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教訓、四十五。智に働けば角が立つ、情に棹させば流される。 16

 シーク達が切通しになっている道を通り抜けようとした時、振動がして上から大岩が転がってきて……。


 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?


 転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)

 若様を囲むように走り、セリナはシークの後ろを走らせた。セリナがどうしても遅れがちになる。だが、悪いが一刻を争う。

「ついてこれなければ置いていく!」

 シークが少し振り返って大声で伝えると、セリナは必死になって走ってついてきた。彼女の性格からすれば、あきらめてしまうことはない。できるだけ、走ってくるはずだ。置いていけば、彼女は取り残されて死ぬ可能性がある。あの組織が、関わった者を放置しておくとは思えないからだ。

 ダロスがセリナの背負い(かご)を、代わりに背負ってやったらしい。屋敷に到達する前の最後の山道に差しかかった。

 そう深い山ではなく、木々さえなければ丘と言えるほどの高さしかない。しかし、切り通しのようになっていて、前からここで攻められたら嫌だな、と考えていた所だ。

 逆にこっちが攻撃する側だったら、この地形を大いに利用するだろう。守りにも攻めにも使いやすい地形だ。

 シークは上を見上げた。振動を感じたのだ。直後に音がする。

「危ない!避けろ!」

 シークは声を張り上げた。

 大岩が転がり落ちてきたのだ。しかも、一つではない。進路を(ふさ)ぎ、退路も塞ぐように三つ落ちてきた。木々にぶつかりながら、落ちてくる。どう転がってくるか予想がつかず、目を離さずに見つめる。跳ねる岩がギリギリまで迫ってきてから、走って避けた。

 やはり、毒だけで済む話ではなかった。一刻も早く治療をしなければいけない。大人のシークでさえ大変な治療を受けた。子供の若様の体力でどこまで持つのか分からない。しかも、すぐに何の毒か分かればいいが、分からない場合もあるのだ。

 時間勝負だ。それを遅らせつつ、できれば命も奪おうという算段なのだろう。

 シークは急いで部下達の様子を振り返った。セリナはダロスが助けたようだ。ラオとオスク・ハングの二人が、割れた岩の破片が当たって怪我をしたようだ。顔と腕に当たったらしい。

「大丈夫か?」

「はい。少し切っただけです。」

「私も走れます。」

 シークの確認に二人は頷いた。そのようだったので、シークは(うなず)いてもう一度走る体勢に入った時だった。

「!」

 何かを切った、バツン、という音を聞いた気がして、シークはもう一度斜面を見上げた。

「逃げろ!丸太が転がってくる!」

 先ほどと同じように、前も後ろも塞ぐように転がってくる。一度に何本も転がってきた。逃げようがない。

「立木を盾にしろ…!」

 シークは叫んだが、果たして何人に聞こえたか分からなかった。とりあえず、若様を抱いている自分は、何が何でも生き延びなければならない。絶対に怪我をさせてはならない。必ず命を守る。

 シークは斜面を転がってくる方に走り、どんぐりの木を盾にした。先ほどの岩を巻き込んで跳ねながら、丸太が転がってくる。

 ドンッ、ガンッ、ゴンッ……長いような短いような時間だった。

 静かになっても、すぐには動けなかった。心臓の音がやけに大きく聞こえた。これは、戦争にでもいかなければ、体験しないような危機だ。果たして何人が助かったのか。

 シークは深呼吸をすると、ようやく辺りを見回した。どれほどが助かっただろうか。みんな無事か?セリナはどうなった?誰も助けていなければ、彼女の生存は見込めない。

 山の斜面から下を見下ろした。足下を見ると、ジルムがシークの後をついてきて、同じ木を盾にして助かっていた。だが、跳ねた丸太や岩が彼に当たらないとは言えず、当たらなかったのは不幸中の幸いだ。少しの距離で雲泥の差が出ることがある。

 また、トゥインも別の木を盾にして助かっていた。ウィットは向かいの斜面を駆け上がり、さらに木にのぼって助かっていた。これはさすがにリタ族だから、できた芸当だろう。

 だが、他は残念なことに無事では済まなかった。その時、倒れているダロスの下から、セリナが()い出てきた。彼女は無事だったようだ。よろよろしながら辺りを見回している。大きな怪我はないようで、心の底からほっとした。村人に怪我が出なくて良かった。今のところは。

 ダロスの他に、モナ、ラオ、オスク・ハングの四人が怪我をした。ダロスは顔面血だらけだ。

 セリナが呆然として、真っ青になりながら回りを見回している。若様を捜しているのだろう。

「セリナ、無事だったか?」

 シークが斜面から声をかけると、急いで見上げてきた。斜面を下りると、岩やら丸太やら転がっている、狭い道に慎重に立つ。無事だった他の三人もシークの隣に立った。

「お前達は無事か?」

「はい。」

 三人は頷いた。

「走れるな?」

「はい。」


 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

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