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事件の裏で、狐と狸が化かし合う。 13

 意識を失ったり、取り戻したりを繰り返すバムス。ミローを先に別の場所に隠そうとサグに命じるため、シークの両親は口を挟みます。

 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?


 転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)

「急ぐぞ。みんな、出ろ。」

 サグが命じた。

「ヴァドサ家の方々も急いで。」

 エイドが誘導する。こうして、屋敷に火が回る前にみんなは脱出した。

 だが、裏庭でバムスはまた、気を取り戻した。そして、言ったのだ。使用人達は表に回り、事件を聞きつけてやってきた国王軍の対応と消火活動の手伝いに当たるように、そして、ヴァドサ家の面々とサグだけで、屋敷を出ると。

 そうは言っても、エイドがヴァドサ家の四人分の馬を引いてきた。さらに、荷車も馬に繋いで持ってきた。馬車は目立つからだ。

 バムスを荷車に乗せる。エイドが御者席に座った。サグは男を監視しつつ、バムスを抱きかかえた。だが、それには無理があった。イーグが男の手を縛り、監視することにした。

 一行は裏門から屋敷を出た。静かに暗闇を進んでいく。ミローも黙ってついてきて、荷車を押した。向かっている場所はカートン家だ。

 もうじきカートン家という所で、バムスが目を覚ました。

「旦那様。」

 サグの小声にバムスがはっとする。

「どこに向かっている?」

「カートン家です。」

「ちょっと待ちなさい。」

 バムスの制止に一行は荷車を止めた。

「サグ、その男を確実に気絶させなさい。話を聞かせないように。」

 サグが容赦なく、イーグが一緒に荷車に乗って見張っている男を鉄扇で気絶させた。

「……ギーク殿に頼みがあります。」

 名指しされたギークはびっくりして、馬を荷車の方に進めた。

「なんでしょうか?」

「ミローを連れて、セグ殿が言っていた、うさぴょん質屋に行って下さい。」

 セグから話を聞いてはいたが、質屋だという話しか聞いていない。チャルナの件で行ったという話だ。しかも、非常にふざけた名前で、その質屋の名前がバムスの口から出たことに(おどろ)く。

「…うさぴょん質屋にですか?」

「はい。私の使いで、ヴァドサ家から来たと伝えて下さい。ミローを預かって欲しいと伝えれば、話は通じます。」

「あの、申し訳ありませんが、ただの質屋にピド族を預かれるとは思えません。」

 ギークの疑問も最もだった。

「あそこはただの質屋ではありません。マウダの表の店です。」

「!」

「大丈夫です。話はついています。マウダは、昔から大勢の人を隠してきたのです。ピド族の扱い方も知っているでしょう。」

「いや…しかし…、大丈夫でしょうか?」

「ミローを売るわけではありません。あくまで預かって貰うのです。それに、マウダに貸しを作ってあるので、預かるでしょう。」

 マウダに貸しを作るって……とギークは思ったが、急ぎなのでとりあえず頷いた。

「分かりました。」

「では、すぐに行って下さい。」

 だが、それは躊躇(ちゅうちょ)した。なんせ、バムスは今にも死んでしまうのではないかと思うほど、弱々しい。

「ですが…。」

「行って下さい。」

 ミローが押しているから、荷車はよく進んでいるのだ。そうでなかったら、カートン家に到着するのが遅れてしまう。

「レルスリ殿。落ち着いて下さい。」

 ずっと黙っていたビレスが口を開いた。

「これ以上、死者を出したくない当主としてのお気持ちは分かります。ミローのことも心配なのでしょう。ですが、今は一番にご自分のことを考えて下さい。

 今、あなたが一番、死にそうだ。あなたを死なせたくないので、今日はここに来たのです。先にカートン家に行きましょう。着いてからミローをギークと一緒に行かせます。それに、ミローも大けがをしています。治療を受けさせなくては。」

「……。」

「ここは、私の顔を立てると思って、先にカートン家に向かって下さい。」

 バムスは少し考えていたが、納得した。

「分かりました。そうします。サグ、カートン家で私の状態が落ち着いたら、うさぴょん質屋に行き、そこでしばらく身を隠す。」

「お待ち下さいまし。レルスリ殿。そんな所ではいけません。」

 今度はケイレがやんわりたしなめた。

「そうです。そんな所ではゆっくり療養できないでしょう。当家に来て下さい。確かにがたが多少来てはおりますが、離れもたくさんあります。

 ……それに、シークの結婚式の準備もあります。教えて頂かないと、準備が出来ません。」

 最後に少し、困ったように付け加えられたビレスの一言を聞いて、バムスはふっと力が抜けた。バムスが軽やかに小さな声で笑い出したので、みんなは少しほっとした。

「そうでした。すっかり忘れていました。それでは、お言葉に甘えさせて頂きます。」

「そうして下さい。」

 ビレスが言った直後、バムスは深く息を吸った。

「旦那様!?」

 抱きかかえていたサグが悲痛な声を上げた。

「そんな、脈が弱く……!急いでくれ!旦那様が…!」

 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

 ブックマーク登録ありがとうございます。

 忙しくて遅くなり、申し訳ありません。

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