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第6話 旅に出ます

「……で、これってどういうことかしら。説明してもらってもいいわよね。そのくらい当然よね? そうよね?」


 怖い顔でミクが睨んでくる。

 申し訳ない。


「……えっと、その……わざとじゃないというか、たまたまそうなっちゃったとか……」


 はぁ……どうしてこうなったのかな。

 となりには爺さんが寝むっていて、俺は一人ミクの目の前で土下座していた。

 まあ、説教ってやつです。はい。


「そういう言い訳を聞いているんじゃないの! どうしてこうなったのか説明しろって言ってるでしょ!」


「ひぃ、す、すいません!」


 怖さのあまり変な声が出た。

 ……めっちゃ怖いんですけど。殺しそうな目をしてるよね、ミク!

 俺殺されちゃうのかな!? 今日が命日!?


「だ・か・ら! すいませんじゃないの! どうしてこんな風にして家が燃えたのか教えてって言ってるでしょうがこのアホ!」


「…………」

 

 奥に見える廃墟を指さす。ほとんどなにもない場所だった。

 だが、元々そこには孤児院あったのだ。

 ……つまるところ、全焼した。近くに木がなかったからさらに燃えなかったわけだが、近くにあればさらに大惨事になってたはずだ。そこは良かったところと言える。


「遠くまで逃げて、そろそろかなって戻って来てみたらびっくりしたわ。だってなにもなかったんだもの。それでみんな無事なのかって気になってあちこち探したらあんたたち2人がここにいたのよ。その時の私の気持ちがどんなだったかわかるかしら? まあ、あんたにはわからないでしょうね!」


「……ホントすいません」


「とことんイライラするわね。はっきりしなさいよ」


「……えっと、簡単に説明すると、爺さんの魔法で孤児院が燃えました」


「じゃあなに。お父さんが悪いってことかしら?」


「まあ、ちょびっとだけ俺も悪い気はするんですけど、9割9分9厘爺さんが戦犯です」


「なるほどね。じゃあ、ファクトは爺さんに責任をすべて押し付けるんだ。さっきまで俺なら大丈夫だ。なんたってお前より頭いいからなとか言ってたけど……」


「べ、別に間違ったことは言ってないからな。100%事実だ。……本当だよ。本当だからね!」


 ちょっと肩が狭くなる。

 そんな事言わないでおけばよかった……


「本当に……?」


 鋭い目が俺を襲う。

 あ、これ無理な奴だ。俺は悟った。


「……いや嘘です。すいません」


「結局、あんたが悪いんじゃない! どうすんのよこれ!」


「痛い! ちょ、文句は言われても仕方がないけど、殴ったりはするなよ。こっちは怪我してるんだぞ!?」


 正座の状態から飛ぶように起き上がる。

 痛い。思いっきり顔面を殴られた。


 っていうかもうなんなんだよ。ちょっと悪いと思ったから敬語を使ってたのにこんなことされるなら、敬語なんか止めてやる!


「仕方ないでしょ。ムカついたんだもの。ムカつくようなことしてる方が悪いわ」


「こ、こいつ……」


 全く。親父にも殴られたことがないのに……まあ親父どころか両親どちらもいないんだけどね。あはははははは……いや笑えねぇよ!


「なに一人で突っ込んでんだか。いよいよ本当におかしくなったのかな俺」


「またぶつぶつ言って。気持ち悪い」


「うっせぇ」


「うぅ……」


 そんなことをしていると爺さんが目を覚ます。

 さっきの燃えたことを知ったことが原因で気絶していたのだ。


「やっぱり……燃えてしまったんじゃな」


「ええそうよ。なにもかも無くなったわ。幸い私たちは無事で何事もなかったけどね」


「怪我とかもないし、私たちは無事だよ!」


「うん、むしろ元気いっぱいだよ!」


 近くにいたリンとシンが顔を出す。

 とりあえず、みんな無事みたいだ。良かった。


「そんな思いつめた顔しないでよファクトお兄ちゃん。ちゃんとあの変なやつ倒したんでしょ!」


「まあ倒したは倒したな。おかげでこの孤児院全部なくなったけど」


「そんなの作り直せばいいんだよ。僕、手伝うよ」


「お、お前ら……お前らってやつは本当に……いい奴だな!」


「あのね……みんなそんな楽そうに言ってるけど、こんな大きさの家、どれだけ時間が掛かると思ってるのよ。数年もしくは数十年以上かかると思うわ」


 あきれ顔でいう。


「それでもみんな無事だったんだし、いいじゃん。あの孤児院じゃなくて他の場所で暮らせばいいし」


「それはありじゃな」


「お父さんまでもそっちの味方なの!?」


「まあ一応わしが原因ってのもあるしな。こっちの味方をした方が色々と都合がいいのじゃ」


「なにそれ……それじゃあ私が悪者みたいじゃない……しょうがない。しょうがないわね。今回だけは許してあげる。次こんなことしたら絶対許さないんだからね! わかった!」


「ああわかってる」


 ということで魔獣の件は解決した。

 いや解決したっていっても家がないから完全には解決できてはいないんだけどな。


「でも、どうするのよ。これから家もないのに。まさか本当に違う家で過ごすの? 他の家にするっていっても家賃はどうするのよ。こんな人数の家賃代なんかお父さんに払えるのかしら」


「痛いところをついてくる……確かにわしの今の貯金額じゃどうしようもない。というか5人一気に部屋なんか借りたら多分半年も持たないじゃろう。建築士の知り合いが何人かおるんじゃが、やつらに頼んでも流石に半年じゃ無理だろうしな。うん、困った……」


 万事休すといった感じだった。

 もうどうしようもない。

 だって金がないんだからしょうがないだろ。

 あーあ、金さえあればな……いや待てよ。金……


「なあ、俺が稼ぐために旅に出るってことじゃダメかな」


「「「え?」」」


「な、なんじゃと!?」


 全員驚いた顔をする。


「俺が稼ぎに行くんだ。そしたら宿舎代も安くなるだろ。しかも金も入ると。半年くらいあるならなんとかして職にはつけそうだし。金が入れば、家も再建できるだろ」


「ダメ……じゃないが、本当に大丈夫なのか?」


「……まあ、大丈夫さ。前からちょっとやってみたかったしな。この孤児院で一生暮らすのも面白そうだと思ったけど、他のところにも行ってみたかったし」


 考えてみたらここでしか暮らしてないんだよな。

 他のところなんか1回も行ったことがないし。

 外に出てみたいって考えが出るのも普通だろ。

 

「ってことで決まりだな。準備でもして明日にでも出るか。こういうのは早い方がいいからな。爺さん、地図とかくれ。町に行ってみたい」


 俺はそもそもここがティラグビーという国の端にある場所だということしか知らない。だから地図とかくれないと流石にマズイ。絶対迷う気がする。

 

 でもそれがあれば後は簡単だ。町に行って、適当に仕事を見つけて、働いてある程度時間が経ったらまたここで暮らせばいい。それだけのことだ。

 

「……お前が決めたならわかった。地図を……」


「そんなのダメよ!」


「ミク!?」


 いきなりミクが叫び出した。

 なんなんだ一体……


「……さっき魔獣が出たじゃない。きっと外には魔獣がうじゃうじゃ居るんだわ。一人で行くなんて危険よ」


「それはない」


 爺さんが否定する。


「わざわざこの場所は魔獣が少ない所を狙って孤児院を立てたのじゃ。子供たちに被害が出たら大変じゃからな」


「じゃあなんで人もいないのよ!」


「それはたまたまじゃ。別に人が居ないところを狙って作ったわけじゃない。魔獣が少ないところでなおかつ土地が広いところがここじゃっただけじゃ」


「……そ、それでも……一人、ファクト一人で町に行かせるなんてダメよ! そこだけは譲れないわ!」


「……そう言われてもな」


「どうしていつもミクは意地を張るんだよ。別にいいだろうが」


「意地じゃないわ……意地なんかじゃ……」


 少し顔が赤くなる。怒っているのだろうか。

 よくわからない。本当にミクの考えはいつもわからない。


「……わかった。わかったわよ……行かせてあげるわ」


「よし、ならさっさと……」


「でも条件として私も一緒についていくことにする!」


「は!?」


「これなら文句ないでしょ」


「いや、文句しかねぇーわ! お前がついてきたら全部破綻するよ!? 俺一人なら金はなんとかなりそうだけど、お前が来るってことは2倍になるんだぞ!?」


「そんなことなら私も働くわ」


「でも……」


「大体、あんたご飯とか作れるのかしら? 絶対無理でしょ」


「ぐ……」


 確かに、ご飯を俺は作れない。

 無一文で町に行くのだ。金がないからちょっとでも節約したい。

 買うのはできるだけやんない方がいいだろう。


「私はたまにお父さんの手伝いでご飯を作ってるから最低限のものは作れるわ。どう、これならいいでしょ」


 ふぅ……

 ここまで言われているのだ。

 仕方ない。俺も町へ行くことを許されたのだ。こっちもそれくらい許してやんないとな。


「……わかった。なら一緒について来てくれ」


「ふん、わかっているじゃない」


「なんでそんなに態度がいつもデカいんだよ……」


 やれやれ、大変な旅になりそうだ。

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