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教訓、四十七。毒を食らわば皿まで、の敵に注意せよ。 8

 昨日、投稿し忘れてしまいました。そこで、今日は二話投稿することにしました。これは二つ目ですので、先に一時間前に投降されている分をお読み下さい。本当は三十分後にしたかったのですが、一時間ごとしか予約設定できなかったのでした。


 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?


 転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)

 実は、しばらく前からシークとベリー医師は広間に来ていた。セリナが執事を突き飛ばし、尻餅をつかせた直後くらいにやってきたのだ。みんな、そっちに気を取られていたので、シークを連れてベリー医師が戻ってきたことに全く気がつかなかった。

 フォーリでさえ、怒りですぐには気がつかなかった。そして、セリナがハエの言い訳でピシャッと執事の顔を叩いたことで、彼の胸の内をすっきりさせたせいか、シークがやってきたことに気がついた。しかし、様子見をしていると分かっているので、何も言わなかった。ただ、若様をすぐに助けないので、憮然(ぶぜん)としただけである。

 この状況に、シークはそろそろ出て行く所だと判断したので、大きく息を吸った。若様に対する態度や村娘達を人質に取った行動に、シークも怒っていた。

「何の騒ぎだ!何をしている!」

 以前、若様が剣術の練習中に竹槍を持っていた時、竹槍をびっくりして取り落とした例の大声である。

 天井がアーチ状になっている広間に、この大声が(ひび)き渡った。反響(はんきょう)していつも以上に大声が響き渡る。

 このシークの大声に、村娘達が背筋を伸ばした。そして、領主兵達も思わず背筋を伸ばした。何よりぎょっとしたのが親衛隊員だった。

(隊長!?いつからここに!?)

 そして、次の瞬間(しゅんかん)、みんな同時に思う。きっと、若様に対する無礼があったのに、すぐに行動しなかったから叱られるに違いない、と思って首を(すく)めた。

 シークは静かに広間を進んだ。背筋を伸ばした村娘達が、一斉に振り返ってシークが歩く場所を空けた。ベリー医師は何事もなかったように、シークの後をついて歩く。

(やっぱり、ヴァドサ隊長が怒ると大迫力ですな。自然と道ができちゃって。やっぱり、隊長の迫力は違いますな。)

 なんて、ベリー医師はのんきに考えていた。

「ベイル、これはどういう状況だ?」

 一応の形でフォーリを押さえているベイルに尋ねた。シークも分かっている。この領主兵達の戦闘する気満々の表情を見れば。だが、隊長として確認しておく必要があった。みんなに聞かせることで情報を整理し、みんなの気持ちを一致させる目的もある。

 ベイルがシークの前に出て、状況を説明しようと口を開きかけた時だった。

「お前は誰だ?」

 思わずシークは「人が話している時に口を挟むな!」と怒鳴りそうになった。それはなんとか(こら)えたが、若様を侮辱しまくっている執事に対して、怒りを隠すこともせずに振り返った。

 シークが怒っているのを見て、危険だと判断したのだろう。領主兵の幾人かが剣の柄に手をかけている。どうやら、シークより早く剣を抜いて斬りかかれる自信があるようだ。だが、どこの流派か知らないが弱ったとはいえ、簡単にやられるつもりはない。

 大体、領主兵になる者は国王軍の試験に落ちたか、入ったものの(きび)しくてついて行けず、やめて領主兵に応募して入った者がほとんどである。そのため、どうしても国王軍より質が落ちると思われているし、実際にそうだった。

「私はヴァドサ・シーク、親衛隊の隊長だ。あなた達はベブフフ家から来た使者か?」

 親衛隊の隊長ともなれば、八大貴族の筆頭であるバムスに対して、丁寧に話さなかったとしても失礼には当たらない。つまり、究極国王や王族に対して、失礼な言い分をしなければ問題ない。それが、親衛隊の立場だ。

 だから、今シークは普通に親衛隊の隊長として接しているだけである。大抵の親衛隊の隊長はこんなものだ。シークが例外的に誰にでも丁寧に接しているのだ。

 しかし、執事と使いは馬鹿にされたと受け取ったようだった。偉そうに自分の存在感を見せつけるように、胸をふんぞり返らせて横柄に尋ねる。

「そうだ。お前はなぜ、重要な場に遅れて来たのだ?」

 若様に対する横柄な態度に頭にきているシークも、普段の慎重さは捨てていた。先日の事件だけでも許しがたいのに、今度は堂々と若様を(はずかし)める言動をしてきた。それを(かく)すつもりもない。しかも、村娘達の前で辱めた。余計に許しがたかった。

「最初に言って奥が、私は親衛隊の隊長だ。陛下よりじきじにご命令を賜り、セルゲス公殿下に無礼を働く者は、どんな者であれ斬って良い許可を頂いている。」

 つまり、暗にこれ以上、若様に無礼を働いたら斬ると忠告しているのだが、執事はその忠告を受け入れる気が無いようだった。鼻で笑い、馬鹿にした。

「そんなものが脅しになるとでも?お前は陛下の命令を頼みの綱としているようだが、陛下は結局、八大貴族のご領主様を捨てることはなさらない。お前かご領主様かを選ぶとしたら、間違いなくご領主様だ。

 分かるか?だから、陛下は“若様”をここに送ることを許されたのだ。つまり、どういう状況になるか分かっていて、送られたということだ。黙認されている。だから、実際に斬ってみろ、結局のところ陛下はお前ではなく、ご領主様をお守りになる。

 断罪されるのはお前の方だ。そうなれば“若様”の護衛も代わらざるを得ないだろうな。」

 随分(ずいぶん)スルスルと舌が回る男だ。舌に油でも塗ってあるようで、信用ならない。シークが一番嫌いな人間の部類に入る。

 しかも、自分の頼みの綱がもっと頼りないことにさえ、気がついていないようだ。自分が捨て駒だと気がついていないのか。よくも、ニピ族の前で主を侮辱(ぶじょく)して、生きて帰れる気満々でいられるものだ。


 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

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