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教訓、三十六。裏に回ることも大切。 6

 シークは回復して、とりあえず見回りをしながら、裏庭で剣の練習をしてみた。子供の頃から裏庭で剣術の練習をしてきたので、裏庭は妙に性に合っていて……。


 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、また、ラブ史劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?


 転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)

 しばらく続けて休むことができたおかげか、屋敷に到着してから、シークはどんどん良くなった。

 内心、自分でも回復して良かったとほっとした。今度からもっと、自分の健康状態に気をつけようと気を引き締め治した。そうでないと、任務を全うできるのか、不安でしょうがない。

 仕事のほとんどをベイルとロモルが手分けしてやってくれるので、シークは報告に来たことを確認したり、許可を出したり、報告書に手を入れたりするだけだった。ロモルが仕事をするようになると、モナも引っ張り出されるため、モナも手伝って仕事が進んでいるようだ。

 しかも、モナは黙って、一人で仕事をするような奴ではない。自分が楽に仕事ができるようにするため、誰か適当な人物を見繕う。そのため、結果的にみんなで仕事を手分けすることになる。

 はっきり言って、シークが普通に元気に隊長をしていた頃より、仕事がはかどっている気がする。特に事務仕事が。

 そこで、シークは影からひっそり、自分ができることをすることにした。まず、体を回復させるために、散歩がてら屋敷中を確認して回った。徹底的に見取り図を元に歩いて回る。そして、外からも回って、木々の状態や中庭の状態、外回りの施設の状態を確認した。

 フォーリが指摘していた通り、木が鬱蒼(うっそう)と茂っている。ニピ族でなくても、木の枝を伝って屋敷の内部に侵入できそうだ。裏も表も徹底的に見回る。まるで、猫の縄張りの確認のようだが、ある意味、同じだろう。この動物的な行動が、かえって良い結果を生み出す場合もあるはずだ。

 シークは見回りの時に裏庭に来ると、運動も兼ねて剣を振ることにした。子どもの頃から裏庭で剣を振っていたので、妙に裏庭が落ち着く。表に立つより性に合っているというか……。

 それを考えたら、表に出ずに裏で色々しているのは、結構性に合っているかもしれないとシークは自分で思って少しだけ苦笑した。すっきりして剣を(さや)にしまうと、ふと木の上に猫がいることに気がついた。猫みたいだと思っていたら、猫がいたので一人で笑う。

 目が合った瞬間(しゅんかん)、猫はおっかなびっくりして、びくっと身を縮こまらせた。

「お前、どこの奴だ?村に住んでいるのか?きっとそうだよな。」

 シークが声をかけると、猫は木の枝の上でさらに細い木の枝に顔をこすり始めた。人なつっこい猫だ。機嫌がいい証拠だ。シークが木の枝の下の方に近寄ると、猫は下りてきた。

「食い物は持ってないぞ。」

 手を伸ばすと匂いを()いでくるのでそう言っておく。喉を撫でると、機嫌が良さそうに目を細め、口元の(ひげ)が盛り上がった。ご立派な髭が四方に伸びている。喉を鳴らし始めた。

「ずいぶん、人なつっこいな、お前。」

 その時、シークと猫は同時に人の気配に気がついた。猫は顔見知りなのか、飼い主なのか知らないが、知らんふりしている。

「おや、ミー太郎、お前、こんな所にいたのかい?」

 この屋敷で村娘達を手伝いに雇うことになっている。そうでないと、洗濯など日々の生活のことが大変だからだ。その村娘達を指導することになっている女性だ。

 村の女性だが、かつて、領主のベブフフ家で働いていたことがあるという。確かに何かと気が利く女性のようだ。

「おはようございます。ジリナさん、早いんですね。」

「ヴァドサ殿もお早いようで。何か問題でもありましたか?」

「いいえ。見回りをしていただけです。そうしたら、こいつと出会ったので。ジリナさんのお宅で飼っているんですか?」

「いいえ、うちの隣の隣ですよ。それにミー太郎は半野良です。」

「人なつっこい猫ですね。」

「いいえ、まるで違いますよ。わたしにはちっとも懐きやしません。まるで別人…というか、別猫です。」

 ジリナの声に険があるのを感じ取ったのか、ミー太郎は急に警戒(けいかい)したかと思うと、びょんと木の枝から飛び降りて、とっとと歩き出した。

「ほらね、見て下さい。いつもあの調子ですよ。ちっとも可愛くない猫です。」

「……。」

 なんと言ったらいいのだろうか。ジリナはてきぱきとしていそうなので、それが猫には嫌なのかもしれない。

「ところで、何かありましたか?」

 シークは話題を変えるため、聞いてみた。

「…大きな声では言えませんけどね。」

 ジリナは周りを確認してから言い出した。

「ご領主様は、かなり不便な所に殿下……若様をお連れしたというか、そういう所です。それに、男にも女にも手が早い地域ですよ。若様には一人で外を出歩かないように、注意されておいた方がいいと思います。

 随分、可愛らしいお方だったので。(さら)われたら大変です。田舎者なので、よく考えもせずにそういうことを起こす者がいるかもしれないので。」

 事前にバムスとシェリアに注意されていたことだ。地元の人からも同じ事を言われるとなると、(うわさ)は本当だということだ。かなり、信憑(しんぴょう)性が増す。ヒーズの国王軍でも似たようなことは言っていた。

「それと、親衛隊の方々も気をつけて下さいよ。暗くなったからとか、家に上がってもてなすから、とか言われて上がったらおしまいですよ。

 この地方で作られる蒸留酒があってですね、それが強い酒なんですよ。この地方に生えているハーブがあるんですが、それを入れると酔いが深まるんです。お礼をするとか、とにかくそんな理由をつけて飲ませようとしますから、気をつけて下さい。」

 シークはジリナがこっそり言いに来た理由も分かる気がした。村人に聞かれたら、裏切り者だとか言われて気まずいからだろう。

「分かりました。ご忠告ありがとうございます。」


 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

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