教訓、三十八。足下から鳥が立つ。 3
グイニスは毒味係の女性が亡くなってしまい、ショックを受けていた。そして、同時にある恐怖を抱えていた。
ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、どうぞお越しください。
意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?
転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)
グイニスは布団の中で、亡くなった女性のことを考えた。何も教えてくれなくて、ほとんど口もきいてくれなかった。
でも、いつも料理を作ってくれるから、そのお礼を言うと、嬉しそうにはにかんだ様子で微笑んでくれた。ごくたまに、誰もいない時には、そっと頭を撫でてくれることもあっった。
たまたま自分の料理係になったせいで、彼女は毒に当たって死んだ。苦しかった。眠ったふりをして、布団の中でこっそり泣いた。
村の娘達がみんな、びっくりして見つめていた。怖かったに違いない。だって、自分だって怖かった。この田舎の村で育ち、こんなよそ者と接した経験がほとんどない、村の娘達だ。相当びっくりしたに違いないし、恐怖におののいただろう。
昼間、彼女の代わりにフォーリが料理を作ることになり、一緒に手伝いをした。
その時、セリナと彼女の友達のリカンナが、厨房の手伝いに来ていたが、感情が激しく溢れてきて、『自分が死んでも誰も悲しんでくれない』と言ってしまった。それだけでなく、叔父と叔母も自分の死を望んでいるに違いないとも、口走ってしまった。
彼女達の前で、言うつもりなんてなかったのに、口は勝手に動いていた。毒味係が死んでしまったので、親衛隊の隊員二人が毒味役にやってきた。今朝、毒味係が毒に倒れたと分かっているのに、毒味をしなくてはならないと知り、ラオ・ヒルメとテルク・ドンカは、最初、青ざめていた。
でも、グイニスが荒れてフォーリに当たったりしているのを見て、二人は毒味をしてくれた。そして、フォーリとグイニスが作った料理が旨いと言ってくれたのだ。二人は料理を完食した。
とても、心が温かくなった。嬉しかった。泣きそうになるのを必死になって、我慢した。セリナとリカンナがいたので、泣いている所を見られたくなかったのだ。
だって、泣いているのを見られてしまったら、きっと泣き虫の王子だと思うに違いない。だから、本当は泣き虫だけど我慢した。それでも、ちょっと泣いてしまったけれど。
それに、フォーリにも、ひどいことを言ってしまった。でも、側にいてグイニスに何かあったら、一緒に死んでくれると言ってくれた。
心強くて嬉しいのに、とても怖い。フォーリはずっと守ってくれて、多くの人は怖面のフォーリに対して、とっつきにくさを感じるようだが、グイニスにはとても優しい。
フォーリの殺気を物ともしないのは、シークぐらいのものだ。ベイルでも少し引いている。シークはフォーリが殺気を飛ばしても、『ああ、分かった、分かった。落ち着け。』と部下のように言って、軽く流してしまう。彼にとっては、フォーリも部下の一人なのかもしれない。
シークに話をしに行きたくなった。でも、今は抜け出ていっても、フォーリに気づかれてしまう。
フォーリが一緒に死んでくれると言うのが、嫌だった。グイニスは嫌な予感がしている。いつか、必ずフォーリに死ねと言う日がくるのではないのかと。
それが、怖い。
しかも、そうせざるを得なくて、そうするしかなくて。フォーリに死んでくれと頼むしかない。そんな日が来てしまうのではないのかと、そんな気がして、とても怖い。
「若様……?泣いているのですか?」
体を丸めて、布団の中で泣いていると、フォーリが気づいてやってきた。
「……。」
答えたくなくて、だって、なんで泣いているのか、聞かれても答えられない。だから、声を出さないように、黙って寝たふりを続けた。
フォーリが優しく、グイニスの頭を撫でて布団をかけ直してくれた。側の椅子に座って、静かにグイニスが本当に寝付くのを見守ってくれている。
多くの人はニピ族を怖がったりするが、本当はとても優しい。グイニスはフォーリの優しさが胸に染みて、彼の方に寝返りを打てなかった。ただ、ひたすらフォーリに背中を向けて、指で涙を拭い続けた。
星河語
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