第10話
ユエルは少しドキドキしながら司の次の言葉を待った。
「そろそろ昼休憩の時間ですよね? お昼にしましょうよ。近くに僕の行きつけのお店があるので、せっかくだからユエル先輩に紹介したいです。ここまで色々案内して頂けましたし、今度は僕の番と言う事で」
「あ、も、もうそんな時間だったんですね。それじゃあ、い、一緒に行きましょうか」
確かに言われてみればもう昼休憩の時間となっていた。色々考えたり自分の世界に入り込んでいたせいもあってか全然気が回っていなかった。
まさか後輩の新人に誘われる事になるとは夢にも思っていなかったユエルは、内心結構嬉しかったりした。少なくともあまり一緒に居たくないとは思われていないようだ。
「はい!」
その証拠にユエルが司のお誘いに対してオーケーの返事をした事に司は喜んでいた。
二人は転生協会を出て、司が普段からよく利用している飲食店へと向かって歩き出す。
高層ビルが立ち並び、多くの人が歩いている街の様子はまさに大都市のそれだ。そんな中でもやはり転生協会は圧倒的な存在感と言える。
「そう言えばユエル先輩は普段お昼とかどうされているんですか?」
「え? えーと、その……」
改めて普段の自分を思い返してみると、なかなか人には言えないような感じになっていた。そのせいか言うのを躊躇ったが、答えなかったり嘘を吐く訳にもいかなかったので正直にユエルは話した。
「私、友達が少ないので普段は琴葉ちゃんか、あともう一人友達が居るんですけど、その子と一緒に食べてますね。でも、予定が合わなかったら私一人で食べてます」
自分で言うと改めて己の友達の少なさを実感してブルーな気持ちになる。
「そうだったんですね。あ、そうだ。これからも、もしユエル先輩が他の方と予定が合わなくてお一人で食事をしそうな時、僕で良かったらご一緒しますよ。まぁもちろん先輩が良かったらですけど」
「……! ぜ、全然オーケーです! え、えと、す、凄く嬉しいです! 司くんって優しいですね。こんな私なんかにここまで付き合ってくれて……」
「え?」
「だ、だって私、声は小さいし、暗いし、楽しい話はできないし、一緒に居て退屈じゃありませんか?」
言ってから思う。こんな事を言っても司に気を遣わせるだけだと。だが後悔して謝罪の言葉を口にするよりも先に、司が返す。
「いえ、僕は結構楽しいですよ」
絶対に気を遣った返答だと思ったユエルは秒で脳内反省会を開催しようと思ったが、司のその後の言葉で一時中断された。
「だってユエル先輩、僕の呼び方で困ったり、僕に何の話題を振ったら良いか凄く考えてたりしてるのが丸分かりで、見てて可愛いですよ」
「え⁉ わ、私そんなに顔に出てました?」
「はい。ユエル先輩の事もっと知りたいですし本当は質問したい事たくさんあるんですけど、困ってる先輩見るのも少し楽しくて、思わず黙っちゃいました」
衝撃の事実を聞き、ユエルは驚きのあまり声が出なかった。




