11.シーザノゥム村
登場人物
ヴェンマビン ドワーフの族長。身長約1m。全員、髪を長く伸ばし弁髪にしている。ミラと確執あり?
メポリー姫 魔法立国グリンダムヴァルドの正統後継者。赤い髪で気性が荒い
ミラ 魔導師。ギルー25世からメポリー姫のおそば付き兼監視役に任命される。青い髪でボブカット
早河義之 陰キャ高校生。魔法立国グリンダムヴァルドの救世主と期待?されている。
(またまたどっかの異世界に転生?)
まわりの景色が物すごい勢いで後ろに流れ、視界が緑一色になった。軽く眩暈がしてきた。グリーンの巨大なトンネルを、スーパーマンみたいなスタイルで弾丸のごとく突き進む。まさに瞬間移動、テレポーテーションを早河は体験している。
(こんなスピード・・身体大丈夫なのか?)
「はは、心配するな。下界と違い天界にバグは少ない。よって人体細胞が壊されたとして再生が容易に促進される」
(姫さまは心配するな仰りますけど、このスピード・・やっぱ異常だよ。俺の身体と心・・ホントに大丈夫かな・・)
「そろそろシーザノゥム村に到着です」
女の声が聞こえてきた。おそらく声の主はミラだ。
景色の流れがスローになった。視界の端に何かがチラチラ見える。大きな樹々が延々と続いている、深い森の中を移動してるのだ。魔法を使えば鳥のように移動できる(異世界の常識に早く慣れる必要があるな)
「ン?」
いつの間にか地上に降り立っていた。
あまりにナチュラルな着地で気づかなかった。自分の足で歩いているが、フワフワ浮揚する感覚が抜けない。
森を突き抜け広場のような所にでた。家などの建物は見当たらない。中心に大きな時計台があるだけだ。その時計台が嫌でも目に入ってくる。
「あぁ・・」
誰かの嘆く声──姫でもミラでもない、早河の横にいつの間にかいたドワーフの一人だった。
「うっ・・」
最初に異変を感じたのは嗅覚だ。
肉が焼け焦げ、そのまま腐ったような悪臭。清潔な日本で暮らしていた早河はこんな臭い嗅いだことなどない。
(おそらく、死臭だ・・)
思わず鼻を覆った。
「酷いわね・・」
メポリー姫が呟いた。
視線の先には何かが点々と何か横たわっている。
人だった。何十人?ひょっとしたら100人を超えてるかもしれない。全員ロングブーツとマント、革を荒くなめした肩パットとひじ当てを装着している。典型的な冒険者の服装だった。
「ちょ、ちょっと行ってきます」
ミラが走りだした。
「よしなさいっ!」
メポリー姫の鋭い声。
ミラは立ち止り、わが主人の方に向き直った。
「ま、まだ息のある者もいるかもしれません。ここでヒーリングを施せば一命を取りとめる者も・・」
不満げなミラの口調。
「ヴェンマヴィン族長──」
ミラではなく傍にいたドワーフにメポリー姫は声をかけた。
「は、はい」
ヴェンマヴィンは短躯を精一杯伸ばし返事した。
「──とりあえずアナタたち全員で犠牲者の遺体を回収。荼毘に伏しなさい」「わ、わかりました」
「モタモタしてると疫病が流行る、急いで。それと──生存者はいったん村の集会所に収容」
「はっつ」
目礼したヴェンマヴィンは回れ右をした。彼が駆けだした後をドワーフ全員が追った。
改めてミラの方に向きなおりメポリー姫が口を開く、
「ミラ、前回の定期測定で貴女の対魔負傷者に施せる治癒数値は?」
メポリー姫がとても冷酷にみえた。
「わ、私の前回の測定値・・治癒数値はご、57」
「レベルB+か。平均よりチョッと良い。でも、その程度で何人が救える?」「・・・」
ミラは答えられず下を向いた。
(おいおい、あまり虐めるなよな)
姫は顎をしゃくった。
「この者たちの武器を見て」
手斧と槍の幾つか──無造作に放り出されていた。
「どう見ても魔剣に見えない。即席で念力込めたレベルC-(マイナス)の霊魂ソードって感じ?文字どおりの付け焼刃。いくら相手が低級モンスターだとしても術者が手練れじゃなきゃ苦戦するに決まってる」
「・・・」
「つまり、あの者たちはアイテムもろくに揃えずに己の力量も顧みず特攻をしかけ、挙句の果て返り討ちに遭った。このような後先考えない者をいちいち助けてたらこっちの身がもちません」
「し、しかし・・」
「昔の貴女はそんな感傷的じゃなかった。もっとクールな判断をする魔導師だったはず。〈シャンドールの戦い〉の傷がまだ癒えないの?」
「決してそんなことありません!」
これだけは死んでも譲れない──そんなミラの表情だった。
(それにしても・・〈シャンドールの戦い〉ってなに?)
「そう。それなら結構」
メポリー姫は軽やかに笑う。
さらに彼女は言う、
「こういうことは具体的な数字を挙げるべきね」
「は、はあ・・」
「対魔負傷者への治癒数値が57。仮に三人負傷者を救助した場合に消費する魔力、公式計算では──100を57で割って3をかける。三人助けてなお魔力をストックするには最低80なければダメなの」
ミラはうなだれてしまった。ぐうの音も出ない、そんな雰囲気だった。
(メポリー姫、ドSっぽいお人だと思ったけど見たまんまなのな)
「それと・・救助作業どころじゃない最も重大な理由──」
メポリー姫はいったん口をつぐみ時計台の方角を指さした。
「な、なんじゃあの連中は!」
早河は腰が抜けそうになった。
異形の者たちが群れをなし、静かにこっちに向かってくるのが見えた。
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