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教訓、四十五。智に働けば角が立つ、情に棹させば流される。 6

 シークは若様の作戦を実行するかどうかを悩む。


 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?


 転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)

 どっちみち、機会は一度しかないのだ。目を覚ましたフォーリが聞いたら、絶対に許すはずがないのだから。責任は重大だ。そして、機会は一度きり。

 敵はどう動くだろうか。この様子も見守っているかもしれないのだ。もしかしたら、部下の一人が裏切っており、行動を見ていて合図をしている可能性もある。長引けば長引くほど、危険は増していく。

 シークは腹を決めた。やるしかない。若様の作戦を。

「ベリー先生の言われる通り、フォーリがいないこの好機を逃す事はないでしょう。誰が犯人かを調べるには、いい機会です。逆に言えば、犯人を一刻も早く捜さないと、かえって危険な状況が長引くことにもなります。

 私の部隊に犯人がいる可能性があり、疑われていることも知っています。一度ありました。二度あることは三度あるとも言います。ですから、これを機に調べましょう。私も部隊の中にそういう者がいない事を願います。

 もし、いた場合は厳罰(げんばつ)に処さねばなりません。とても辛いことではありますが。」

 シークの言葉に若様の表情が明るくなった。だが、非常に注意しなくてはならない。かなり、危ない橋を渡るのだ。

 ベリー医師の表情が(きび)しくなった。もしかしたら、ニピ族の可能性がある者を放っておいても、今日はこの作戦を実行したくなかったのか?

 だったら、今の状況が危ないから、早く打開しないとという言い方はなんだったのか。きっと、ベリー医師も複雑な気持ちなのだろう。

 現状維持も作戦の実行も両方、どっちに転んでも危険な状況だからだ。今日、散歩に行かなくても夜中に行動してくる可能性もある。

「できるだけ、若様のおそばにいましょう。確かに相手を油断させるには、セリナがいた方がいいでしょうし、二人だけにならないように私も気をつけます。」

 ベリー医師が(むずか)しい顔で考え込んでいる間に、若様が素直に礼を言ってきた。

「ありがとう。」

 嬉しそうににっこりする。だが、若様は自分の考えと状況がいかに深刻かは分かっていないだろう。

「ですが、油断は禁物です。何があるか分からないのですから、あんまり長い時間はだめですよ。すぐに屋敷に帰れる距離であることが条件です。何か少しでも異変があったら、即、帰ります。いいですね?」

 少しでもベリー医師の不安を和らげようと、条件を若様に伝える。実際にそれくらいしておかないと、かなり危ない気がする。シーク自信も不安なのだ。

「分かった。」

 若様が勢いよく(うなず)いた。彼も今までの経験から、危ない橋を渡るのは分かっているのだ。

「…しかし、あまり近場でも相手は油断しないでしょうね。」

(はい!?)

 ベリー医師は反対しているくせに、そんなことを言い出した。やはり、彼の内心も複雑なのだろう。少し遠くへ行って、相手を油断させ確実に捕らえろという話だ。これは。

「…ベリー先生。非常に難しいことを言われますね。」

「若様が言い出されたことです。少しくらい痛い目に遭っても、恐い目に遭ってもよいという覚悟なんでしょうから、しっぽくらいは確実にこっちも(つか)まないといけません。」

 やっぱり、そういう考えだ。ベリー医師は若様を見つめた。シークも心配になって若様を見つめる。若様が恐いというなら、当然この作戦はできない。近場で屋敷の周りをうろうろという話になる。それはそれで仕方ないし、ほっとする自分がいるのも事実だ。

 二人の視線を受けて、若様は慌てて口を開いた。

「分かった。少しくらい恐くても痛くても我慢する。ベリー先生が言うとおり、二兎を追うのだから頑張る。」

 だが、今日の若様は覚悟が決まっているらしい。どうしても、この(おとり)作戦を実行したいようだ。やはり、やるしかないかと覚悟を決め直す。

「ヴァドサ隊長、分かってますよね?」

 ベリー医師はそう確認してきた。当然だ。親衛隊の隊長が、護衛対象が危険な事をしようとしているにも関わらず、それを黙認したとしたら重罪だ。今回の場合はそれに当たるかもしれない。いや、積極的に関わっているから、それ以上の重罪になるだろう。

 何が何でも失敗は許されないのだ。確実に捕らえなければ。

「分かっています。確実に尻尾を捕まえろということですね。」

 シークが言うとベリー医師はさらに言ってきた。

「ええ。それだけで済むならいいですが…。」

 若様の前で自分の責任に関することまで言いたくなかったが、ベリー医師は確認したい様子だったので仕方なく口を開いた。

「分かっています。もし、若様に何かあった場合は私が全責任を負います。その時は陛下に死罪を申し出るつもりです。」

 シークの言葉に、きょとんとしていた若様の顔が一気に青ざめた。ベリー医師はシークに責任がかかると分からせて、若様の心を変えようとしているらしい。


 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

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