第11話 最強の炎使い
「ごほ……なんだよ……痛すぎる……」
吹っ飛ばされた痛みがビビッと来る。
あんなに強くやられたんだから当たり前だ。
そして、目の前で突っ立っている奴がいる。俺を吹っ飛ばした張本人――ラグナロクだ。
周りにはさっきからずっと炎が出ている。これも魔法の一種なのだろうか。
すると、近くにいた冒険者が話す。
「あれは……ラグナロクさんの《《スキル》》……炎の幻想……まさか使うとは……しかも子供相手に……いや、子供相手だからか……」
「スキルだって……」
知っている。スキル……
この目と同じだ。これがこの人のスキルってことか。
見るからに俺よりも強そうだ。これが本来のスキルって奴か。怖い……
ていうか名前カッコよ! スルトって……俺とは大違いだ……
「確かこのスキルはなんにでも応用が効く、最強の炎スキル……詠唱は話さずに魔法が使えるしなにより……」
ここで女の人がギルドから登場してきた。
どうやら物凄く怒っているらしい。顔が真っ赤っかだ。
「ちょっと何してんのよ。ギルドが壊れたじゃない。ラグナロク今すぐ直しなさい!」
「げ……レインさん……ギルドの最高責任者に言われちゃしかたないか……直すとすよう」
すると、体の炎が動き出す。
壊れたギルドの場所まで近づき、そして一瞬にして壁の穴が消えた。
「な…………」
ありえない。
急に消えた。穴が確かにあったはずなのに……どうやって……
「……これがあの炎の幻想の能力の一つ。具現化! もののコピーを炎が作り出し、補うことが出来る最強の能力……流石ギルド内最強のソロの炎使いだ!」
「マジかよ……化け物じゃねーか!?」
なにそのあほらしい能力。
俺のスキルとは全然違うんですけど!?
「ふう、まあいい。それよりも……」
「え!?」
さっきの炎が針のような速さで俺の方に飛んでくる。
俺とすれすれのところで止まった。
「あ、あ、あぶねぇ……」
腰が引けた。
怖すぎる。どんだけ速いんだよ。死ぬところだった……
「どうしていきなり……こんなことを……」
怯えながらもラグナロクに話しかける。
「どうしてだと? そんなもの、簡単な話だ。お前はこのギルドに入ろうとするからだ。別に俺だってしたくてしているんじゃない。お前自身のためにやっているのだ」
「俺自身のためって……なにを言ってるんだ……」
「まだわからないのか。お前たちは甘すぎるんだ……」
あきれた声を出す。びくっとする。
「甘い……」
「そうだ。お前たちは甘すぎる。考えも。行動も。どちらもだ。もし、俺が凶悪な冒険者だったら今ごろお前は死んでいたぞ。それを聞いてもまだ……このギルドに入ろうというのか?」
「…………」
確かにそうだ。俺はどこかでなめていた。なめ腐っていた。
冒険者ってのはこの前の魔獣と同じように死ぬ可能性がある。それはあのおじいさんからも聞いていたことだ。
それでも本当に死ぬとは思わなかった。今初めてそれを知った。
殺されるかもしれない。
「だが、もし今、諦めたらこれ以上はなにもしない。約束しよう。だからあの子と一緒に家に帰るんだな」
「…………」
それもありかもしれない。
なにもしない。生きて帰れる。それだけで十分だ。
別にお金稼ぎはここじゃなくてもできるかもしれないし。他のことに挑戦してみるのもありだろう。無理にここでとどまる必要なんて……ないからな。
「わかった。その約束を……」
「待った。待ちなさい二人とも」
「!? ミク!?」
受け入れるよと言おうとした瞬間、ミクが颯爽と現れた。
待ったをかけるなんて一体どういうことだろう。
「ねえ、あんた。本当にそれでいいの? 諦めるってことなのよ。わかってるの!?」
「……わかってるさ。わかってるけど、どうしようもないだろ。勝てるわけがないんだから……」
立ち上がりながら言う。
まだ、体は痛い。苦しい。1発でこれだけのダメージだなんて……規格外すぎるぞ。このスキル。
「少年の通りだ。君たちに勝ち目なんてない。早く帰りなさい。今なら俺は許すと言っている」
「あらそう。でもね、私はあんたに聞いてるんじゃないの。ファクトに聞いているのよ。あんたはしたいの。したくないの? どっちなのよ……」
「俺は……」
これはきっと大事な決断だ。
ここで選び方を間違えば、最悪死ぬかもしれない。
選ぶ方は決まっている。やらない。それ一択だ。そうに決まっている。これが正しい選択のはずなんだ。なのにどうして……どうして……
「俺は……俺は……やりたい! やってみたい。魔法もスキルも……知りたいことがたくさんあるんだ!」
言ってしまった。不覚にも本心だった。
そんなことをミクに言ってしまった。
「はは……馬鹿なことを。本当に甘いな。まだ子供気分が抜けていないアホどもが。いいだろう。俺が教育しなおしてやる。俺を倒しに来い」
体の炎がさらに強くなる。
いままでのは本気じゃなかったってことか。
遊ばれていたんだ。
「……面白くなってきたわね。ちょっとだけだけどわくわくするわ」
「わくわくはしねーよ! 断然怖いの方が強いわ! なにこんな状況で言ってんだよ!?」
「うるさいわね。仕方ないでしょ。思っちゃったんだから。それより少し身構えないとヤバいかもしれないわ。注意しなさい」
「ああ、ご忠告ありがとよ」
「そろそろいいか。早く潰したいんだけど」
わお……
手には炎の弾が数個もあり、メラメラと燃えている。
あ……当たったら死ぬ奴だ。
「フレイムバレット!」
弾が物凄い勢いで飛んでくる。
反応とかそういう次元じゃないんだけど!?
「ぎゃあ!」
ヤバいヤバい。当たったら死ぬ。避ける避ける避け……
「うわぁ……ふ、服の端が!?」
「なにやってんのよ、しっかりしなさい!」
服の端に当たり、燃えだしたのをミクが服を引っぺがし、消した。
暑かった……えぐすぎる。
しかも本当に詠唱無しとか意味わからん。
近くに被弾した炎は何事もなかったかのように奴の方に戻っていき、また体の周りを流れ始めた。
「ふん、やはりな。これくらいの攻撃でもうダメそうだ。先がしれている。諦めろ」
「嫌よ。私、意外と強情なのよ。こんなへっぽこのファクトと違ってね。決めたことはやり遂げる主義だから」
「俺、馬鹿にする必要あった!?」
なんで、ここに来てまで言われなくちゃいけないんだろう。
確かにその通りなんだけれども!
「だから、どうした。反撃の手段はないだろう。もう一度同じ攻撃をしたらさっきように次は避けれるのかな」
「知らないわよ。そんな事。こういう時こそ……ファクト、あんたが何とかしなさい」
「え、俺!? なにもできないけど!?」
「あんた男でしょ。これくらいの状況。どうにかしなさいよ」
「いや、無理だから。絶対!」
「……ああ、もう御託はいい。さっさと始めるか」
弾がまだ作られだす。
始まるようだ。
「ああ、どうしようどうしよう……」
「散れ! フレイムバレット!」
飛んでくる。
くそ……どうにかするしかない。俺が。俺自身で!
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