教訓、四十一。吉凶は人によりて日によらず。 2
若様がいなくなり、フォーリは慌ててどこかへ行ってしまった。捜しにいったと分かっているが、念のためシークは後を部下をついていかせる。若様はどこへ行ったのか。無事を祈るしかなかった。
ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、どうぞお越しください。
意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?
転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)
「全員、整列…!人数の確認をする。」
シークが声をかけると、すぐさまベイルが点呼を取り始めた。だが、シークには分かっていた。部下達は全員、揃っている。フォーリの顔色が変わった。
「待て、落ち着いてくれ。手分けをして捜そう。」
まずはフォーリを宥める。ニピ族は主がいないと狼狽える。そう言ってから、一番後ろを歩いていた、セリナとリカンナの姿が目に入ったので、二人を手招いた。
「は、はい。」
二人が緊張して走ってきた。
「二人は若様を見なかったか?」
すると、セリナが答えた。
「いいえ、わたし達のいる方にはいらっしゃいません。誰も後ろには戻ってきませんでした。」
セリナの説明を聞いて、フォーリがくっと息を漏らして拳を握った。謎の組織黒帽子。若様を狙っていると分かっていた。それなのに、防げなかったのだ。その悔しさはシークも同じだったが、一番、落ち着いて行動しなくてはならないのは、シーク自身だ。
「…私としたことが……!」
敵に出し抜かれたフォーリは、全身を震わせて怒り、身を翻して辺りを探し始めた。フォーリは一人、どんどん行くだろう。しかし、放っておいて罠だったりしても困る。
「…い、いいんですか、一人で行っちゃいますよ?」
セリナが言った。そういうことにも、セリナは気が利いている。
「主がいないニピ族を誰も止めることは出来ん。ついていっても見失うだけだろうが、手がかりは見つかるかもしれない。」
シークは二人をついていかせることにした。ウィットとフォングー・ジルムがついていく。過激なウィットと話せないフォングーは、以外に相性が良かった。
「あの、わたし達も手伝います。」
リカンナが申し出た。二人とも緊急事態に、緊張しきって顔色も青ざめている。その様子に怪我をしないか、さらに事故が起きないとも限らないとシークは思った。
(屋敷に帰らせ、ジリナさんに次第を伝えて貰うか……。)
シークがいや、と言いかけた時、セリナが口を挟んだ。
「わたし達、この辺には詳しいです。しょっちゅう入っていますから。ここを起点にみなさんが行かない方に行きます。」
確かに今は、一人でも人手が多い方が助かる。それに、二人を帰しても素直に帰るかどうかも分からない。それよりも、手伝って貰い、自分達が気にしていた方がいいかもしれない。目の届かないところで、何かあってもそれはそれで困る。
「分かった。そうしたら、比較的、斜面の緩やかなそっち側を捜してくれないか。もし、いらっしゃったら、大声で知らせてくれ。」
「!あ、じゃあ、この呼び鈴をがんがんならします。」
なぜか、セリナは呼び鈴をかごから出した。なぜ、最初から若様がいなくなることを分かっているかのように、そんなものを準備して持ってきているのか。シークが思わず鋭くセリナを見つめた時、リカンナが口を開いた。
「あんた、心配性が役に立つわね。」
示し合わせた訳ではない、リカンナの言葉にシークは内心ほっとした。若様が気に入って、話をしたいと思っている少女だ。そういう疑いがかかるのは、避けたかった。
「分かった、頼んだぞ。」
はい、と二人は頷いた。その二人に気をつけるように注意して送り出す。二人はさっそく大声を出しながら捜して歩き始めた。その辺は、田舎の女の子達だ。山や森でいなくなった時のことを、十分に心得ている。
シークは少女達を見送ってから、班編制をした。二人はフォーリを探しに行っているので、実質十八人。その上、シークは情報を整理するために、この場にいる必要があるので、十七人で探す必要がある。四人一組で一組だけ五人になり、元々探索方のモナとロモルを中心に、探しに行かせる。
シークは苦々しい気持ちを押し隠しながら、地図を広げた。部下のオスク・ハングとテルク・ドンカが作った地図だ。簡単なものだが、それでも、ないよりはましだ。それに、この二人の地図の作成能力はなかなか高い。
さらに、森の玄人であるロモルやウィットの意見も反映されている。何枚か写しを作ってあるので、携帯用の筆でどこに探しに行ったか、印をつける。
何事もないことを願うしかなかった。
星河語
最後まで読んで頂きましてありがとうございます。




