教訓、三十八。足元から鳥が立つ。 1
穏やかに過ごしていたシーク達だが、事件が起きる。料理係兼毒見係の女性が死んだ。それを受けて若様も過敏に反応し、その夜、フォーリがシークと相談しにやってきた。
ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、また、ラブ史劇がお好きな方、どうぞお越しください。
意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?
転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)
毎日があっという間に過ぎ去っていったある日。事件が起きた。
シェリアが料理係として随行させた、毒味兼料理係の女性が、毒に当たったのだ。当然、若様は怖がった。最近はずっと、穏やかに過ごせていただけに、急に危険が身近に感じられて、若様は少し過敏に反応した。
その女性は結局亡くなったので、村の共同の墓地に火葬してから埋葬した。シェリアは彼女の一切を伝えてくれなかったので、彼女が何者なのか全く分からないが、亡くなったことを手紙に書いて送った。
(この部分については『命を狙われてばかりの王子と田舎の村娘の危険な恋 ~けっこう命がけの恋の行方~』に詳しく書いています。)
料理係の女性が亡くなったその日の夜。フォーリがやってきた。
「ヴァドサ。分かっていると思うが、怪しいぞ。今回の件は。」
「分かっている。まずは、村娘が利用されている可能性だな。」
「全員が本当に、村の人間かどうか調べないと分からない。」
「そこは、そのうち分かるんじゃないか。やはり、よそ者がこういう閉鎖的な地域にやってきて、いきなり、ああせいこうせいと言ったって、村人の反感を買う。」
「そうなると、お前。分かっているのか。お前の部下が怪しい事になってくる。村娘達はおそらく全員、村の出身だ。ただし、一番怪しいのがジリナ親子だ。その他は村出身で間違いないようだ。」
シークは考え込んだ。今の所、ジリナに怪しそうな所は見受けられない。
「何を根拠に?」
フォーリは少し考えた後、答えた。
「妙に都のことに詳しい気がする。それに、言葉の訛りが少し違う気がする。」
「分かった。気をつけてジリナさんを見てみる。」
「ヴァドサ。村娘達の前では、お前と私はいつも険悪な様子を演出する。それで、敵がどう動くか確かめる。もし、それで動いてきたら、お前の部下達の誰かの疑惑は薄まる。私とお前が険悪だと思うことはないからな。」
フォーリがシークの部下に、誰か裏切り者がいないか心配しているのだと分かり、複雑な気分になった。心配はありがたいし、嬉しいが、しかし、裏切り者がいたら困るし…様々な感情が伴う。
「それよりも、若様はどうだ?滅多に陛下のことを言われない若様が、口にしたそうだな。」
フォーリは頷いた。
「自分が死んでも悲しむ者はいないと、投げやりなことを初めて口にされた。その場に調理の手伝いに、セリナとリカンナもいたから、少しびっくりした。」
「……きっと、ここなら大丈夫だと思われていたから、この田舎の村にまで、敵が来ている証拠になる。だから、それが怖くて、そんなことを言われたのかもしれない。
それに、何もなくても敏感な時期だ。いろいろ、成長過程において感情が様々に変わっていく時期だし。余計に過敏に反応したのかもしれない。」
フォーリがため息をついた。
「さっきから、お前は若様が思春期に差しかかられたから、としか言っていない。」
「しょうがないだろう。そういう時期なんだし。お前、念のために聞いておくが、まさか、思春期が来なかったわけじゃないよな?」
「……。」
フォーリは何か、むすっとした表情で黙り込んでいたが、突然、はっとした。
「分かった。何か感じている違和感。お前がさっきから、父親面しているから、腹が立つんだ…!」
思わぬことを言われて、すぐには言い返せない。
「父親面なんかしてない…!失礼だな。まだ、結婚すらしていないのに。お前の父親になんて、なるつもりはないぞ。」
「違う…!若様に対してだ!」
妙にフォーリは当たってくる。その理由は分かっているが、思わずシークは言い返した。
「父親じゃない、気分的には弟だ…!年の離れた一番末っ子って感じだ。末の妹と三つしか離れてないんだぞ。」
「違う、二つだ。お前が寝込んでいる間に、十五歳になられた。」
思わずシークは額に右手を当てた。
「そうだった……。もう十五歳になられたんだった。最初にお会いした時は、話すことさえ普通におできにならなかったのに。それが、ご自分で一人で出かけられるくらいにまで……。」
「やっぱり年寄りくさいぞ、お前。」
「違う、弟だ…!カレンとたった二つしか違わない…!」
二人が言い合っていると、ベリー医師が入ってきた。
「何やってんの、二人とも。妙な言い合いが聞こえてきた。ま、ヴァドサ隊長、君は老成しているからね。フォーリもあんまり、この人に八つ当たりしないの。」
「…先生。あんまり褒められているような気がしません。」
「別に、褒めてもけなしてもいないさ。まあ、いつまでも君達二人の会話を聞いて、笑いを堪えているわけにもいかないし。」
「……。」
「……。」
「二人とも、真面目に話しているつもりなんだろうけど、面白かったよ。ほら、フォーリ、君は若様のところに戻り給え。」
ベリー医師は、フォーリを追い出した。フォーリも若様の護衛に部屋に戻っていった。
星河語
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