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教訓、三十七。かわいい子には旅をさせよ。 3

 その日の夜。シークのところにフォーリがやってきた。そして、ものすごく落ち込んでいる。その理由は……。


 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、また、ラブ史劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?


 転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)

 屋敷で働く村娘達の面接があった日の夜、フォーリがやってきた。

 シークも聞いて驚いたが、若様が一人で出かけてしまったのだ。しかも、誰にも言わずに窓から抜け出るという、積極的な行動を取った。

 その話を聞いて、山で木を切っていた組は(おどろ)いたが、若様が急に成長しているのも感じられて、みんな喜んでもいた。

 だが、一番、若様の成長を喜んでもいいフォーリが、深刻な顔をしている。

「どうした?何か問題でもあったか?」

 シークが尋ねると、妙に黒々しい感じがする空気を(まと)っているフォーリが、ギンッとシークを(にら)んだ。

「おおありだ…!若様が…!若様が、まさか、まさか……!」

 フォーリの大仰までな落ち込みように、シークは思い至った。ベイルから報告を受けている。

「……くっ。若様がまさか、あんな村娘に声をかけて、屋敷にきて欲しいと仰るなんて…!時々でいいから、話をしたいなどと今までに、言ったことがなかったのに…!」

 やっぱりだった。以前、サミアスが言っていた。ニピ族は焼き餅焼きだと。彼のことを思い出し、サミアスの怪我は良くなっただろうかと、ふと思ったシークだった。頭を振ってバムスとサミアスのことを、頭の中から追いやって、シークは目の前にいるニピ族に集中した。

「……なんてことだ。」

 フォーリはずっと(なげ)いている。

「…何も結婚したいと言ったわけでもあるまいし、そんなに大げさに嘆くことはないだろう。とにかく、若様も年頃の少年らしくなってきて良かったじゃないか。」

 とりあえず、シークはフォーリを(なぐさ)める。

「……結婚したいと言ったわけじゃないから、安心しろと言いたいのか?」

「例えばの話だ。まだ、先は長いんだし、今からそのことについて、心配する必要はないだろう。」

 殺気を放って睨んでくるので、シークはフォーリをさらに落ち着かせようと試みた。

「…だが、もし!」

「もし、は無し…!フォーリ、考えてもみろ、若様に思春期が来なかったらどうなると?確かに一生、可愛いかもしれないが、それはそれで困るだろう。若様に幸せになって貰いと思っているんだろう?」

 フォーリは不承不承(うなず)く。

「……まあ、それは確かに。」

 シークはここぞとばかりに、さらに続ける。

「だったら、今はとにかく静かに見守って差し上げたらどうだ?若様は楽しそうか?」

 すると、フォーリはいたく苦しそうに頷いた。

「……確かに楽しそうにしておられる。」

「じゃあ、それでいいじゃないか。若様には時間がないかもしれない。お前だって、この意味は分かっているだろう。この先、どれほどの時間が残されているかどうか、分からないだろう。それを我々ができるだけ、伸ばす役割を担っているが。」

「……。」

 もはやフォーリは何も言い返さなかった。彼だって分かっているのだ。でも、可愛い若様にはずっと、可愛いままでいてもらいたいのだろう。ニピ族の主人に対する偏愛ぶりを見てきたので、たぶん、そんなこともあって余計苛ついているのだ。

「まあ、愚痴りたくなったら、私に愚痴りに来ればいい。他に愚痴りたいことはないか?」

 すると、フォーリは一層シークを睨みつけた。

「……ふん、ない。」

 ふんの部分の鼻息が荒かった。

「お前の方は、作業は順調だったようだな?」

 フォーリは気分を変えるように尋ねてきた。

「ああ、順調だった。今日で大方、木を切ったし、きのこもたくさん採れたしな。」

「本当に裏山の森で採れたのか?」

「ミカンダケか?そうだ。ロモルもウィットもベリー先生も目の色を変えていたから、間違いない。宝の山だと大喜びだ。そういえば、栗の木もたくさんあった。村にも生えているせいか、村長は目もくれなかったな。

 明日は栗の実を拾うつもりだ。若様も一緒に拾ったらどうだろう?そうすれば、ずっと屋敷の中にいなくていいから、村娘達の視線も浴び続けなくて済む。」

 む、と考えたフォーリは頷いた。

「そうだな。そうしよう。大喜びされるだろう。」

 次の日は栗拾いをした。

 こうして、毎日、採集をしたり、木を切ったり、薪を集めたり穴を掘ったり、冬に向けてのしたくに大忙しだった。

 若様はそういう作業もやりたがり、みんなで一緒に行った。薪割りもやると言い出したため、教えた。

 若様が屋敷に来て欲しいと言った村娘はセリナと言い、娘達の監督をしているジリナの娘だった。だが、母に何か(きび)しく言われているらしく、若様が声をかけても無視したり、気づかなかったふりをして行ってしまうので、若様はだんだんセリナに近づかなくなった。

 そんな様子を見て、フォーリはほっとしている。相手がいることは、一方的に言っても通じない。

 ここに来てからは、若様の剣術の練習も頻繁(ひんぱん)に行えるようになった。若様は毎日、楽しそうに生活している。


 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

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