教訓、四十七。毒を食らわば皿まで、の敵に注意せよ。 2
シークは傷が治るまでの間、食っちゃ寝の生活を送っていた。だが、そろそろベブフフ家の使者がやってくる日ではなかったかと思っていたが……。
ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、どうぞお越しください。
意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?
転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)
シークが療養している間に、あっという間にベブフフ家の使者がやってくる日がやってきた。
実はシークは、ベブフフ家の使者がやってくる日をきちんと覚えていなかった。というのも、部下達もみんなシークにきちんと言わず、痛みと熱と解熱薬で朦朧としている時にこっそり言っただけで、あとは黙っていた。
そうでないと、まだ完治していないのに動き出すに決まっている。ベイルが隊長の代理を務め、ロモルが副隊長のフリをすることになっていた。
そして、シークが眠っている間にシークの護衛を交代する必要があった。寝込みを襲われた事件があったので、怪我をしている時には、必ず護衛をすることにしていた。
今日の当番は頭の回るモナと、柔術技の腕もあるダロスだ。モナがいればシークが目覚めてしまい、護衛から席を外す時でも何かと言い訳ができるからである。二人は昼食を運んでくるジリナがいつ来るかとハラハラしながら待っていた。
やがて、静かに足音がしてジリナが昼食を運んできた。
「ジリナさん、ちょうど良かった。今日はさすがに行かないとまずいんですよ。人数でも数えられたら足りないとバレて、どんな言いがかりをつけられるか分からない。」
モナは早口でジリナに説明した。
「隊長、一人くらいならなんとかなりますが。副隊長が隊長のフリくらいできますから。幸いなことに、あいつら、隊長の顔を知らないから。服はロモル辺りが成りすませば、ごまかせるけれど、三人足りないのはまずい。一人なら便所に行ってますで言い逃れできるし。
そういうわけで、よろしくお願いします。何かあったら、その呼び鈴をガンガン鳴らして下さい。フォーリが聞きつけて行きますから。フェリム、行こう。」
二人はジリナに頭を下げると、大急ぎでその場を後にした。
一人残されたジリナは、じっとシークの寝顔を見つめていた。
シークはそれから間もなく、人の気配に気がついて目を覚ました。ぼんやりと天井を見上げると、ジリナの姿が見えた。
「おや、お目覚めですか?」
ジリナの声がして、彼女の姿も見えた。
「よく寝ていましたよ。どれ、熱がないか調べましょう。」
あっと思う間もなく、ジリナの手がシークの額に伸びてきて、熱を確かめた。
「…うん、大丈夫そうですね。」
そう言って頷いている。どうやら、かなり心配をかけていたようだ。
「…ジリナさんでしたか。もう、そんな時間だったんですね。」
ジリナが来たということは、昼ご飯の時間が来たということである。
「ええ。でも、あんまりぐっすり眠っているようでしたから、しばらくそのままに。でも、そろそろ起きてお食事をした方がいいと思いましてね。」
傷が治るまでは食っちゃ寝の生活を繰り返している。少しずつ運動も許されて動かしているが、やはり、体力は落ちてしまった。
シークはゆっくり体を起こすと大事なことを思い出した。
(そういえば、ベブフフ家の使者っていつ来るんだっけ?もうじきではなかったか?)
寝ぼけている頭でうーん、と考え込む。王太子殿下が来られる前に、色々と備えておかなければならないというのに、のんびりしているわけにもいかない。その前のベブフフ家の使者への対応が、まず第一段階として大事な一手だ。
「ほらほら、お食事ですよ。どうぞ。もう、冷めてしまっていますがね、これ以上、冷たくならないうちに。」
ジリナが急いで食事が載った盆を運んできて、シークの膝の上に乗せた。さらに彼女は匙を取り上げ、汁物を掬い上げようとしている。シークに食べさせようとしてくれているのだ。
慌ててシークは考えるのをやめて、ジリナの行動を止める方に動いた。
「!ああ、自分で食べます。」
言いながらジリナから匙を取り上げ、やや離れた位置にある盆を引き寄せようとした。すると、以外にジリナが強く盆を押さえていたため、スープが揺れて溢れた。
「ああ、わたしったら、ごめんなさいね、つい、子供にかまうみたいに、余計なことを。」
ジリナは急いで溢れたスープを布巾で拭いている。
「すみません。少しですから気にしないで下さい。大丈夫です。」
シークは急いで自分で食べることにした。ジリナはセリナを助けたのがシークだと分かり、それ以来、ずっと気にしている。どうやら、セリナはフォーリのニピの舞がよほど印象に残ったらしく、フォーリさんに助けて貰ったと、繰り返し言っていたらしい。
それで、ジリナがフォーリに助けてくれた礼を言いに行った所、確かに少しはそうだが、ほとんどは親衛隊が助けたと伝えたようだ。それで、ジリナは慌てて謝りにきて、娘のセリナを助けた礼を言ってきた。何回も言われている。
だから、これ以上ジリナに気を使わせないように、シークは急いで料理を口に運んだ。せっせと料理を口に運んでいたが、ふと気がついた。
いつも、伏せっているシークの護衛をしている部下達の姿がない。誰かが必ず交代で二人一組でいるはずなのだが、今日はその二人が座っている椅子が空いていた。二人揃って用足しの便所にいくはずもない。
星河語
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