15.試練
メポリー姫 魔法立国グリンダムヴァルドの正統後継者。赤い髪で気性が荒い
ミラ 魔導師。ギルー25世からメポリー姫のおそば付き兼監視役に任命される。青い髪でボブカット
マハ 東方隷国の邪鬼モンスター。低級邪鬼との蔑称で呼ばれる。タコのような腕を6本もち、鉄仮面の風貌。目が飛び出ている。いわゆる雑魚扱いだがシーザノゥム村の戦いでは改良型が投入されている。
ガジャン元帥:東方隷国の邪鬼。階級は元帥。邪鬼と人間のハーフ。
早河義之 陰キャ高校生。魔法立国グリンダムヴァルドの救世主と期待?されている。
死角から炎に包まれた触手がミラに向かって急に伸びてきた。
「ていっ!」
咄嗟にのけ反った。
と同時に水性魔剣リキッドソードを旋回させた。
〈ギュゥイー・・〉
敵の悲鳴──。
炎に包まれた触手が地面に転がった。腕を切断されたマハは蒼い血を吹き出しながら後ずさりしていく。
「くっ・・」
明らかに魔剣の精度が落ちている。
問題はそれだけじゃない、ミラの顔が焦りで歪んだ。隷国の邪鬼は概ね『火』の属性。ゆえに炎を使った攻撃がスタンダード。それ自体は別に目新しいことでない。対して魔法立国の魔導師の多くは『水』属性だ。炎と水──より魔力の強い方が相手の属性を飲み込んでいく。
「あ、アンタら・・」
ミラの息が上がってきた。
(所詮・・魔力不足のインスタントの武器だよ)
スキルと体力で補うしかないのだが・・限界がある。
「いつもより・・か、火力がつ、強すぎるんだよっアンタらっ!」
新たに正面に突進してきた別のマハを袈裟に斬って捨てた。
(お、おかしい。以前のマハとは明らかに違う・・この内からほとばしるような強い火勢・・)
思わずミラは振りかえった。
早河義之──この世を救う希代の冒険者となるはずの男。情けないことに、ミラのすぐ後ろで頭を抱えてしゃがみ込んでいた。
腹が立った。この腰抜け野郎に対してではない。彼が救世主であると軽々しく信じてしまった自分自身に、だ。
そして今この瞬間、最も腹が立ってる相手に向かいミラは叫んだ。
「姫さまっ!」
浮揚魔法を使ってるのだろう、メポリー姫は空中に独り漂っていた。腕組みし、眼下の戦況を眺めてるだけだ。
マハは陸戦しか出来ない。そんな彼らはメポリー姫の真下でただ蠢いてるだけだった。
ミラの呼びかけに気づいた姫はミラを見る。ニヤッと笑って再び視線を前方に戻した。
(あのアマ・・)
魔法立国の後継者に相応しい姫君に成長して欲しい、その激し過ぎる想いからグータラしてる姫を心の中でつい罵倒してしまう。いや、過去には実際に口に出したこともあった。
「ぐっ!」
正面に現れたマハを串刺しにした。
(切るより刺す方が効果アリね)
明らかにインスタント魔剣の切れ味が落ちてきていた。
(それにしてもこの大軍、キリがない・・だからといってここで諦めたら・・この聖戦はどうなる、この世界は悪徳の将軍ぺチンの天下じゃないか)
自分に喝を入れ剣を構えなおした。
「む・・?」
おかしなことにミラは気づいた。
メポリー姫の真下にいたマハの群れがどんどんミラの方に移動してきているのだ。ゆっくりと包囲体制を取り始めていた。
マハという邪鬼は低級モンスターで自律思考なんか出来ない。光に群れる蛾のようにとりあえず敵に向かっていく。相手の能力を考慮し戦いを回避したり、より弱い相手を狙い撃ちにするという作戦は立てられないのだ。多少ヴァージョンアップしたとして彼らの思考回路まで改良されたとは考えにくかった。
(それなりの・・上級指揮官が来てる・・)
マハは操られてるのだ。
その時、マハの大軍の遥か後方に何かが動いたのをミラは見逃さなかった。不吉な兆候にしか思えなかった。
(あのロイヤルブルーのマントは・・)
イヤな予感が当たりそうだ。
東方隷国の指揮官はみな真紅のマントを羽織る。真紅は『火』を象徴する隷国にとって特別の色。ただ、軍功盛んな者にはぺチン提督から授けられた特注の蒼いマントを見につけることを許されていた。
「蒼の屠殺者・・現れたのね」
ミラの唇が震えていた。
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