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教訓、三十七。かわいい子には旅をさせよ。 2

 グイニスがいないことに気がついたベイル達は、慌てて外に探しに行く。

 一方、肥だめを掘る場所を探しに行ったシーク達は、山林で超高級なキノコを見つけ……。


 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、また、ラブ史劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?


 転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)

 その頃、屋敷では。

「やられた!まさか、若様が逃げ出すとは。というか、最近ようやく普通の少年らしくなった証拠だが!」

 窓の外を見て、ベイル達は焦っていた。一人はすでにフォーリに知らせに走った。ちょうど、面接は終わった所だったので、それを聞いたフォーリも慌てた。

「何、若様が!」

 その後、村娘達について、どうするかも言わずに走って、窓からいなくなった。ベイル達も急いで追いかけようとしたが、ジリナが引き止めた。

「それで、どうするんですか?誰が来ていいのか悪いのか、はっきりしてもらわないといけないんですが。」

「ちょっとお待ち下さい。しばらくこのままで。それでは失礼。」

 急いでベイルはそれだけ言うと、大急ぎでみんなを連れてフォーリを追った。というか若様が走ったと見られる草のあとを追って出た。


 その頃、シーク達は森を見て、絶句していた。悪いことばかりではない。しかし、シークはわざと口に出して言わなかった。

 だが、ふと横を見ると、ウィットが目を輝かせていた。急いでロモルを呼び、ウィットにわざと口に出さないように注意してもらった。そうでないと、口に出して喜びを表現してしまう。

 この森には、たくさんのきのこが生えていると。珍しくて買ったら高額なきのこだ。それがたくさん生えているのだ。ベリー医師も目を丸くしているが、抜け目ない人なので黙っている。

 なんで口に出して言わないか。言えばベブフフ家に、差し出さなくてはいけなくなるからだ。この辺は微妙だ。領主の別荘の敷地内だ。ベブフフ家の役人がいなければ、村の物になってしまう。

 やましいが、できるだけ村人にも知られたくなかった。なんせ、食料から何から節約しなければならないのだ。若様の食料もそうだ。ベブフフ家が横領してちょろまかしているので、できるだけ自分達で調達したい。

 だが、オルがいる。そこは後で口止め料に彼にもきのこをあげよう。

 その前にベブフフ家の役人と村長が問題だ。

「……こんな森にいつまでいるつもりだ?私がいる必要があるのか?」

「そうですな。お役人様の仰るとおりです。」

 役人が不満を言うと村長がごまをすって同意した。役人は地方貴族だ。大貴族の元で、小さな貴族が役人として働いているのだ。そのため、偉そうな態度を取る。

「念のため、森の境界などの確認をしたかったんです。」

「それはいい。ご領主様もとやかく言われまい。管理してくれた方が助かるのだ。勝手にやってくれ。私は戻る。殿下のためにやるのだから、そうすればいい。」

「そうですか。」

 シークが(うなず)くと、役人は急いで山の斜面を登り始めた。

「お待ちを。ご案内しますので。」

 村長が急いで追いかける。急いで二人は山林を出て行った。それを見送り、完全にいなくなったのを確認してから、シーク達は急いできのこの元に駆け寄った。

「間違いないか?」

 シークが尋ねると、ウィットとロモルが勢いよく頷いた。

「間違いないです…!ミカンダケで間違いありません!」

 みかんのような香りがするので、ミカンダケという。珍しい高級なきのこだ。

「だいたい、隊長、よく知ってましたね…!珍しいし、たくさんは取れないから、生えてるところも秘密になっているものですよ!うちだって、森の中に生えてたら、みんなこっそり隠してるんですから。」

 ロモルが言う。

「ミカンダケじゃない。この辺、食用のきのこがたくさん生えてる。あっちの方の松林には松茸も生えてたし。薬草も結構生えているし、いい環境ですな。ここら辺を肥捨て場にするのは、非常にもったいない。どこを肥捨て場にしよう。」

 ベリー医師もやってきた。

「本当の所、ヴァドサ隊長はどうして、ミカンダケ分かってたの?普通は珍しい高級きのこだから、口にはしないし、生えていてもそれと気づく人はいないよ、詳しい人達以外は。」

 ベリー医師は念のために、採集したきのこの匂いを嗅いで確認しながら聞いた。

「簡単なことですよ。」

 シークは苦笑した。

「うちにも生えてたからです。敷地内の林や森に生えてましたし、家の近くにも裏庭のちょこっと行った所に生えてたんですよ。子供の頃、みかんの匂いがするきのこが生えてるって言ったら、大騒ぎになって、よくよく捜したら敷地のあちこちに生えてました。」

 一同の目が点になった後、「えー!」と口を揃えて(おどろ)かれた。

「普通、家の敷地に高級きのこは生えてませんよー!」

「いいなあ!」

「とりあえず、隊長、きのこを取りましょう!」

「取り尽くしたらだめだぞ。次の年から生えてこない。」

「そうそう。ちゃんと残しておかないと。小さいのは残すこと。これ、基本ね。薬草も一緒だから。」

 すっかり最初の目的を忘れて、きのこの採集が始まった。

「あのう、肥だめにする所を決めなくていいんですか?」

 その時、オルの声がして一同は、はっとオルの存在を思い出し、同時に最初の目的を思い出した。

 全員、一斉にオルを振り返った。

「すみません。すっかり、きのこに目を奪われてしまって。オルさんにお聞きしたいんですが、どの辺だったらいいと思いますか?」

 シークは採集したきのこを、いくつかオルに手渡しながら尋ねた。

 オルはきのこを片手に持ったまま、頭をかいた。

「はあ……。わしも近年、この辺にはあまり入ってなかったもんで、こんなにきのこが生えてるって知らなかったんですよ。

 一旦、戻ってさらに西に行った方はどうでしょうか?みなさんが興奮しているとおり、わしもここを肥だめにするのは、もったいないと思います。」

 みんなは一度戻り、オルの推薦した辺りを見てみた。確かにその辺はよさそうで、最初に考えていたよりも、便所にも近い。立地もいい。

「ただ、木を切らないといけませんが。みなさんが手伝ってくれるなら、早くすみます。村長にいちいち言わなくていいでしょう。さっき、お役人様もそれでいいと言ってましたし。」

「え、オルさんが手伝って下さるんですか?」

 シークが驚いて言うと、オルは照れくさそうに頭を()いた。

「…へえ。そのつもりでした。一人でするのは骨が折れるなあと思ってたんですか、この様子だと、手伝ってくれそうだと思ったんで、言ってみたんです。」

「じゃあ、切りましょうか。」

「やっぱり、そのつもりですか?腰にぶら下がってるから、そうなのかなあとは思ったのですが。」

 のんきにオルはシーク達の(おの)を指さした。斧だけでなく(なた)やのこぎりも持っている。ヒーズの工兵部隊から借りてきた備品も混じっていた。

「じゃあ、みんな、二人ばかり、きのこを置きに行ってこい。」

「ついでに入れ物持ってきて。薬草も木の実もたくさん取りたいから。」

 ベリー医師が注文する。オルのきのこは、ベリー医師が手巾を出してくるんだ。

 こうして、オルが驚いている間に、ベリー医師が指示した辺りの木を一斉に切り始めた。

 この日、オルは珍しいきのこや、木の実などをたくさん家に持ち帰った。この日は帰ったジリナに聞かれて、ことの次第を話すとジリナでさえも驚いたのだった。


 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

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