教訓、四十五。智に働けば角が立つ、情に棹させば流される。 20
昨日、投稿分が長かったため、エブリスタでは区切っていなかった文章を、こちらでは区切っています。
シーク達は絶体絶命の状況だったが、フォーリが走ってきて助かった。そして、ちょうどロルやジラー達が矢を射かける者達に気がついて、横から射撃したため襲撃者達は去っていった。だが、若様の容体は……。
ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、どうぞお越しください。
意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?
転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)
シーク達は絶体絶命の状況だったが、セリナを連れて走り出す前にフォーリがやってきた。そして、舞を舞って飛んでくる矢を打ち落とし始めた。素早く華麗に優雅に矢が落ちていく。
その直後に矢が飛んでくる数が減り始めた。ちょうど、テレムやジラー達が横から矢を射かけ始めたからだ。
矢が飛んでこなくなると、代わりにフォーリは背中の弓矢を構えて二、三本続けざまに射った。だが、命中しなかったようだ。さすがに、山の上からと下からでは飛距離が違ったらしい。
「…逃したか。」
呟いてすぐに弓矢を片づけ、こっちを向いた。
「若様は?」
シークは覚悟して答える。
「すまない。おそらく、毒を。」
すると、フォーリは意外にも落ち着いて頷いた。
「分かっている。置いてあったパンを調べた。ヴァドサ、お前は大丈夫か?」
若様をフォーリに預けながら、どっちの大丈夫か、毒か怪我の方か、シークがすぐに答えあぐねていると、若様が小さな声を上げた。
「フォーリ……。」
若様の声にセリナが飛び上がるようにして、立ち上がった。
「わ、若様…!」
きっと、すがりつくに違いないと思ったシークは、セリナが走り寄ってきたのを遮った。すぐに治療しないといけない。
「若様、遅くなりました。」
フォーリは若様の様子を確認しながら答える。
「ふぉ、フォーリ。セリナのせいじゃ…ない。セリナのせいじゃない。」
若様は必死になってセリナをかばい始めた。
「分かっています。」
フォーリは頷いた。若様の言葉にセリナが泣き始めた。そうこうしているうちに、もう一つの影がたどりついた。
「やっと、追いついた。」
ベリー医師だ。一瞬、シークのハリネズミのようになっている背中を見て黙ったが、すぐに薬箱を広げ始めた。ウィットとフォングーが手伝い始める。
「どんな処置を?」
「吐かせて水を飲ませました。水には炭を入れました。」
炭を入れた経緯は後で説明する。
「炭を?」
「はい。いけませんでしたか?」
果たして炭を入れて良かったのか少し不安だったが、ベリー医師は言った。
「問題ない。吐かせて水を飲ませたのもいい。」
ベリー医師の判断が良かったので、シークは少しだけ安堵した。だが、問題はこれからだ。若様の意識があるうちに、薬を飲ませ始めた。よく、置いてあるパンに毒が入っていると分かったものだ。というか、どんな毒かすぐに特定できたのは幸運でしかない。
シークの毒は何なのか、特定するのは時間がかかった。
若様がむせた。それでも、少しずつ飲んでいき、ベリー医師が良しとする量をきちんと飲み終えた。
「隊長…!隊長、ご無事で?」
ベイルが他にビルクとピオンダ、テルクの三人を連れてやってきた。
「一体、これは何事ですか!?」
ベイルは質問しながら、若様が危機的状況にあることに気がついて、それ以上は尋ねなかった。
「後で話を聞く。今は若様の治療が先だ。」
フォーリが難しい顔で言ってきた。
「分かっている。私は怪我人を確認して連れ帰る。」
シークが答えると、フォーリは震えているセリナを振り返った。
「セリナ、お前は一緒に来い。兵を一人、借りるぞ。」
シークが頷くと、ピオンダが進み出た。一番この中では力持ちだろう。実家で漬物などを作っており、桶を運んだりしているうちに力がついたという。
「セリナを背負え。走って戻る。」
セリナは言っている意味が分からなかったのだろう。呆然と突っ立っていたが、フォーリが厳しく睨んでいるので、慌ててピオンダの背中に負ぶわれた。
「先に行く。」
フォーリが風のように走り出し、ピオンダも続いた。村には一頭も馬がいない。こういう時、非常に困る。やはり、後で何とか馬を使えるようにして貰わねば。
そんなことを考えていると、ベリー医師と手伝いのウィットとフォングーが立ち上がった。それぞれベリー医師の薬箱を手に持つ。
「やれやれ。また走るのか。ヴァドサ隊長、二人借りるよ…!」
「どうぞ…!」
もう走り出している。
「それと、君は後で診るから…!」
ベリー医師は走りながら叫んでいた。
星河語
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