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もしかして古典世界!?  ~転生平安姫は、元・東大志望の受験生! ガリ勉パワーで破滅エンドを回避せよ!  作者: 開かない扉
旧版(空蝉事件のあたりの旧版)⇒※23年12月8日~24年3月7日まで連載したもの。新版と展開が異なります
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※【内容刷新工事中】第二十三節 二の宮からの提案

R15指定は、一応念のために設定。

(『源氏物語』を取り扱う関係上、恋愛・性愛関係描写が出てきてしまうため)

基本、ドタバタコメディー(時々シリアスあり)です。

※この小説はあくまでフィクションであり、登場する歴史的事件、人物、企業名、大学名などは実在する同名のものとは別存在であるとお考え下さい。


【2023年11月27日連載開始】

**********現在・工事中です**********


※作品内容向上のため、現在(24年3月7日~13日まで)、大鉈振るって改良工事を行っております。空蝉事件編があまりに長期化したため、この部分の縮小・短縮化を図ることで、物語全体として流れ良く読みやすく改良したいという意図です。

(空蝉事件開始のあたりから短縮・改良版に置き換える予定です。付随して宇治・讃岐編も縮小予定)


※その結果、ここまでリアタイで読んで下さった読者様には、ご不便をおかけ致しますことをお詫び申し上げます。ご不便内容の具体例としては、大鉈振るった結果、物語の流れが変わる部分や削られたエピソードが出てくる可能性がございます。また、感想をお寄せ下さった方には非常に申し訳ないことに、一話削るとその話に寄せられた感想部分まで削られてしまう可能性があり、その点も心よりお詫び申し上げます。(感想が削られない方向を模索してみますが、その場合、掲載話と感想部分がズレるなどの現象が起こるかもしれません。)

※工事期間は3月13日までを予定しており、14日より新バージョンでの連載再開を予定しております。


※24年3月7日まで公開されていたバージョンは「旧版」としてどこかに保管する予定ですが、その中で公開されているネタは、新バージョンでの展開にて再利用される場合がございます。


**********現在・工事中です**********




【以下、旧版です】


第二十三節 二の宮からの提案


 私が讃岐の地で偶然見つけた砂糖黍サトウキビの原生林から作らせていた、純度の高い和三盆糖わさんぼんとう

 そのお砂糖が詰まった麻袋を、これまたたっぷり何袋も詰め込んだ千両箱(水戸黄門仕様)。

 どうやら、私は間抜けにもそれらを何箱も盗まれてしまったようだというのは、既に昨晩の段階から分かっていた。

 私としては「あちゃー、やられちゃったな」程度の感想だったのだが、兄や夫の見解はあれはそんな風に軽く扱ったり、簡単に諦めて良いものではないという。

 そんな風に子供が菓子を取られたのを諦めるのとは訳が違う、高価すぎる代物だと。

 しかも、今回、ウチが単なる盗難被害にあったというだけでなく、その取られた品は自分のものだと、右大臣である伯父が横やりまで入れて来たらしい。

 ここで、私としては、伯父さん、なんでそんなことを? どういう名目で? と、根本的な疑問を感じてしまう訳なのだが。

「んーー、でも、そうですね、じゃあ、その外つ国産との貴重な交易品であるか、海賊行為による盗品が疑われるような大量の砂糖、伯父様はどうしてそんな品をご自分の薬草園、もとは私のですけれど、そこで作ったと言い張ろうとしたのですの?」

「ああ、それについても一応理由らしきことを言い添えてたな。砂糖は薬になるから、病に備えて開発したのだそうだ。現・東宮が目がお悪いのを理由に、眼病によく効くと言ってな」

「あれ? 東宮様……って、師匠のお兄様ですよね、お目が悪いのですか?」

 ――師匠のお兄様というか、まあ、正確には、私が本来女御入内するはずだった人、なんだけどね。あ、でも、ちょっと待って待って。結局、源氏物語的に言うと『朱雀帝』なんだよね、その人。光源氏のお兄さんで桐壷帝の後に帝になった人。……ああ、うん、確かに眼病を患ってるシーン出てくる……ね。中盤以降の須磨明石の段あたりくらいだったと思うけど。……ここでも話的には合致するなぁ。

「そうだな。今一番お悪いのは、目だろうか。もともと身体が全般的に弱い方なのだが。……だが、その点は、まさに、そうだな。斯様な言い分が通用するのであれば、こちらも()()すれば良いのではないか?」

 光る君の師匠の言い方が、途中から妙に持って回った表現になり、少しだけ声のトーンも上がった。うちの師匠、こういう言い方をする時は、何か裏にある時であることが多い。

「んんん? ここで『()()()()()』とは? 師匠、何か思いつかれましたの?」

「東宮の眼病平癒を願って一臣下にすぎぬ右大臣が薬草園で黍竹を育てるのと、まがりなりにも弟宮にあたる私が兄の病のためを思い自ら妻に命じ最上級の砂糖を精製させるのとでは、その想いと説得力に差があるという話だ。塩や砂糖は国有専売品とする国も多い。そうした産物を国内生産をするにしても、取り扱うのが臣下である其方らであるのと、皇籍にある我がするのとでは意味が違ってこよう。普段は煩わしいばかりのこの身分、この時ばかりは活用するが良い」

 またまた至極偉そうで尊大な物言いだが、師匠からのその提案は明らかに助け舟だ。

 その思わぬ提案に、私は、それで辻褄が合うかと、ざざっと計算をしてみる。

「あ……はい、うん、それでいけるんじゃないでしょうか。師匠、凄い! 頭いい! ただ、師匠と結婚したのと、あのおばあさんを竹林見つけたのが一年くらい前後しちゃうんですけれど、そこはいかようにも誤魔化しようがありますからね。そこは口裏合わせて下さいよ? 宇治に黍竹を送ったか問題で、それは話の前後が違うと言いましたが、まさにそれを誤魔化すのと同じくらいの年数を誤魔化すことになるわけですが。でもね、砂糖生産に私がより力入れるようになったのって、師匠がうちに来て、甘党だってことが分かったからっていうのもあるんですよね~。だから、物事の流れというか、私の意気込みの方向性としては間違ってないんですよ。師匠、本当に凄い喜んでくれるじゃないですか、私が考案した讃岐銘菓の数々を。私としてはお琴の鍛錬をしてくれる御礼のつもりというのもあったんですが、それ以上に、これはもう、可愛い小動物に餌付けをしている気分というか、何というか。あと、師匠が喜んでくれた品の売れ行きは必ず良いって法則もあるので、事前市場調査にもなってたりしてますし。流石は皇子様の舌は確かというか、逆に庶民にも確実にウケる味に「皇室御用達」的な太鼓判を押してくださるというか。そして、私的に結構重要なのが、讃岐から新しいお菓子が届いた日は、お琴の鍛錬方面でも鬼の師匠の鬼しごきも、少~しだけ甘くなって、私もその分楽出来るってのがあって……」

 葵の上的点数稼ぎ問題があるので、この砂糖精製と地方銘菓生産問題、少し具体的かつ熱心に主張してみたわけだったのだが、ここで、兄から「紫葵子、お前なぁ」とまたいつもの相の手が入った。

「……いや、紫葵子、お前なぁ……それ、本当に、言葉にして良かったのか? 特に最後のは絶対隠しておくべき話だろう。今、シゲ、凄い顔してるぞ。この顔に至るまでの、表情の変遷もまた見物だった訳だが…」

「う……、た、確かに、ちょっと心の声がダダ漏れにしすぎましたわね! 師匠、聞かなかったことにしておいて下さい! 特に最後のやつ!」

「……二の姫、其方の琴の鍛錬課程については再考の余地がありそうだ。課題はもっと増やした方が其方もやりがいがあろう。手始めに日々の音階の鍛錬回数を倍にすべきだろうか。……さて、そのような些末な件はこの際どうでも良いのだが、此度の件でこちら側が掲げる砂糖精製の理由には、来る新たな年に父が新院になられるお祝いというのも付け加えるが良いだろう。あの方も甘い物がお好きだ。我が唯一父に似ている点がそれだと言われているのを思い出した。いや、むしろ主たる理由はそちらの方が良いかも知れぬ。我が父や兄へ恭順する印と受け止めて貰えよう」

「じゃあ、決まりだな。あれは二の宮、お前が父君と兄君である主上と東宮様のため、自分の妻に用意させた祝賀の品。たぶんそれが一番角が立たずに言い抜けられるだろう。紫葵子の持つ黍竹原生林の件が世に出ちまうのが玉に瑕だが、あれもいつまでも隠しておくわけにはいかないだろうしな。潮時だろう」

「でも、それだと、伯父様が主張なさってる件はどうなりますの? これ以上、波風を立てたくありませんし……何袋か分けて差し上げたら、それで満足して下さいますかしら?」

 明らかに賄賂ちっくな行為だが、それでカタがつくなら私としては楽な方を選びたい。だって、とにかくあの伯父さんって人、絶妙に嫌な場面で横槍入れてくるのだ。

 特に今回の件、実はまだまだ未解決の不思議がいっぱい貯まっているのだ。伯父さんの件なぞ早く意識の外にやって、早くそちらの方に思考を向けたい。

「その必要はなかろう。私の名を出すのだ。むしろ、私の名が出た後、右大臣家が一端出したというその盗難届とやらを、どう理由を付けて取り下げるかが見物だ」

 師匠は淡々とそう言葉を続けたが、その言葉には何か、師匠自身が右大臣家に何か思うところあるのではないかと思わせる匂いがした。

 ――そうなんだよね。源氏物語的には右大臣家って、光源氏の実母である桐壺の更衣をイビリ殺した中心人物である弘徽殿の女御の実家で、仲悪いことは確定なんだよね……。

 私がまたまたそうして源氏物語当て嵌め妄想をしている間、兄は改めて師匠に向き合い、此度の件について感謝の意を伝えるべく頭を下げていた。

「悪いな、二の宮、正直、お前からのその提案、凄く助かった。それに、お前もやっとウチの家を自分の内側の領分の一つだと数えてくれるようになったんだなと知れて、良かったぜ」

「いや、そこは其方らが甘い、と言っておこう。そのように我の提案を簡単に信じて承諾するとはあまりに警戒心がなさすぎる。莫大な富を生み出す利権を我に乗っ取られるとは考えぬのか?」

「抜かせ。お前にそれだけのことをやれる根性があるんなら、むしろこっちは願ったりだ。その調子で、着々と次期日嗣の皇子(ひつぎのみこ)候補として実績を積み上げていって欲しいもんだぜ」

 ――まあ、実際、私のあのお砂糖の山が、持参金として師匠のお役に立つというのなら、いかようにでも使って下さいませ。私自身、師匠との婚姻関係、そんなに嫌じゃないですし、実際、慣れというか、もう抜け出せないところに来ているって感じがしますし。っていうか、兄様はしきりと煽ってらっしゃいますけど、師匠、そんな次期日嗣の皇子(東宮)とかになるおつもりあるんですか!? そういう現世的出世欲みたいなものを、この人から感じたこと、これまで一度もないんだけどな~~~。雅の道に生きるお母様と同類で、お琴と雅楽の道を只管追求する修行僧みたいな感じじゃん、師匠って!


***


 お砂糖やお塩の取り扱いについて大体の方針が取りまとまったところで、光る君の師匠が兄に対し、新たな問いかけをしてきた。

「中将、話は変わるが、此度の件、紀伊の介は何と申し開きをしているのだ。事件の首謀者であることは間違いなかろうが、近衛府での尋問情況の進捗を問いたい」

「ああ、それか……。実は、奴は『何も覚えていない』と言っている。昨晩、お前たちがあの場にいたことすら覚えていないと言い張るどころか、ここ数週間の記憶がすっぽり抜け落ちていると言っている。うちの右の近衛の精鋭が取り調べた結果だ。それなりに拷問も受けただろう。その上でそんなことを言うとは、本当に記憶が欠落しているのか、あるいは罪を恐れて口をつぐんでいるのか……」

 ――う、うわぁ……拷問とか、嫌な話聞いちゃったな。

 紀伊の介は相当気に障る種類の人間だったが、そんな人でも拷問を食らったと聞くと、背筋がぞわりとする。

「普通ではない言動をしていたので、普通でない精神状態であったとしても不思議ではないが……。ただ、意図的に口をつぐんでいるのだとすれば、その理由は、公式な罪への恐怖ばかりでもあるまい。奴の背後に何かより大きな存在があり、そちらを恐れているという可能性もある」

「……ああ、何が言いたいかは分かるつもりだぜ。蜥蜴の尻尾切りに注意しろってことだろ。奴の牢には厳重に監視つけてある。自死もできないようにしてあるしな」

 ――ううううう、まただ。なんでそんな物騒なことを、さらりと言えるのか。ついでに、蜥蜴の尻尾切りなんて言葉を本当に自分の周辺で聞くことになるとはって感じだよ!

 そうして物騒な比喩表現をサラリと交えながら、兄と夫の会話は続いて行く。

「裏に誰かいるかも知れぬという話に関わるが、確か此度の件、盗賊団といった組織的な犯罪の可能性が指摘されていたと思う。そちらはどうなのだろうか。紀伊の介の周辺で誰か協力者がいるといった情報は出て来ているのか」

「いや、それがな、正直、よく分からなくなっているのが現状だ。実は、あの晩の未明になってから件の盗賊団と思しき集団は別途捕まったんだ。紀伊の介の館での騒ぎが起こったことで市中警備状態が一端、あの場所へ集中した、それを察知した盗賊団の方が自分たちに手が及ぶのを恐れて京の外に根城を移そうとしたらしい。それをうちの弟が、ああ今回引責問題で渦中の一人となってる現・紀伊の介の方の弟だが、あいつが中心になって捕まえている。弟が言う話こそ、それこそ神がかっていて本気でよく分からんのだが、何でも筋肉がピクピク動いて、そちらの方角に何か悪しき存在が隠れているのを教えてくれたと言ってる。……なんで俺の弟妹は、こうも揃って、そんな動物的勘みたいなものに頼って無鉄砲かます奴ばっかなんだ……? しかもそれが当たりやがるし」

 ――うわ、また、こんなところで三の兄上が! あの人、本当に運がいい時は当たりを引きまくる人なんだよね。それこそ、物的な勘の良さで。双六やる時もいつも信じられないほどサイコロの目の運がいいし。

 今回、紀伊の権守という立場の前任、後任問題で三の兄にも責任問われるかも知れないという話が出ていたが、そんな風に別方面でお手柄上げているのなら、たぶん、その功績と引き換え(バーター)でお咎めなしの方向に決まるだろう。もともと権守の役目も遥任で完全なる名誉職だったのだろうから、例えお咎めあってもごく形式的なものであったろうし。

「其の儀、其方は弟妹に限って発言しているが、同様の傾向は其方自身にもあると言っておこう、頭の中将。紀伊の介の館で火災が発生してから以降の其方の行動原理は、中にいる我らが、というより二の姫がか『絶対に何かやった』という決めつけてのものだろう」

「いや、そこは違うだろ。俺のその言葉は、勘っていうか経験則に基づいてだぞ? 決して、そこの神がかり娘や筋肉馬鹿な真ん中の弟のようにではなくてだな。ついでに俺にとってはその『弟妹』ってくくりには、妹婿いもうとむこの義弟様も入ってるつもりなんだがな、二の宮! お前、紫葵子にかこつけて、自分を騒ぎの原因から除外しようとしてるが、さっきも言った通り、お前自身、騒ぎの種撒き散らす側の人間なんだからな! そもそもお前との出会いからして、そうだったじゃないか! お前が、大陸に渡って楽士がくし通詞つうじになるなんて抜かして海賊船に密航までしてくれやがって、それで主上からの内々の命令で俺が迎えに行く羽目になり、しかも今上帝の手中の玉たる大切な宮様の経歴に疵を付けるわけにはいけないって理由で、公式記録上は、俺がその楽士になると主張してたってことにして事態を丸く収めたんだよなあ?」

 そう言いながら、兄は手にした檜扇を手の中でパンパンと二回ほど打ち鳴らし、その後その扇を師匠の鼻先にぐいぐいと近づける動作をした。

 それに対し、光る君の師匠は自分の檜扇を顔の前で広げると、ぷいっとそっぽを向いた。これは完全に、子供が親から叱られている時によくやる、あのポーズだ。

 ――おおっと、これはかなり興味深い話が出て来ましたよ!? 例の、兄様が大陸に渡って楽士になるって言い張ったってエピソード、裏にはそんな事情が!? いや、言われてみれば、それ、いかにもお琴馬鹿な師匠の方が言い出しそうなことだって、そう思うけどさ!

「……そのような昔の話はとうに忘れた。だいたい、公式記録がそうなっているのであれば、そちらが正しいのではないか、楽士志望の左大臣家の若君? ……あれは、我なりに己が将来の重大事につき深謀遠慮を重ねた上での行動。決して軽挙妄動ではない」

「あのなあ、二の宮、お前、その手の漢語をよく振り回しやがるが、意味、ちゃんと分かってんのかよ? あれが、軽挙妄動じゃないってんなら、何がそれを指すんでしょうね! 海賊船に密航した割に船酔いで吐いてバレて、速攻で港に戻された、深謀遠慮が得意な宮様!」

 兄と師匠の間では、またまたいつもの如く言ったら言い返すの応酬が始まってしまったようだ。

 ――うわあ。しかも、師匠、海賊船に密航した挙げ句、酔って吐いちゃったの!? それはそれは……いかにも、この皇子様がやりそーなネタだわー。ついでに、師匠と一兄いちにいのなんとも言えない微妙な距離感の関係性、ちょっと分かってきたなぁ。この二人、性格がまるで違って、意見対立繰り返してる割に、根本的なところで妙に親しげというか、信頼関係にあるというか、そこが変だと思ってたんだけど、そういう過去の経緯が色々あった訳かぁ……。

 ――で、そこのところ、もっと詳しく! と思わないでもないのですが、でも、ここは師匠に対し、さっきまで庇ってくれたお礼を兼ねて、私が助け舟出してあげる場所じゃない……?(葵の上としての点数稼ぎ問題からしても!)

「あ、あの……兄上様、背の君様? 大変興味深いお話が続いているように思いますが、またまた本題からは少し距離が出てしまったように感じられます。そのお話の続きは後でゆっくり聞かせて頂きたいところですが、ここはえーと、何でしたっけ、盗賊団による組織的犯行でしたかしら、その当たりまで話を戻しませんか? それが本筋ですよねえ?」

 ここで、光る君の師匠は、バツ悪そうにコホンと一つ空咳払いをすると、そのあとはまた超絶クールな声を作って(でも、今回は作り声だってその場の皆にバレてるけどね!)、話し始める。

「では話の流れををまた戻すとしよう。その盗賊団捕縛の件を踏まえると、紀伊の介の件は全くの別件、単体で起こされた事件と見なされる、ということだろうか」

 兄の方は、その師匠の作り声(ちょっと語尾震えてた)に対し、プッと一つ笑いを漏らした後「仕方ねえな」という、いつもの調子で応じる。

「それも、本当に正直分からない。あれは前・紀伊の介が個人的にうちの讃岐の荘園に出入りがあり、砂糖や塩といった高価なブツが山積みにしてある割に管理体制に穴があるのを見つけ、隙を見て奴一人の力で盗んだのかも知れない。あるいは、他で捕まった盗賊団と関わりがあったのかも知れない。大陸出の娼婦たちもいるからな、そっちは明らかにウチとは無関係だしな。……無関係ではあるが、だが、そうだな、それをどう言い抜けるが、また難しくもある」

 師匠は、兄のその言葉を聞き、さきほど広げた扇を縦にさっと振って畳んでから、私の筆頭女房である少納言の方を向いて言う。

「……そうか、では、このあたりで野萩を呼んで貰いたい。彼女の尋問はどちらにしろ必要だ」

「ああ、まあ、そうだな。俺も何点か確認したいことがある。少納言、野萩を呼んで来てくれ」


次回更新予定:明日朝8時頃 (基本、毎日更新です)


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― 新着の感想 ―
[良い点] ほうほう。光る君、頭の中将、ヒロイン、とそれぞれのキャラが立ってますます面白くなってきました。次の話に行こう!
[一言] 「筋肉がピクピク動いて、そちらの方角に何か悪しき存在が隠れているのを教えてくれた」www もう、そこしか覚えてないw
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