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序章 その日私は死んだ。清掃員のカッコでモップを手にしながら!

R15指定は、一応念のために設定。

※この小説はあくまでフィクションであり、登場する歴史的事件、人物、企業名、大学名などは実在する同名のものとは別存在であるとお考え下さい。

【2023年11月27日連載開始】

 序章 その日私は死んだ。清掃員のカッコでモップを手にしながら


 その日、私はセンター試験を終えた直後という状態で、西の方にあるとある町にいた。

 私は生みの親との縁が薄く生まれてすぐに母方伯母のもとに養子に出されたという身の上で、育ての親である伯母に負担をかけないためにも大学は進学するならもともと国公立以外考えられない情況だった。どうせなら伯母への恩返し的な意味からも良い大学に入って良い就職をしたい。関東エリアに住まう者にとってその「国公立」「良い大学」「良い就職」「家から通える」を満たす大学と言えば、やはりその第一位は「東京大学」ということになる。それ故、私は早くから東大を第一志望と定め、高校も県立高の中では東大合格率ナンバーワンと呼ばれるところに進み、そこで三年間みっちり「東大受験対策」の勉強を行ってきた。その結果、一応、高三最後の三大予備校主催模試ではどこも現役A判定合格予想が出ており、一次試験にあたる大学入試センター試験自己採点結果でも東大足切りラインと呼ばれる数値はクリア。その状態で、入試本番である東大二次試験まで残り一ヶ月という追い込み期間に入っていた。

 けれど、この「センター試験終了! 東大足切り無事回避!」という本来喜ばしいはずの情況にも関わらず、突然、養い親である伯母から「東大落ちたらココに行くこと」と親類筋が経営するカトリック系お嬢様大学のパンフレットを渡されたのだ。ここであれば、親戚のよしみと、あとは私の高校の内申点などから、全額給費の奨学生として入学させてくれると言う話らしい。正直、私の内申点からすると同じような条件で推薦入学できる同レベル以上大学は他にもあったのだけれど、伯母的に許せるのはその大学オンリーということだった。伯母はとにかくチャラチャラした校風が嫌いなので、私が「慶應の推薦入学取れそうなんだけど」と言っても「そんなところに入っても毎日サーフィンやらデスコやらに繰り出してばかりで勉強しない人になるだけです」と許可してくれなかったのだ。伯母の時代はいざ知らず、今の慶應、そんなにチャラくないと思うんだけどな……。サーフィンももうそんなにブームじゃないと思うし、それにデスコって……?

 という訳で、私はその運命の日の前日、伯母の言いつけに従って仕方なーく、とある閑静な住宅地の中に建つそのお嬢様大学まで願書を提出しに来たていた。

 ――イマドキ郵送での出願が認められておらず「必ず指定期日内に受験者本人が大学事務室まで願書を提出しに来ること」なんて規定、一体誰が決めたの!? ……いや、まあ、親戚筋だというのだから、遠く私自身のご先祖にも繋がる人が決めたってことなのだろうけれどね……。 

 ――ああ、ご先祖様、マジで恨みますよ! この時期、一分一秒が惜しいのが受験生というもの。 あー! 神奈川から新幹線使ってうん時間の移動距離! その時間があるなら、その分、英文法の復習をしたかった! 化学式の暗記に当てたかった! 

 しかも、その出願手続きの事務作業の最中、なんと財布や帰りの新幹線チケットなど諸々の所持品全部が入ったバッグをまるごと紛失するという事件が発生した。

 家に電話するも、伯母からは溜息一つつかれた後、「いつも言ってるように、そういう時は自力でどうにかしなさい」と言われただけ。伯母は厳格を絵に描いたような人柄で、自分にも厳しく、そして他人や我が子(養い子だけど)にも非常に厳しい人なのだ。

 と言うわけで、困り果てた私は、とにかく行動に出た。

 例えば、その大学経営者の親戚筋のオジサンオバサンの誰かにでも会えてれば、その人にお金を貸して貰うという案もあったのだけれど、願書出し行った折にもついぞそうした人物には終ぞ遭遇せずだった。伯母があんな風に切り出してきたので、もしかしたら「よく来たね」的な出迎えがあるのかなという妄想もしたりしたのだが、親戚とは言っても、そんなふんわりとした関係ではないらしい。

 それで大学の入試課で事情を話したところ、ちょっと困ったような顔をされ、そこから教務課、総務課、厚生課と盥回しにされた。結局最後に回された学生課で、本来その大学の大学生向け来ていた単発アルバイトがあるというので、それに応募して資金を稼いだらどうかという話になった。アルバイトの内容はビル清掃。仲介業者に電話すると「今晩から明日の早朝にかけての仕事がある」とのこと。だけど、考えてみれば、お嬢様大学なのに、なんでこんな3Kっぽいアルバイト募集が学生課に来てたんだろう? ……いや、3Kバイトだからこそ、お嬢様たちには見向きされずに余っており、それで私が職にありつけたわけなのかも知れないけれど。

 受験生で時間が惜しいのは事実だけれど、背に腹はかえられぬので仕方がない。「時は金なり」って、本来意味は違うけれど、私の貴重な時間を時給千五百円換算でビル清掃に捧げ、帰りの新幹線代を稼ぐしかない! 

 幸い、厳しい家の方針により家事全般、特に掃除の類は得意だし、体力もまあまあある方だ。精魂込めて、ビルの床を磨かせて頂きます!

 仲介斡旋業者の事務所で、他の応募者数人(他の人は私より年齢がかなり上の人が多かった)と仕事についての注意事項を聞き、制服を貸与された後、各人が担当する清掃場所を割り振られ、私はのとあるオフィスビルの清掃をすることとなった。

 そんな形で深夜・早朝のビル清掃業務に勤しんでいた最中、突然、まさに「大地を揺るがす」という表現がぴったりくるような激しい揺れに襲われ、立っていることすら辛い状況になった。その時掃除していた大会議室では、備品の大型テレビや重たい大型の会議卓が宙を飛び交い、メリメリと言う異音と共に天井から灰色の粉が落ちてきて、「あっ……」と思った時にはたぶん、私はもう……。


 そうして、十八歳の若き身空で人生に幕を閉じることになった私は、気が付いてみれば、なんと平安時代にタイムトリップしていた模様。

 いや、タイムトリップというかこれは生まれ変わり? いわゆる「転生」をしたというべき!? 

これに続く第1章第1節は、本日このあとすぐ(8時頃)投稿予定。

次から、本格的な転生平安姫のお話が始まります!


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新ないのかなぁと、ちょっと目を離していたら改稿されてました。これから読み直します
[良い点] 細かい設定が、どんな伏線となっているのかドキドキします!
[良い点] 平安時代へ転生物語!この後の展開が楽しみです!
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