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教訓、四十五。智に働けば角が立つ、情に棹させば流される。 29

 その日の晩、フォーリがジリナについて続きを話した。驚くことに、ジリナとオルの夫婦はお互いに殺し合うことをほのめかしていたという。


 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?


 転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)

 その日の晩、フォーリは若様が眠った隣の部屋にシークを呼んだ。若様は一時も目を離せないので、今は臨時に医務室にしている部屋にいた。その隣と隣にシークの部下達が分散して寝ている。夕方までは無理に四人入れていたが、あまりに窮屈(きゅうくつ)なので移動したのだ。

 その反対側の部屋に呼び出される。今はベイル達に任せてフォーリの言うとおりにした。

「ジリナさんのことだが。」

 フォーリは深刻な表情で切り出した。

「うん。それで、どういう話をどこまでしてくれたわけ?」

 ベリー医師が(うなが)した。

「それが、かなり詳しい話をこっちが言わないのにしてくれた。パルゼ人ではないと指摘したら、言い逃れできないと思ったようだ。きれいなサリカタ語を話すと言ったら、話し出した。」

 フォーリほどではないが、確かに彼女が話す言葉には訛りがなかった。村娘達の前で話す時はなんとなく似せているのだが、ちょっと違う。

「亡きリセーナ王妃の侍女をしていたそうだが、ジリナさんは王宮の秘密を知って、辞職したそうだ。」

 なんだか途端にきな臭い話になってくる。

「それが、かなり変な話だ。確かにそういう(うわさ)はあった。ベリー先生はご存じかもしれないが。」

 そう言って、話してくれた秘密は考え込むようなものだった。

 リセーナ王妃は二人いたというのだ。しかも、秘密の部屋と通路があって、もう一人のそっくりなリセーナ王妃は、それを使って出入りしていたと。もう一人は大変冷たい女で、本当のリセーナ王妃の時に、ジリナはその衣装部屋にあった秘密をそっと告げた。

 すると、普段は物静かで穏やかな王妃の顔色が変わり、絶対に誰にも言ってはならないと、(きび)しく口止めした。さらに、しばらくして王宮を下がるように言われて、紹介状を書いてくれたという。それで、新しい働き口としてベブフフ家で働くことができるようになった。

「さらに、セリナは今の当主の弟との間にできた子だそうだ。」

 さすがにびっくりして、フォーリを凝視(ぎょうし)した。

「それ、ジリナさんが自分から話したわけ?」

 ベリー医師の質問に、フォーリは首を振った。

「いいや、さすがに上手く話をまとめて終わらせようとしていたが、私が十五、六年前にあった話を持ち出すと、観念して認めた。必死にセリナには絶対に秘密だと言い張っていたが、誰にも言わないと言うと安心した様子だった。」

 ベリー医師とシークは(うなず)いた。これは決して誰にも言ってはいけない話だ。フォーリがいるので、近くに部下達もいないはずだ。三人だけの秘密。

「それで、その話を聞いた後、私は去ったフリをして彼女の様子を見ていた。すると、少し後に窓の外から、誰かがジリナさんに話しかけていた。

 もちろん、一階ではない。二階だ。分かるだろう。そんな芸当が簡単にできるのはニピ族だと。私も気配も無駄もない動きを見て、すぐに我々と同類、つまり、ニピ族だと分かった。」

 ニピ族のフォーリがニピ族だと言うのだから、ほぼ間違いないだろう。

「どんな話を?」

 ベリー医師は先を促した。

「セリナが若様に本気で()れているから、困った娘だという話だ。その後、ジリナさんにそのニピ族は尋ねた。なぜ、自分のことを私に話さなかったのかと。すると、ジリナさんは昔からのよしみで話さなかったと答えた。

 さらに、彼女は相手に、いつ思い出したのか尋ねた。すると、相手は最近まで思い出さず、二ヶ月前に街に出かけた時に見知らぬ者達に取り囲まれ、地下室に幽閉された上、何やら薬を飲まされたりなんだりしているうちに、全てを思い出したと答えた。」

 フォーリは深刻な顔で、考え込むように話している。ベリー医師も考え込んでいた。前に若様の嫌な記憶を治療の一環で忘れさせたと言っていた。もしかしたら、思い出させることもできるかもしれないと考えた所でシークは、はっとした。

(待て…!もし、そうだとしたら、あの黒帽子には完全にカートン家に関係する者……いや、薬や毒に精通している所からして、疑いどころではなくなるのでは?関係する者どころか、黒帽子にはカートン家の者がいると断定していいことになるのでは?)

 そう考えて、もう一度ベリー医師を見ると、おそらくベリー医師もシークと同じ疑いを抱いているのだろう、舌が(しび)れそうな苦い薬を飲んだ時のように苦い顔をしている。

「そして、あの二人はお互いに殺し合うことをほのめかしていた。」

「…っ!?」

 思わず声を上げそうになり、シークは急いで声を飲み込んだ。

「ジリナさんの理由は、セリナを殺そうとしたからだ。そして、相手の男がジリナさんを殺そうという理由は分からなかった。」

 一呼吸置いた後、フォーリは明言した。

「ほぼ間違いない。姿は見ていないが、あの声は間違いなく、ジリナさんの夫のオルだ。彼がここでの実行犯だろう。」

 犯人が誰か分かったところで、新たな問題が出てきただけだった。しかも、確証がまだない。確証がない時点で村人でもあるオルを捕らえれば、領主のラスーカ・ベブフフがどんな言いがかりを若様につけてくるか分からない。

 三人とも考えていることは、同じだった。次、動いた時、確実に実行犯で捕まえないといけないということだ。セリナには悪いが、育ての父親を捕らえなければならない。


 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

 いいね、ブックマークありがとうございます。

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