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教訓、三十六。裏に回ることも大切。 5

 シークは結局、ベリー医師との約束を破って寝ながら仕事をしていた……。そして、シークの仕事を減らすため、親衛隊は極力裏方に回ることに。


 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、また、ラブ史劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?


 転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)


 その後、シークはベリー医師との約束を破って、寝ながら仕事をしていた。どうしても、隊長判断が必要なことが出てきて、困ったベイル達がやってきたからだ。

 額に濡れ布巾を乗せ、シークは屋敷内の見取り図を見つめた。ロモルがシークが見えるように広げている。

「意外に複雑な構造の屋敷だな。しかも、思っていたよりも広い。ここに来るまでの道は細くて頼りないのに、屋敷自体はサプリュにあってもおかしくないような規模のものだ。」

「そうなんですよ、どうしますか?」

「一日や二日で、屋敷の規模を確認するのは(むずか)しい。それよりも、フォーリは何と言っている?どの部屋を若様の部屋にしたいと?フォーリの意見を尊重し、それから、我々が普段使う部屋を決める。

 あと、ベリー先生にもどの部屋を医務室にしたいか、聞かないと。」

「ベリー先生は、今、調べに行っています。実際に見てみないと分かりませんから。」

 シークは頷いた。

「ああ、結局、約束を破って仕事をして。」

 ベリー医師がフォーリと若様と一緒に戻ってきた。

「すみません、先生。」

「風邪がうつったら困るから、みんな、後で手洗いとうがいして。その後で、私が生姜湯を飲ませるから、みんな必ず飲むこと。」

「分かりました、先生。それに、隊長判断が必要なんです。休ませられなくて、私達も心苦しいです。」

 すかさずベイルが謝る。

「仕方ないね、分かってるよ。」

「それで、フォーリ、お前はどの部屋を若様の部屋にしたい?」

「そうだな、どこも木が鬱蒼(うっそう)と茂っている。気に入らないが仕方ないから、南向きの部屋だな。あの一棟が一番いいだろう。」

「後で理由をつけて、切るしかないな。」

 そんなんで話し合い、それぞれの部屋割りが決まった。

「そういえば、ノンプディ殿が寄越した女性はどうしている?この中で一番の年長者だったから、旅路が心配だったが。」

「元気そうです。ノンプディ殿が太鼓判を押した通り、きちんと役割を果たし、文句も言わずに料理も毒味もしています。若様が話しかけると嬉しそうにするので、息子を亡くているのは、本当の話ではないのかと思われます。」

 ロモルが答えた。

 シェリアが寄越した中年より年上の女性がいた。彼女は荷馬車を自分で御してここまで来た。シェリアは信用できる者で、決して裏切ることはないと太鼓判を押していた。

 なぜなのかは聞かなかった。きっと、何か裏があるに違いなく、その裏事情は、聞くのに非常に勇気がいりそうだったからだ。ちなみに、その荷馬車はシェリアがくれた。

 シェリアの屋敷にいる時から、若様の料理は彼女が作っているという話を聞いており、実際に彼女が作っているのを目の前で確認し、その料理を食べたら、ノンプディ家で若様に出されている料理と同じだと、ベリー医師が納得した。

 そのため、旅の途中から必要な場合は、彼女の料理を若様は食べている。

「彼女の部屋も用意しないと。年配でも女性だから、気を使わないといけないが、謎の人でもある。フォーリが決めてくれ。」

 フォーリは迷わずに、わざと厨房から遠い部屋を選んだ。だが、部屋としては悪くない部屋らしい。

「隊長、屋敷で働く人について、どうするかベブフフ家の役人が聞いてきています。」

 そこにモナがやってきて報告した。

「ダメだ、終わり…!」

 ベリー医師が強制的に終了させた。

「フォーリ、君が決めなさい。親衛隊は、隊長が寝込んでもいるし、引っ込みがちで丁度いいかも。」

 勝手にベリー医師が決める。

「ベイル、ベリー先生の言うとおりにして、フォーリの人選に従え。親衛隊はあまり、目だないようにしろ。村の人はサリカン人になじみがない。制服を着た一団が来て、恐ろしいだろう。威圧感を与えないためにも、そうしろ。」

 シークが許可を出したので、ベイルは頷いた。

「すまんな、しばらく隊長の代理を頼む。副も頑張れよ。」

 ベイルとロモルに言うと、二人とも苦笑いしてモナと一緒に出て行った。

「お前、熱が出ているくせに、気が回っているな。とりあえず、休んでいろ。」

 いつも仏頂面が多いフォーリがそんなことを言うと、なんだかおかしくなってきて、シークは笑い出してしまった。

「なんだ、なぜ、笑う?」

「すまん。なんか。ははは。」

 シークは(こら)えられなくなって、腹を抱えて笑った。

「ダメだ、熱で浮かされてる。もう、額の濡れ布巾が乾き始めている。ノンプディ家にいた時は、氷があったから助かったが、ここではないからな。」

 ベリー医師がぼやいた。

「先生、深井戸の水を汲んできて、水をぶっかけますか?」

「フォーリ、気持ちは分かるが、やめておこう。せっかく心配したのに、馬鹿にされている気分なのは分かる。だが、熱でおかしい。仕方ないと割り切るんだ。」

「!あ、どうしよう!」

 若様の声と同時に、ジャッ、という妙な音がした。大人の二人は、はっと若様の声でシークの方に目をやった。

「若様、何をしたんですか?」

 シークは笑いながら、(はげ)しくむせて咳き込んでいる。

「フォーリが水をかけたら、って言ってるから、桶の水を額の布巾にかけようとしたんだけど、手が滑って、ほとんど全部かかっちゃった。」

 つまり、シークの顔に水をかけた、ということだ。布団がびちゃびちゃになっている。寝間着もぐしょぐしょになり、着替えなくてはいけない。

「……。」

「若様、布巾の方を(おけ)に入れて濡らすんですよ。」

 無言で頭を抱えたベリー医師に対し、フォーリは内心いい気味だと思いながら、優しく教える。

「そっか、ごめんなさい。そうだよね、普通。桶の水をかけることもあるんだと思った。」

 しょんぼりした若様を見て、いい気味だと思ったフォーリは反省した。若様のような特に純粋な子供の前で、余計なことを言うべきではないと思ったフォーリだった。

 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

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