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教訓、四十七。毒を食らわば皿まで、の敵に注意せよ。 1

 ラスーカ・ベブフフは考えていた。どうやってシークにぎゃふんと言わしてやるかを……。


 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?


 転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)

 ラスーカ・ベブフフは考えていた。今、必死に頭を巡らせていた。王太子が年明けには、セルゲス公の元に行くことが正式に決まったようである。

 カルーラ王妃は身内に当たる。トトルビ・ブラークの方がより近い身内だが、カルーラはラスーカの方をより頼りにしていた。

 その王妃から「タルナスが年明けにグイニスの所に行くようじゃ。早くなんとか致せ。」と連絡してきたので、頭が痛い問題だった。

 上手くいかないと、怒りの矛先を自分達に向けないとも限らないので、非常に困った御仁でもある。仕方ないので手を回すことにした。どうせ、セルゲス公の様子について、王に報告しないといけないのだ。

 それで、見に行かせることにした。そして、同時に大変な田舎に送った親衛隊達の様子も探らせることにしようと決める。

 そもそも、国王軍に入隊できること事態が鼻が高いことだ。それが、親衛隊に入隊できるとなると、それはもう別次元の話である。

 その親衛隊を、雑用に次ぐ雑用の嵐で生活しないといけないような、田舎に送ったのだ。しかも、領主兵の護衛はわざとつけなかった。黒帽子の方につけるなと言われたのだ。何かするつもりなのだろうと思ったが、それに従った。

 とにかく、それでシークの鼻を明かせるかと思うと、内心、愉快(ゆかい)だった。ヴァドサ家は田舎だという(うわさ)があるが、果たして本当にそうなのかどうか。サプリュの育ちでサプリュ出身のシークが果たして、どこまで持つか試してやるつもりでもある。

 実際にヴァドサ家が、田舎暮らしをしているのと同じだというのが本当だったとしても、部下達の方が持たない可能性がある。みんな、隊長と同じように田舎暮らしに耐えられるかどうか、そんなの分からない。

 そう思って、雑用ばかりしないといけない所に送ったのだ。そろそろどんな生活をしているか、報告させなくてはならない。シークがどんな苦労をしているか、聞くだけでも価値がある。なんせ、シェリアは今もシークのことを思っているに違いないのだ。

 そのことを思うと非常に腹立たしかった。確かに自分には妻がいるが、それとこれとは別だった。政略結婚だったため、妻には自分の気に入りの愛人が二人いることは知っている。

 ラスーカ自身も愛人がいるが、お互いに干渉しないで認めていた。そうして、必要な時には夫婦としてお互いに協力し合い、闘うのだ。そう、他の貴族達との闘いなのだ。

 ラスーカはシェリアを落とせば、彼女の領地のうま味も得ることができるので、落としたかったのだ。それに、彼女の領地とは隣同士である。上手くいけば、自領を格段に広くできる可能性もあるのだ。そんな取らぬ狸の皮算用もあった。

 だが、そうは問屋が卸さなかった。シェリア自身が強大な壁であったし、まさか、男あさりをしていた彼女が気に入る男が現れるとは、夢にも思っていなかった。彼女の理想が高すぎるので、気に入る男なんぞ現れるわけがないと高をくくっていた。

 それが、シェリアが本気で好きになった男が現れた。非常に悔しい。シェリアはまず美人だ。その上、頭も良くて計算高く、気位も高い。世の中にこんな女がいるのかと(おどろ)いたのだ。自分の容姿を最大限に利用している。それが分かっているのに、彼女に()かれていたのだ。

 さて、とラスーカは領地の自分の屋敷の自分の書斎で考える。

(……ヴァドサ・シーク、あの若造の鼻っ柱を折るにはどうしたらいいか。精鋭だから、確実に百人単位で領主兵を送らねばなるまい。)

 そんなことをラスーカは考えた。もしかしたら、二百人はいるかもしれない。それくらい送っておけば大丈夫だろうか。しかし、考えてみれば、黒帽子が大街道で大勢で攻めたにも関わらず、返り討ちにされたのだ。

(もっと大人数を送っておかなければ、心配だ。だが……あまりに多すぎても陛下のお怒りを買う。二百人が最大というところか……。)

 ラスーカは考え直した。それでも、精鋭を送っておくことにしよう。

(セルゲス公には悪いが、表舞台から消えて頂くしかない。王太子殿下の将来のためにも。)

 個人的にセルゲス公に恨みはない。だが、将来、王太子タルナスとセルゲス公グイニス王子との間で、どちらが王座に座るか、争いになるのは目に見えている。確かに、セルゲス公本人にそのつもりはないかもしれない。でも、賢い部分が少しでも見えれば、彼を担ぎ出す者が現れてくるのだ。

 そうなれば、本人がどう思っていようとも、必ず王太子タルナスと争わなければならなくなる。だから、今のうちにセルゲス公には、公務を全うする力が無いと喧伝(けんでん)しておく必要があるのだ。

 王妃のカルーラには、セルゲス公に対する恨みがあるが、ラスーカにはそこまでの恨みはない。カルーラ王妃は徹底的に追い詰めるつもりだが、そこまでするのはさすがにまずいと思っている。そこで、病だと喧伝し、最初から公務は無理だと言って回れば、民もあの王子はダメだと判断して、いらぬ期待も抱かないようになるだろう。

 そうなれば、無駄に王子の命を取る必要もなくなる。ラスーカとて王子の命をどんどん失うのはまずいと思っているのだ。

 ラスーカは誰にその汚れ仕事をして貰うか、自分の家臣の中から適当な人物を考え始め、決定したのだった。



 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

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