそれが全てじゃない。大事な人と、好きな人と、ただ一緒に同じ時間を楽しむ……これだけを望む主人公だって居るんですよね」


「ああ。聞いたところによると今回の異世界運用で蒼ちゃんが最高に楽しんでくれた結果は、貴重なデータらしくてね。上層部が転生協会の体制を変えた方が良いのではと議題に上げたレベルらしいよ。まずは主人公の友人や家族をラスボス役にする事の許可。そしてその場合は転生先異世界で大切な人と一緒に過ごす。まさしく今回のような運用も実はありなんじゃないかって話になってるんだ」


「まぁ従来通りストーリーやバトルを楽しみたい主人公も絶対居るだろうから、死後に異世界転生したいかどうかの意思表示時にチェック項目が用意されるんじゃないかな~って思ってるよ」


 マキナが口にした予想は他の三人もしていた。


 予め定められたストーリーを仲間と共に経験する展開を望むのか、それとも大切な人がラスボス役として協会に居る場合、その人と異世界で自由に過ごすのか。その選択権は主人公にある。


「どうなるにせよ、良い方向に進んでくれたら嬉しいですね。まだ話し合いの段階だとは思いますけど。これで本当に協会の体制が変わったら、司くんが転生協会を動かしたって事になりますよね! きっと協会の歴史に名前が刻まれますよ!」


「確かにな。もしそうなったら、さすが『元』リバーシ候補生だっただけはあるね。残す功績のレベルが違う。うん」


 ニヤニヤしながら言う琴葉は司をそのネタで弄る気満々といった様子だ。


「そう思うのなら元の部分をそんなに強調しないでください。正式なリバーシへの道が閉ざされた事、全く気にしてないと言ったら嘘になるんですから」


 リバーシ候補生。それが司の本当の正体だった。


 候補生が後ろに付くという事は本メンバーでは無いのだと予想できるが、その予想は正しい。彼はリバーシの正式なメンバーでは無く、試用期間中の候補生に過ぎなかった。それでも來冥者としての戦闘力は凄まじいものだが。


「ごめんごめん。未だに信じられなくてさ。こうして私たちと当たり前のように会話している君が、まさかそうだったなんて。でも、君が元リバーシ候補生であった事を考えると、來冥者としての能力を隠したがるのにも頷けるな。リバーシメンバーの來冥力は、正体がバレてしまう要因の一つになる。少しでもそのリスクを回避したかったって所か」


「はい。でも來冥力なんていくらでも加減は出来ますし、今思えば別に隠す必要は無かったかなって思ってます。僕があまりにも隠そうとするから、結果的に前琴葉さんにリバーシなんじゃないかって疑われましたしね」


 司は今ここに居る四人で夕食を共にした時の事を思い出しながら話した。


「でも司くん、本当に残念だったね。リバーシをクビにされて。私思うんだけどさ、異世界運用の時に司くんの戦闘スタイルや來冥力を目の当たりにしたのってユエルちゃんだけだったんでしょ? 厳しいよね、たった一人でもアウトだなんて」


「まぁ僕がクビになった大きな理由はそこじゃないんだよね」


「え? そなの?」


 てっきり正体がバレてしまったからだと思っていたマキナは、きょとんとしながら訊く。


「僕がリバーシをクビになった理由は感情に任せて蓮を叩きのめしたからだよ。リバーシは常時冷静に物事を対処しなければならない。怒りに身を任せて來冥力を解放するなんてもっての外なんだ。そういう意味で僕にはリバーシとしての素質が無いと判断されたって事かな。協会中にその事が広まったのは、僕がクビになった後の話だよ」


「な、なるほど。本当に厳しい世界なんですね。確かにあの時司くんはやり過ぎでしたけど、大切な妹さんが目の前で殺されかけて、冷静でいろって言うのはさすがに無理がありますよ……。でも、それがリバーシという世界なんですね」


「一つ質問がある。良いか?」


「何ですか?」


「マキナもさっき言ってたが、異世界運用で司くんの実力を実際に確認できたのはユエルだけだったんだろう? であれば何故司くんの正体が協会中にバレたんだ? まさかクビにした事を言いふらしにエンペル・ギアの連中が協会に来たのか?」


「えーっと……まぁこれは言っても大丈夫か。……僕ですよ。協会の上層部や会長に報告したのは。その結果、衝撃の事実に上層部の誰かが情報を漏らしてしまって広まったんでしょう」


「は?」


 予想外の答えを知り、琴葉は目を丸くする。そしてそれはユエルとマキナも同じで、一体何故わざわざそんな事を、と言いたげな顔だ。


「僕なりのケジメってやつです。協会には本当に迷惑を掛けてしまいましたし、これ以上隠し事はしたくないって思ったんです。だから僕の正体と、自分はもうリバーシの人間では無い事を伝えました。ちなみにこれはエンペル・ギアにちゃんと許可を取った上でした行動です。彼らからすればリバーシで無くなった僕が今更正体を明かしたとしても、別に不利益は無いと踏んだんでしょう。特に反対される事はありませんでした」


 既にリバーシでは無い身になったとは言え、その正体をわざわざ公言する必要は全く無い。だがそれでも司は話した。恐らく、それが彼なりの協会に対する誠意だったのだろう。

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