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教訓、四十五。智に働けば角が立つ、情に棹させば流される。 2

 シークが本当に自分の判断に後悔する事件の始まりです。しかし、この時はまだそんな事件になるとは思っていませんでした。


 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?


 転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)

 そんなことの数日後。ちょっとした事件が起きた。

 セリナが投げた皿を顔面に受けたフォーリが、鼻血を流したのだ。ちょうど両手が(ふさ)がっていたため、顔面で受けたらしい。フォーリ(いわ)く、顔面で受けなかったら、吊り戸棚に皿が当たって割れ、破片が若様の料理に入るから、という理由だった。

 確かに立派な青あざが鼻にくっきりできていた。セリナと言えば、青ざめて相当落ち込んでいた。その上、母のジリナにも(きび)しく、厳しく叱られたようだ。

 ちなみに、割った皿は毒味役のラオ・ヒルメとテルク・ドンカのせいにされた。そうでないとセリナの家の家計では、到底割った皿の弁償ができないからだ。

 とりあえず、親衛隊が割ったことにすれば、ベブフフ家も文句は言わないだろうということである。

 これは、実はシークが知らない、ベリー医師がラスーカと結ばせた契約があるからだ。もちろん、その契約についてフォーリも知っている。だから、そうしたのだが、何も知らないシークは、後で国王軍に大金が請求されたりしないか、非常に心配になったのだった。もちろん、皿代の請求はされなかった。

 さて、その皿事件の一日おいた次の日、事件が起きた。シークはこれから後も、たびたび肝を冷やす場面に遭遇するが、その中でも指折り十位に入る事件である。

 若様がフォーリを休ませたいから、寝ている間の散歩の護衛をして欲しいと言ってきた。散歩にはたびたび行っている。

 おそらく、セリナと二人でお散歩をしたいのだろう。だが、フォーリがいつも見張っている。セリナはそのフォーリがいると、かなり緊張して怖がっていることを、若様も気づいている。

 それで、実際問題、フォーリは働きづめで疲れている。だから、フォーリに眠って貰っている間に、実行しようというものらしい。

「……フォーリがいない間にですか?」

 シークが聞き返すと、若様は急いで辺りを見回し、口元にしっと指を当てた。フォーリはちなみに料理中である。だから、若様の警戒は不要だったが、心配になったらしい。

「…もし、フォーリの耳に入ったら、だめって言われるに決まってる。大丈夫だよ、ちゃんとベリー先生にも相談する。だから、その間、ヴァドサ隊長達だけで護衛して欲しいんだ。」

 どうしてもと頼んでくるので、シークはとりあえず承諾した。

 それで、ベリー医師に相談しに行くと、すでに若様はベリー医師にも手を回してあったらしい。

 最近はシーク達の目を盗んで、ちょろちょろ屋敷内を自由に走り回れるようになってきた。危ないが、それはそれで良かった。そういうことができないのも、また問題だ。

「まあ、フォーリが寝ている間、私が一緒に行きますよ。一応、ニピの踊りの習得者ですからな。」

 ベリー医師の言葉にシークは(うな)いた。確かにその通りだ。ベリー医師がいてくれれば、心強い。


 そして、次の日になった。物(すご)く危機を感じる長い一日の始まりだった。

 若様はフォーリに、鼻の青あざを治して貰うようにという心遣いを駆使して、フォーリを医務室に連れて行った。その間、シークは部下達に若様の頼みを話し、フォーリがいないから、一層気をつけるように部下達に促した。

 しかし、若様もフォーリもいないため、それに村娘達も側にはいなかったので、みんな顔を見合わせるとニヤリと笑う。

「とうとう、若様もそういう年齢になったか……。」

「というか、急激な成長じゃないか?だって、春はまだ話せなかった子が、冬になって好きな女の子とお出かけするって。その辺の散歩だけど。」

「…いやあ……。感無量だな…。なんか、隊長が老け込む理由が見えてきたような気がする。」

 すると、みんな頷き合った。

「分かる、分かる。年の離れた弟がね、しかも、手のかかる子が急に成長してまともになった感じの、この充実感っていうか…。」

「なんていうか……。もし、若様が結婚した暁には、フォーリと隊長、二人で号泣してやまないんじゃ?」

「……お前達、そこまで言うか?」

 思わずシークが言うと、隊員達は顔を見合わせた。

「…だって、そうだよなぁ?」

「じゃあ、隊長、将来、若様が結婚したら、泣かない自信あるんですか?」

「…いや、ない。たぶん、泣くな。」

 嘘をつけないシークが素直に白状すると、隊員達が同時に口を開いた。

「ほらあ、やっぱり…!」

 一斉に隊員達に言われる。

「そうじゃない、そんなに年より臭いと言わなくてもいいだろう…!」

 シークの抗議は、みんなに笑って流されてしまった。まあ、本気で怒っているわけでもないので、別にいいが。

「……なんか、若様が将来結婚したら、フォーリと隊長が、新郎の両親みたいに泣いている図が頭から離れない。その光景を頭に思い浮かべたら、消えなくなった。」

 ロモルがまた、その話に戻したりして、みんなで笑っていた。

 しかし、若様が来るのが遅い。ベリー医師と来るだろうと思っていたが、迎えに行った方が良さそうだ。


 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

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