表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

488/582

教訓、四十七。毒を食らわば皿まで、の敵に注意せよ。 7

 こんばんは。昨日、投稿し忘れてしまいました。申し訳ありません。それで、今日は二話投稿しようと思います。


 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?


 転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)

「…く、ふふふ。」

 突然、執事が笑い出し、セリナがはっとして気味が悪そうに執事を振り返った。

「貴様らは私が誰か、忘れているようだな。何も問題はない。ここは小さな村だ。お前達が大切にしている若様に夜の相手をして貰っても、何も問題はない。」

 とうとう一線を越えた発言を始めた。フォーリを始め、ベイル達親衛隊員達は、一斉に身構えた。向こうがセルゲス公である若様をそこまで馬鹿にするとなれば、こっちも黙ってはいられないからだ。

 だが、そんな親衛隊員とフォーリの変化に気づいたのか、気づいていないのか、執事はぎらりと目を光らせながらさらに付け加えた。

「村ごと全員、葬ってやる。」

 村娘達がぽかんとしている。何を言われたのか、咄嗟(とっさ)に理解できなかったのだ。人はあまりに自分の常識を越えたことを言われると、すぐには何を言われたのか理解できないものだ。

 そして、ベイル達もさすがにそこまでとは思っていなかったので、少し(おどろ)いた。ただ一人、フォーリだけが驚きもしなかった。それよりも、執事達の若様に対する態度に殺気を垂れ流し続けている。

「何を…言ってるの、あんた。」

 さすがに気丈なセリナの声も震えている。それを見た執事は気をよくしたのか、ニヤリと口の端を上げた。

「まあ、お前もなかなかの器量よしだ。お前を二人で抱いてから、若様を楽しみ、その後で村人全員を抹殺することにしよう。そうすれば、証人は一人もいないな。」

「あんた、自分の欲望のために、村人全員を殺すって言ってんの!?」

 セリナの声がひっくり返った。それに、自分の欲望のためにそう言っているのではない。だが、何も裏事情を知らなければ、そう思うのも無理はなかった。

 さすがのセリナも震えている。まさか、殺すと言ってくるとは思いもしなかっただろう。村娘達も目を丸くして、呆然と執事達を見つめている。

 その様子に満足したらしく、執事はセリナの方に歩を進めた。セリナが少し後ずさる。すると、村娘達にも一斉に恐怖が起きて、みんな怖がり始めた。

「どうした、さっきまでの勢いは。今さらになって私が恐いのか?だが、遅すぎたな。まずはお前を頂くとしよう。」

 執事がセリナに手を伸ばそうとした時だった。

「やめろ。その娘に手を出すな。」

 若様が制止した。その声はいつもの若様ではなく、“セルゲス公”の時の若様だった。今、必死にセリナを守ろうとしているのだ。硬い表情で震えている。

「…ほう。若様がこの娘の身代わりになると仰っているので?」

 執事はグイニスがセルゲス公だと知っているが、一度も王族に対する礼でもって接していなかった。王妃が若様と呼べと言ったため、それに従っているのだ。

 シーク達親衛隊は若様と呼ばないと、若様が叔母上にみんなが害されると心配するので、そう呼んでいるが、本当は殿下と呼ぶのが正式な呼び方だ。ただの一度も、この執事は殿下と言っていない。ラスーカでさえ、直接会う時は殿下と呼んでいることを知らないせいでもあった。

 その執事は若様に近寄ると、ゆっくり手を伸ばした。そして、みんなびっくりして若様を見つめた。なぜなら、若様がパシッとその手を叩いて振り払ったのだ。

「誰にも手は出させない。村人を傷つけるのは許さない…!」

 さらに若様はきっと顔を上げて、執事を(にら)みつけた。だが、その両目には涙が盛り上がっている。

「ははは、泣きながら随分と可愛らしい威嚇(いかく)ですなあ。」

 執事と使いの二人は吹き出し、さらに高笑いして若様を侮辱(ぶじょく)した。

 フォーリは完全に二人を生かしておくつもりがなくなっていた。そして、親衛隊もそう思っていたが、ベイルとロモル、モナの三人はどうすべきか、悩んでいた。セルゲス公である若様に対して、はっきりした侮辱だ。だが、シークが不在のこの状況で、剣を抜いてもいいのかどうか。

 剣を抜けば間違いなく斬り合いになる。領主兵達は精鋭らしく、親衛隊と斬り合うのは前提の様子だ。普通、国王の軍である、しかも親衛隊と斬り合うことになると考えれば、多少なりともためらうはずだが彼らにはそれがない。自信もある上に、主であるラスーカにそう言われているのだろう。何かあれば親衛隊を殺せと。

 親衛隊とフォーリ、若様だけなら勝算はある。問題は村娘達だ。今さらながら、彼らが事前にやってきた時に、村娘達を雇っている以上、領主の使いが来た時には礼儀上、挨拶をさせよと言ったのは、彼女達を人質にするためだったと気がついて(ほぞ)()む思いだった。

「無礼者、控えよ、と言っている!」

 若様が怒鳴った。大抵の者なら、驚き、さらに若様の持つ空気の変化に急いで礼をただすだろう。だが、この二人にはほとんど意味が無かった。押し黙ったのも一瞬のことだけだった。

「いきなり、なんでしょう。偉ぶってみせても、お立場はなんら変わりませんよ。」

「本当にそうか?」

 若様の声が冷たくなった。完全にセルゲス公の時の声だ。

「私を誰だと心得ている?」

 若様に自分が誰か聞かれて、さすがに執事は若様の変化に顔を見直している。

「…セルゲス公でいらっしゃいますが。」

 一体何が変わったのか、執事は若様を観察していたが、何なのか分からなかった。

「無礼である。態度を改めよ。まさか、セルゲス公という位が、王族が陛下から賜る位の中で最高位だということを、知らぬというわけではなかろうな?」

 今の今までおろおろしていた少年の姿はなく、完全にセルゲス公の姿だった。(りん)とした施政者が持つ空気を(まと)ってそこに立っている。

「最後にもう一度言う。態度を改めよ。」

 執事はじっとグイニスを観察していたが、手が小刻みに震えているのを見て、はったりだと判断した。執事が笑い出すと使いも釣られて一緒に笑い出した。

「いいのですか、私の言葉一つで、セルゲス公のお立場は大きく代わるのですよ。セルゲス公でいられなくなる可能性だってあるのですが。」

 執事の(おど)しに案の定、王子は小さく震えていた。

 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ