※【内容刷新工事中】第二十二節 黄金の竹林を持つ少女
R15指定は、一応念のために設定。
(『源氏物語』を取り扱う関係上、恋愛・性愛関係描写が出てきてしまうため)
基本、ドタバタコメディー(時々シリアスあり)です。
※この小説はあくまでフィクションであり、登場する歴史的事件、人物、企業名、大学名などは実在する同名のものとは別存在であるとお考え下さい。
【2023年11月27日連載開始】
**********現在・工事中です**********
※作品内容向上のため、現在(24年3月7日~13日まで)、大鉈振るって改良工事を行っております。空蝉事件編があまりに長期化したため、この部分の縮小・短縮化を図ることで、物語全体として流れ良く読みやすく改良したいという意図です。
(空蝉事件開始のあたりから短縮・改良版に置き換える予定です。付随して宇治・讃岐編も縮小予定)
※その結果、ここまでリアタイで読んで下さった読者様には、ご不便をおかけ致しますことをお詫び申し上げます。ご不便内容の具体例としては、大鉈振るった結果、物語の流れが変わる部分や削られたエピソードが出てくる可能性がございます。また、感想をお寄せ下さった方には非常に申し訳ないことに、一話削るとその話に寄せられた感想部分まで削られてしまう可能性があり、その点も心よりお詫び申し上げます。(感想が削られない方向を模索してみますが、その場合、掲載話と感想部分がズレるなどの現象が起こるかもしれません。)
※工事期間は3月13日までを予定しており、14日より新バージョンでの連載再開を予定しております。
※24年3月7日まで公開されていたバージョンは「旧版」としてどこかに保管する予定ですが、その中で公開されているネタは、新バージョンでの展開にて再利用される場合がございます。
**********現在・工事中です**********
【以下、旧版です】
第二十二節 黄金の竹林を持つ少女
「黄金の竹林……?」
流石にその言葉は意外だったのか、光る君の師匠は鸚鵡返しにそう尋ねて来る。
「砂糖の原料となる、黍竹の原生林だ。本来はもっと南の、琉求くらいまで行かないと生えてないはずなんだが、紫葵子個人が持つ山の中に何故か生えてるんだよ」
「まず先程から繰り返されている、その二の姫の『個人』というのが分からない。竹林……それは左大臣家が所有するものではないのか」
「違うな。いや、もとはうちの、藤原摂関流全体で所有する土地だったんだろうが今はちゃんとした証文付きで紫葵子個人の物になってる。ああ、この際だから、お前にもちゃんと説明しとくか、その経緯を。そこで今、猫の尻尾を引っ張ってる『聖女・光明皇后の生まれ変わり様』はだな、先の山城と大和の国での疫病流行の折に、薬草園を開墾し熱冷ましの丸薬を作りまくって売りまくり、世の役に立った上に、我が家の財政も大きく潤した。その褒美に、うちの祖父様からその薬草園を造った宇治の川縁の土地を貰うはずだったんだ。ただ、その土地はうちの家が先祖代々『嫡子』に継がせてきたっていう経緯があって、正妻の子で嫡流を自認する、俺たちの伯父貴、現・右大臣殿から物言いがついた。それで結局、こいつはその薬草園ごと伯父貴に取り上げられてしまった訳なんだが、祖父様がそれを大層哀れに思ったらしくてな。今度こそ必ず我が愛しの孫娘、今・光明子様個人にやるんだと言って、その讃岐にある小高い山というか丘を一つ、今度はちゃんと証文付きで紫葵子に譲ったんだ。形が丸くて可愛いだけで近くに人里もなく、林業やるにも小さすぎる土地だったから、伯父貴からも今度は物言いがつかなかった。だが蓋を開けてみれば、そこは宝の山だったというわけだ。この件伯父貴どころか祖父様にもまだ知られてない。俺と親父とお袋殿と、あとは直ぐ下の弟くらいまでしか知らない話だ。無価値の土地だと思ってくれてやったつもりの伯父貴に、これが知られたら、どう出てくるか……」
「……なるほど。かなり複雑で、かつ大きな話だということは分かった。右大臣家との確執問題か。それで、再度確認しておくが、あの砂糖はその黍竹の原生林をもとに、左大臣家所有の荘園内で生産されたものなのだな」
「そういうことになるかな。ま、実際には、そのあたりの生産工程も全部、そこの……おい、猫をそんな格好で宙づりするんじゃない、流石に可哀想だろが! とにかくそのなんだ、そこの猫の逆さづり娘が管理しているわけだ」
「流石にと前置きせずとも、それは明らかに動物虐待にあたろう。少納言、あて君をこちらに。北の方が何と言おうと猫を引き剥がせ。……しかし、二の姫が生産工程までを管理……? 女人の身でそこまでの荘園経営に携わるのは並大抵のことではあるまい。それを当然の如しという風に言ってのける頭の中将、其方の神経も如何な物か」
「如何もへったくれもない。その、猫を取り上げられてふて寝をはじめた『竹姫』様は、なよ竹のかぐや姫よろしく、無価値だと思われていた竹林から黄金を生み出しているんだよ!」
師匠は、ここで猫を抱きながら暫く黙りこくり、何かを考え込んでいた。
「その件、未だに少し腑に落ちない。というより、想像がつかない。いくら原材料である黍竹といったか、その植物が自生していようとも、そこからあの純度の砂糖を精製するのは並大抵のことではあるまい。どこにそのような技をもった技術者が?」
「それも、お前の目の前で猫を取り返そうと躍起になってる、そこのタコ娘だ。おい、紫葵子、説明できるか、俺が何度聞いても理解できない、その盆で研ぐという技法を」
「あ、ふぁい。えーと、あの品質まで砂糖を精製するには、まず黍竹を切ってきたら出来るだけ早いうちに絞って、得られた液体をぐつぐつ煮て、灰汁を取って、煮詰めて冷やすんです。そうして取れた茶色っぽいネバネバする液体を布で濾して不純物を取り除き、また煮詰めて布を当てて絞ってというのを何回か繰り返します。そうすると、もはや液体というよりちょっと粘土みたくなっていて、もうそれ以上はいくら圧力をかけても絞れなくなります。この時点で色はそうですねー、薄茶色から濃いい黄土色くらいになるでしょうか。そうしたら、お盆の上でちょっと水をかけてやって生地を緩めてやってから何回も練って、それを布ごしに圧搾してやるとまた不純物が布ででこされて、どんどん白に近い砂糖になって行くのです。お盆の上の研ぎ作業はだいたい三回以上は繰り返しますね。普通はその粘土状態になったところで諦めてしまうんでしょうが、それだとまだまだ不純物多いんですよ。それを一度水で緩めてネバネバ状態にして、練ってまた圧搾、それが大切なんです」
――この辺りの知識はお任せを! 前世で私の通っていた公立小学校では五年生の時の社会科見学は砂糖工場と決まっていて、そこでは近代的な製糖技術の他に和三盆などの伝統工芸的な製法も詳しく紹介されていたのですよ! 見学に行った際、私たちの班はその伝統技法について模造紙十枚に取り纏めた研究発表を行い、見事、小学校長賞を取ったのデス!
この発表ばかりは、班長として率先して取り纏め役しておいてホント良かったと思っている。胡椒も〇川の日本史教科書も持って来られなかったけれど、この製糖に関する知識は、ちゃんと私の頭の中に残ってたんだから!
「なるほど。人力での圧搾の限界を、一度敢えて水分を含ませることで生地の粘性を弱め、再圧搾可能としているわけか。呼び水の原理だな」
「おい、あいつのあの適当な説明で分かるのかよ。お前ら、本当にどういう頭の構造してるんだ?」
「擬態・擬音語が多すぎる口語説明が聞きずらかったが、一応、理解は出来た。私が気になるのは、二の姫のそうした知識がどこから来ているのか、ということだが」
――う……、それは一番突っ込まれたくないところだな。小学校の頃社会科見学で、ってネタが通じないのなら、もう何言っても無駄な話なのだから。でも、もし突っ込まれたら……今日はどの神様のお世話になろうかな……。
「それは、いくらこいつから聞いても出てこないぜ。毎回毎回、変な神様の名前でお告げがあったと、そう繰り返すだけだからな」
――あ、馬鹿兄貴! 変なって、言うなーーーーっ! 毎回毎回、それらしき神様の名前を古事記とかで調べて来るのは結構大変なんだからね!この前の猫神様だって、結構探し回ってやっと見つけたんだから。「それらしき神様」の数は有限なので、上手く使い回さないとならないんですよ!
「お告げ、か……」
「そうだな、今回のバサラなんとか神みたいな適当な名前を何度も何度も言われてだな」
「婆珊婆演底主夜神だな」
「……いや、もう、いいぞ、シゲも、そんなに何回も繰り返さなくても。どうせ、本当にいるのかすら分からん神様なんだからな」
「そして、純度の高い塩や身の詰まった大粒の麦なども、同じくそうした神託の賜物だというのか?」
「ああ、そういうことになるな。そういうのも全部、こいつが色々な神様からご指摘を受けて工夫して、加工純度と生産性を上げてやがるんだよ」
と、こんな風に、夢のお告げの件、もっと追及されるかと思ったけれど、これもまた案外上滑りしただけで逃れられた。それはそれで重畳だったのだが。
――もしここで、お塩についても問い詰められたりしたら、小六の時の夏の自由研究で塩とタバコの博物館(旧専売公社博物館)の見学成果を四〇〇字詰め原稿用紙五〇枚にをまとめた時の話をしなくちゃならない訳ですが! で、あと、麦の方は生麦のビール工場見学の(以下略)。
ここで光る君の師匠は、またパンと一度扇を鳴らし、新たな問題提起をして来た。
「あの大量の農産・海産物が二の姫個人のものだということは分かったが、では、どうするつもりなのだ? 一般には大陸産の輸入交易品と見なされる品だ。あの純度のものをあれだけの量、国内で生産出来るという話は今だ朝廷には報告されていない。それが今回、公になっているのではないか。頭の中将、君はあれを隠し通せたのか」
「いや、流石にそれは無理な話だろう。下手に私情を挟んだ隠し立てをしたら、俺の首が飛ぶ。ついでに二の宮、俺に『隠し通せたのか』とか言いつつ、本当にやってたら、お前がそれを告発するだろうが! 分かってるんだぞ、お前のその融通の利かない性格は」
「あの場で君に先に麻袋を提示したり、その後もこうして非公式な聞き取りの場を設けているだけで十分融通を利かせていると思うが? で、実際のところ、どうするつもりなのだ。盗難にあったという正式な届けを出すのか。届け出るなら、それは左大臣からなのか、二の姫個人からなのか」
「ああ、そうだな、そこは考えどころだ。ああ、被害届っていえば、ちょっとこれもまた困ったことにはなってるな。伯父貴のやつが、その、今回紀伊の介の屋敷から出て来た砂糖の山の一部は自分の薬草園で栽培している植物から出来たものだと主張して届け出を出してきた。そこで、紫葵子に問い合わせたい。そんなことあり得るのか。お前はあっちの宇治の方の薬草園でも黍竹育てたりしたのか?」
――おっと、それはまたまた急展開だ。伯父さん、本当にいつも嫌なタイミングでご登場なさる。
私は、兄から問われた件を正確に思い返し、返答した。
「いいえ、宇治の地で黍竹を栽培しようとすると、どうにも気候が合わないと思います。それに、そもそも時系列がおかしいです。私が宇治の薬草園を取り上げられて、讃岐に行ってからあの山であのおばあさんと一緒に黍竹が見つけたんですから。その後あちらの薬草園とは交流もありませんし、黍竹の苗などを送ったこともございません。何より……これはわたくしからの質問になりますが、あそこにあった砂糖は全部同じ品質のものでしたか? あの品質は私の讃岐の荘でのお抱えの者にしか出せません。もし、あのサラッサラのお砂糖とは違う感じの物が混じっていたのなら、それはもしかしたら伯父様のものなのかも知れませんけれど」
「……品質は全て同じだった。お前が創り出した『和三盆』といったか、あの白に近い薄い黄色の砂糖だ」
「じゃあ、それ、全部、わたくしのです」
「少し待ってくれないだろうか。今、気になる言葉が出て来たのだが。他の話題に流されない内に問うておきたい。黍竹と一緒に……その、老婆というような言葉が挟まったと思うのだが」
「ああ、そうです。そうなんです。私、あの黍竹の原生林で、なよ竹のかぐや姫ならぬ、おばあさんを見つけたんです。生きてること自体が不思議なくらい高齢な方で……。自称、何歳だったのかなあ、百歳は優に超えてるといったことを言ってました。結構品のあるおばあさんで、昔は京の都で上流貴族の子女に勉学を教えてたと言ってましたね。でも、ここ数十年は、ずっとあの竹林で一人で暮らしてきた、とも」
――正確に言うと、讃岐に引っ越した直後「周囲の探検だ!」とあの丘に遊びにいった時に、先にお婆さんに出会って、それで「この山に入るな、帰れ!」と追い返されるてのを何度かやって、お婆さんの出す変なクイズみたいなのに何度も答えて私が「合格」したからやっと竹林に入れて貰えて、入ってみたら、そこには竹っていうよりもどう考えても砂糖黍にしか見えないモノが生えてたんだよね~~。
砂糖黍は栄養豊富だから、それを食べてたお婆さんはこの時代の人としてはあり得ないくらい長生きしてたったってことなのだろうと、私なりに考察しているのだが。
「あの竹藪比丘尼か。百歳越えは流石に嘘だろうと、俺は思っている。たぶん、都で何かやらかして追放の憂き目にあった者だろうな。知識は確かに豊富だったが、やたら偉ぶるところが難だったな」
「でも、結局、兄様が気に入って、私の指南役の一人に加えたんですよ?」
「お前がそれこそ蛍雪の功までして飛ばしまくるから、指南役のなり手が他にもういなくなってたんだよ!」
ここで、また師匠がパチンと扇を鳴らした。
「……両者とも、そのあたりにしてもらおう。事情、あい分かった。その老婆の件は今回の儀には直接関係はないようだな。昨晩、紀伊の介から出た妄言の中に二の姫が不老長寿の薬を開発したような件があったが、それがその老婆の件を誤解してということなのだろう、話が繋がった。では、話を元に戻そう。右大臣が被害届を出してきたのだとすると、では、左大臣家側はどうするつもりなのだ」
「もう、いいです。伯父様があれ欲しいというのなら、全部あげます。砂糖ならまた作ればいいだけの話ですし」
「おい、毎回思うんだが、紫葵子、お前、そこで諦めが良すぎないか? 欲がないというか何というか」
「欲がないという次元の話ではあるまい。あの量の砂糖や塩だ。個人的感情で簡単にいる、いらないと、判断してしまうには高価すぎる代物だ」
――いや、だって、そういうところで欲をかいてもさ、今更、私、東大に行けるわけでもないし(もし行けるっていうんなら、何がなんでもその条件クリアしますけど!)。女御入内の方も既にどうでもよくなって来ちゃってるしね……。
――しかし、個人でどうこう出来るレベルを超えてるねぇ。あの砂糖、そんなに凄いものだったの? 確かに、純度を上げる技術は後の世(確か江戸時代って砂糖工場の壁に書いてあった)に発見されたものにしろ、それでも工場での大量生産ではなく手工業の域を出ない技術だよ? あそこまでの精度を求めなければ誰にでも出来るものじゃないの? くらいに思ってたんだけどなぁ。
次回更新予定:明日朝8時頃 (基本、毎日更新です)
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