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第十一節 バッドエンドを回避せよ!

R15指定は、一応念のために設定。

(『源氏物語』を取り扱う関係上、恋愛・性愛関係描写が出てきてしまうため)

基本、ドタバタコメディー(時々シリアスあり)です。

※この小説はあくまでフィクションであり、登場する歴史的事件、人物、企業名、大学名などは実在する同名のものとは別存在であるとお考え下さい。



【2023年11月27日連載開始】

 第十一節 バッドエンドを回避せよ!


 源氏物語の話の上では、私=葵の上の死は確定している訳なのだが、当然、私は死にたくはない。

 だから、先程から、つらつらと、その最悪の結末であるところの葵の上の呪い死に状況と、それに至る原因を考えてみたのだが……。

 ――端的に言ってしまうと、あの情況に至る原因はもっぱら「光源氏がマザコンだから」の一言に尽きるんだよね~!

 でも、そこまで端折ってしまうと「傾向と対策」の立てようもないので、一応、ここで源氏物語序盤のストーリーを、私……じゃなくて「葵の上」が死ぬあたりまで、再度おさらいしておこうと思う。

 ――しかし、こうなると、私、日本史選択すべきだった問題に重ねて『源氏物語』についても現代語訳読むだけでなくもっと原文に触れておくべきだったと後悔しきりな訳ですよ。あーあ、件の高校時代の古文教師はよく「先生はな、高2の夏休みに自分に一つ課題を課してみたんだ。『源氏物語』を自力で全訳をするってな。案外出来るものだぞ、高2までの古文の知識をフル動員すればな」って自慢していたけれど、私もそれをやっとけば良かったって話なわけですが! でも、ホントに東大理系志望だと古文にそこまで勉強時間割けないんだよ~~~!(もう、何を言っても仕方ないことですが……)

 ――そんな訳で、私の「おさらい」も、記憶の中では十八年以上前に読んだ『源氏物語』の現代語訳版通称『与謝野源氏』と『谷崎源氏』、あとは高校の学級文庫の一部としておいてあった漫画版の源氏物語をチラリと見たくらいの知識をベースにしてのお話となります。漫画版源氏物語はね、本当にチラリとみた程度。実は、私、漫画の読み方が良く分からない人なのですよ。伯母に小さい頃から「そんなもの読むと頭が悪くなります」って禁止されていたこともあり。コマ割というのでしょうか、あれが上に読んだらいいのか下に行ったらいいのか分からなくなって、それでそれを迷っているうちにガマの油のようにたらーりたらーりと脂汗が出て来てしまうのですよ。アニメだとまだイケるんだけどね。勿論アニメも伯母には禁止されてたけれど、あれは見れてしまう時は見れてしまうものなので。ええ、黄門様の再放送時間の前後に流れるロボットアニメ再放送などは時々見てましたよー。って、それは今は関係なくて、さて、では気張って『源氏物語』のおさらいにいきましょう!


 ***


 まず、光源氏は幼い頃に生母「桐壺の更衣」を亡くし、その後、父が後妻(と言っても当時の天皇には妻が何人もいたのだが)として迎えた「藤壺の女御」という女性になつきまくる。なつきはじめた最初のきっかけが周囲の人に「お父様の新しい奥方様は、亡くなったあなたのお母さまにそっくりなんですよ」と言われて興味をもったから。実際、お父様の桐壺帝がその人を妻に迎えたのも、溺愛していた桐壺の更衣に顔立ちが似ているという噂を聞きつけ「それなら是非、新たな妃に」って経緯だった。

 光る君としても藤壺の女御を最初に紹介された時の「お母様ってこんな感じの人?…凄く綺麗な人なんだけど……」という第一印象から始まって、周囲の人も「顔立ちがそっくりなので本当の親子のよう」って囃し立てるから、光る君的にはどんどんこの「お母様のような人」に傾倒し、敬愛しまくる訳だ。父の妻とは言っても、もともとその父親自身と親子ほど違う年齢の女性を妻に迎えているので、光源氏と藤壺の女御の年齢差は姉と弟程度にしか離れてない情況。つまりは、最初の最初から、この二人、母息子というには「危うい」関係だったのだ。

 ただ、光源氏が藤壺の女御にいくらなついていようとも、この時代、成人の儀式である元服を迎えてしまえば子供扱いして貰えなくなり、「父の妻」の側には寄せて貰えなくなる。

 そして光源氏自身も政略結婚として年上の妻を迎えることになるが(これが私ってことですよね)、この姫は顔や家柄は申し分ない高貴さなのだが性格に難ありで(これも私ってことですよね!)、どうにも馴染めない。年上というから、藤壺の女御のような女性だと思ったのに、それとは全然違う(悪かったですね!!!)。

 で、ここから光源氏の「藤壺の女御のような人」探しの長~い旅が始まる。はっきり言って、自分より少し年上の高貴な女性の噂を聞くと必ず「藤壺様みたいな方だろうか?」と妄想してしまうらしい。

 そうして、光源氏の「年上で高貴な女性(もしかして藤壺の女御に似てるかも?)」リストに上がった女性の代表格が、先の皇太子の未亡人である「六条の御息所」や、父の弟宮の娘で年上の従姉にあたる「朝顔の斎院姫」だったりする。で、前者の未亡人は何度も口説いてどうにか自分の愛人にすることに成功するも、後者の宮姫には「私は貴方のような煌びやかな殿方の数ある妻の一人になって苦しむのは嫌ですから」とすげなく袖にされる(……私、自分の性格的には、どちらかというとこっちの朝顔の姫君の役の方が良かったんですけど……)。

 で、その口説き落とせた方の六条の高貴な御方は、元皇太子妃というあって本当にプライドの高い女性なのだ。プライドが高く、隙がなく、全てきちんとしていないと気がすまない。そして格式と外聞も重視する。そういう女性なので、光る君におかれましては「最初の頃の熱が覚めてみれば、この女性もやはり藤壺女御には負ける。やはり安らげない」って言って、足が遠のいちゃう訳デス。

 ――このね、「プライドが高く隙のない女性」って、言ってしまえば、私と同じ(あ、ついに自分で言っちゃった……!)―正妻の葵の上と同じタイプなわけですよ。正妻がお堅いタイプで安らげないから他の女性を求めたってのに、なんで、よりによって同じ系統にしたんだ!? と、思うんだけど、でもこれは、最初の目標値設定の時点で「年上の高貴な女性」が条件なわけだから、ある意味必然なのか……。

 で、その後、光源氏は、男友達(うちの長兄の頭中将を含む)から「下手に高貴な女性よりも中流貴族クラスの娘の方が良い」という噂を聞き、その中流クラスの「空蝉の君」やら「夕顔の君」といった女性と関係を持っていくのだけれど、これが六条の尊き御方のプライドを大層傷つけることになる。

 六条の御息所としては「私というものがありながら、そんな身分の低い女なぞにフラフラとして! どういうことなの!?」という訳だ。

 ――いやー、これ、本来、正妻の葵の上の台詞であって然るべきかと思うのですが、不思議とそれは源氏物語の本編には書いてないのです。ただ、そこが正妻という確固とした位置づけになっていた葵の上と、正式な妻という訳ではないい六条の御息所の立場の弱さ故の感情の差なのだと、これまた高校の古文の先生が言ってた気がする。

 ただ、ここはね、いざ自分が物語の内部に入ってみると「ああ、そういうことか」と思う点でもあったりする。だって、私たちは偽装結婚の偽物夫婦だから、相手の女性に嫉妬のしようがないのだ。流石に、最初に六条の君の件を聞いた時は、私も驚きはしたけれど、でも、それはどちらかというと、姉的な感情というか、親戚のお姉さんの視点? 実際、少年は従弟だからそのまんまな訳だけど。「ウソ、少年ってば、どうしちゃったの? あんなに可愛く半ズボン似合いそうな清純路線だっったのに!?」的な驚きだ。

 さっき本人の前で少し怒ってみせたのだって、光る君自身から六条の御息所という言葉が出るかどうかを試したいという意図があったからであって、現状、私の側の感情は嫉妬というものからはほど遠い。

 まあ、ウチの父などからしたら、後ろ盾として色々出資しているのだから、愛人など囲ってくれるな、少しは外聞を気にしてくれよっていうのはあるかも知れないけれど。

 ――えーと、このあたり、本題である「傾向と対策」からは、ちょっと脇道に逸れて来たかな、私や父の側の感情なぞ、この際、どうでもいいのですよ。

 でね、ここからが非常に重要なのだけれど、光源氏がそうした浮ついたラブハント行動を繰り返した結果、何か起こったかというと、嫉妬に怒り狂った六条の御息所が生き霊と化して、その当時源氏が一番お気に入りだった「夕顔の君」を呪い殺してしまうのデス!

 そう! 実は、私が呪い殺される前にも、もう一人、被害者がいる訳だ。

 ココ、重要ポイントだと思う!

 源氏物語の本文の描写でも、明確に「六条の御息所が」とは書いてないのだけれど、呪いの本体である生霊の顔立ちや生霊の残していった残り香などなどが六条の御方を思わせるもので、光源氏の中では、夕顔の殺人犯=六条の御息所でほぼ確定事項になっていたようなのだ。そして、そう思えるからこそ、光源氏はもう怖くて六条へと通う足が遠のいてしまう、と、そんな風に紫式部は描いている。

 で、この後も、光源氏は六条の御息所を顧みることなく更に「末摘花の君」とか「源氏の典侍」とか「朧月夜の君」とか、色々な女性と浮名を流していくことになる。

 そして、そんな風に色々と大人の男としての階段を登ってしまった光源氏の君は、結局自分が追い求めた「理想の女性」はやはり藤壺の女御しかないと気付き、折しも実家に里帰りをしていた藤壺の女御に「色々な女性をあたってみたがやはり自分には貴女しかいない」と迫り、その後は不倫関係の泥滑に陥っていくメロドラマ展開になるのだ。

 藤壺の女御はそうして一度だけ光源氏を受け入れたもののその後は激しく後悔し、その後は源氏を徹底的に拒否し始める。そうなると、また光る君は荒れてきて、色々な女性に手を出し始める。その「色々な」の中に何故か正妻も入ってるのか、このあたりで葵の上は妊娠する(!)。

 ――ココ、今の私たちの状態からするとどこをどう転んだらそうなる!? という感じだけれど、物語上はそうなのです! 

 そうなると、今度は六条の御息所の方も「仲の悪いはずの正妻は子を得たのに、私のもとには何故彼は来ないの!」と荒れまくる、そして、夕顔の君の時に続き、再度生霊となって、今度は妊娠中の「葵の上」を呪いに来る。葵の上は、この六条の御息所の生霊襲撃により、身体を酷くやられ何度も流産しかける。このあたり、本当に悪循環そのものといったストーリー展開だ。

 で、結局、葵の上は源氏の子供を出産した後、産後の身体が一番弱っているところを狙って襲ってきた六条の御息所の生霊に呪い殺され、ジエンド。


 ***


 ちょっと長かったけれど、これが、予言されている「私」の未来ということになる。

 ――ね、こうしてまとめてみると、結局のところ、光源氏に本当の「お母さん」が死なずにいてくれて、そこで母性的なものが十分に満たされてたら、こんなことにはならなかったのにという気がするでしょ? 年上の高貴な女性を求め続けるって、完全にそれが原因ですものね。それ故、敢えてマザコンという言葉を使ってみたのですが。

 ただ、私自身にも経験があるのだけれど、子供が親を欲する、特に幼児期に母親を欲すのはごく当然のことで、これは誰にも止められないし、止めていいものでもない。

 実は、私も前世では実の親との縁は薄くて、生まれてすぐに母方の伯母の養子入り、伯母を義母として育っている。伯母さんは厳しいけれど滅茶苦茶良い人で(あ、財布の紐にも厳しい人だけど!)、私は自分の育ちに関してはあまり不満は持っていない。だけど、それでも小さい頃は純粋に「母親」とはどんなものなのか憧れの念はあった。

 噂で聞く実の母親はかなり奔放な人だったらしく、私のことも産みっぱなしで育児放棄したらしい。そんな人のもとで育つよりは絶対に伯母の方が良かったとは思うんだけれどね。でもね……。

 母と伯母の年がかなり離れていて、私が生まれたとき、伯母は義母というより、祖母といった方が良いほどの年齢だった。そのため、小学生の頃は周りの子のお母さんが皆若くて綺麗なのが、相当羨ましかった。特に授業参観の時などにその差を痛感し、お馬鹿な私は、一度、伯母さんにそれを言ってしまって酷く叱られたという苦い思い出がある。「私も綺麗で若くて、ついでに優しいお母さんがいい!」って言って……それで文字通り、ボコボコに叱られたのだ。本当に、こっちの世界の長兄のグリグリ攻撃なぞ目じゃないくらいボコボコに叱られまくり、木の廊下に3時間正座させられ、「今回はこれで勘弁しておいてあげるけれど、次はないよ!」と念を押され、その後は何故か石焼き芋を買って貰えたんだけどね……。焼き芋は伯母の好物だったから、それが和解とお許しの印。涙で焼き芋がちょっとしょっぱかった記憶がある。……今思い返しても、伯母さんは本当にいい「親」だと思うよ、うん。

 ――でも、羨ましかったのは、本当に羨ましかったんだもの。その感情はどうようもないと思うんだよね。綺麗で優しいものへと惹かれるのは、人の本能でもあるのだから。

 だから、実は、私、今世で、あんなに綺麗な人を「母親」と呼べて少し嬉しかったりする。ただ、色々あって、結局、その母からも離されて育ったけどね。けれど、それを埋めるかのように、宇治や讃岐には母から四季折々、京の雅やかな香りを運ぶ心づくしの贈り物が届いたし、それに一年に一回くらいは実際に会えたから。美と雅の道を突き進む、ちょっと浮世離れした人だけど、私は心からあの母を慕っている。

 ――同時に、前世の伯母に悪いことをしたなという気持ちも強まったけれどね。ひょんな形でこんな風に転生をしたけれど、実は人生もう一度やり直せるなら、私、二〇世紀世界にもう一度生まれ直して、あの伯母へ酷いことを言ってしまったシーンをやり直したかったかもしれない。御免ね、伯母さん……。

 そんな風に、私は自分の「親」や家族というものに対し、複雑な、本当に複雑な思いを抱えているのだ。複雑は、つまりコンプレックスという英語になるわけで。

 ――はい、はっきり言います! 私もまたマザコンです! ついでに、ブラコンやシスコンも入ってるかもね! 伯母への思いは……アンツコンプレックスって言い方あるの? いや、伯母はもう完全に私にとって「お母さん」だから、これもマザコンでいいんでしょう。そして、転生した今の世で女御入内と立后をしようと思ったのだって、半分は家族のためだもの。両親や家族には笑っていて欲しいから、喜んで欲しいから……。

 ――だから、ね。少年師匠が母御前様のことを語る時にみせる、あの憧憬を含んだ瞳の色。あれは、否定できないな……。マザコンの何が悪い! って擁護してあげたい気持ちにもなる。少年の気持ちが今どこまで膨れ上がっているのかは分からないけれど、育ての母親への思慕の情がやがて恋慕に育って……というプロセスも理解できるし、出来れば応援してあげたいとすら思うのだけれど。

 ――いや、そもそも形だけの正妻である私がこんなことを考えるのは、おこがましいの一言に尽きるかも知れないけどね。

 この件、いわゆる「答えが出ない問題」で、考えれば考えるほど思考のドツボにハマっていく。

 ……だから、ここはちょっと仕切り直して! 

 そう、ことは「私」の問題に絞って考えるべきだ。

 呪い殺されるのバッドエンドは、絶対に回避したい!

 この未来打破のためだけに、私は自分の持ちうる知識や能力、全部をつぎ込んでいく。

 そういうことでOK? アムアイ・レディ?(Am I ready?)

 では、行きましょう/生きましょう。

 死なない未来へ~~!!!



次回更新予定:明日朝8時頃 (基本、毎日更新です)



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― 新着の感想 ―
[一言] これからいよいよ回避モードに突入ですね!
[一言] 次どう解決するのか楽しみになってきますね。
[良い点] なるほど!1話のヒロインの家族設定がちょっとややこしいなぁと思ってたけど、ここに生きてくるわけですね!マザコンは永遠のテーマとも言われますが、いっそ二人で藤壺ファンクラブを作って推しまくっ…
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