~守り高き壁~
この街、メデン8は治安が悪いことで有名だ。
高層ビルが立ち並ぶ大都市で皆はこの街をセキュリティの高い街だと思いがちだろう。
が、しかし、そんな訳では無い。守られているのは、その高層ビル内部のみなのである。
外は紛争だらけだ。
ビル内部に入ろうとするテロリストは沢山いた。
その中で最も悪名高くテロに馳せている一つの集団がいた。
その組織はいくつものビルを乗っ取ってきた。
高層ビルとは、いえば大組織と思えばいいだろう。そのビルの中では武器が製造されていたり、爆薬、核もろもろ製造しているのだ。
つまり、ビル同士で戦争が出来る程なのだ。
ビルと言われれば、密集していると思われるだろう。
しかし、群れとなり、それぞれが遠く離れている。一つの島のようだ。
それぞれが、ルールを守って武器や爆弾の製造を行っているのだ。このメデン8に守られながら。
我々のいる時代は少し未来に近づいてきた。
コンピュータに任せることが多くなってきた。
人はビルの中に住み、外に出ることはほとんど無かった。
何故、皆がビルの中に住むようになったのか。
それは主に温暖化である。が、しかしそれさえも差し置いて問題となったのが核の使いすぎである。
酸性雨が降るようになり、人間はそれに害されるようになった。まともに外に出られなくなったのである。
移動には、コンピュータに制御された、いえば車というものに乗る。
いや、乗るというより運ばれるという感覚に近いだろう。
その都市に守られる代わり、住民は制御されながら動かねばならない。
「おい。用意は出来たか?」
「はい。もう少しです……。」
部下が機械をいじっている。
「まだか?」
「で、出来ました!これで我々のものです。ハックに成功しました!」
「よし、よくやった。
お前達、出発用意!」
車を乗っ取っていたのである。
全部で9パリー(注・パリーとは現代でいう台である)、乗っ取りに成功したハミー・スタンスは部下27人を引き連れメデン8に向かった。
━カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン━━━━━━━━
『緊急事態発生、緊急事態発生
西320キロ地点にてパリ9台ハックされました。
警戒レベル6、テロによる犯行と推測。
直ちに防衛体制をとってください。
警戒レベル6、防衛レベル10
防衛体制に引き上げられました。』
「なんだ、これは?!」
「どうしたんでしょう?」
「テロが来るらしい……」
「まぁ、このビルなら大丈夫だろう」
……………………………………
「……それはどうかな…………」
後ろの男を見ると何故か笑っていた。
「キャャャーーーー」
『ズーーーン』銃声が轟いた。
女性の悲鳴や叫び声が聞こえる……
横を見ると、帽子を深くかぶった男が銃口を倒れている人に向けている。
何故、倒れている人を撃つ??
い、いや、あの男が撃ったから倒れたのだ。
逃げねば、いち早くここから逃げねば……!
「……動くな…………!!」
その声に思わず体が固まってしまった。
う、動けない……
「…な、何故このような事をする…」
「……何故だと?…フッ……俺はな内通者だ。
あのテロ軍団のな……」
「なんだと…、そんなことさせるものか。
おまえ、おまえの名はなんだ!」
「……俺の名だと」
「教えろ!」
「……フッ…俺の名など要らないだろう。
だがな、これだけは言える。
俺はハミー・スタンス様の手下だ!」
「なんだと!?あの、大テロ組織の頭、ハミー・スタンスだと!?馬鹿な……そんなはずはない!俺は
8年前にあいつを倒したんだ……生きているはずが無い。」
「……貴様がハミー・スタンス様を倒しただと?!
そんなもの信じるものか!」
「俺はあいつを確かに倒した。しっかりとこの目で見たんだ!」
「……まさか、お前は!ハミー・スタンス様の言っていた、あの、刑事か!」
「そうだ! 俺がハミー・スタンスを倒した、ルイ・ケイルスだ!」
「……そうか、そうだったのか!
ならば貴様を連れていかねばな!ハミー・スタンス様の元へ!」
「必ずハミー・スタンス諸共組織全てを潰してやる!」
「……おっと、動くなよ、これがお前を狙っているんだぜ?」
『侵入者を発見、侵入者を発見
警戒レベル3、防衛レベル4、攻撃レベル2
部隊は直ちに急行し対処してください。』
「お前!その銃を下ろすんだ!」
「……うるせーやつが来たなーこっちを先に片付けてやる!」━━━ズーーン、ズ、ズーーーン━
『侵入者攻撃、侵入者攻撃
第1部隊壊滅、警戒レベルMAX 、防衛レベル10
、攻撃レベル10
全部隊出動してください。』