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事件の裏で、狐と狸が化かしあう。 2

 悩みながら、少し変更を加えました。

 バムスは『黒帽子』と思われる男達に捕まってしまいます。

 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、また、ラブ史劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?


 転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)


 バムスはそれに気を取られていて、もう一人の男が来たことに気がつかなかった。

「旦那様、旦那様、何があったんですか!」

「旦那様、ご無事で!?」

 激しい物音に住み込みで働いている数人が走ってきた。イールクとビオパは剣の腕が立つ。二人の手にしている剣先から、血が滴り落ちていた。つまり、彼らも何者かに(おそ)われていたか、襲われているのだ。異変に走ってきたのだろう。バムスは息を呑んだ。

「あれだけの数をもう斬ってきたのか。」

 上から下りてきた声に、バムスはぎょっとした。上を見上げる前に体をわしづかみにされる。乱暴に横抱きにされて抱えられ、首筋を大きな手が()でた。思わずぞっとして、身震いする。

「いいのか、武器を捨てないと、このピド族が、お前達の大事な旦那様の首を絞めるぞ。」

「トーハ、やっぱり貴様、信用ならねぇと思った!」

「ミロー、なんでそんな奴に従った!」

「二人とも、このピド族の男は、ミローではない…!ミローとエッタさんは…ぐっ。」

 バムスが最後まで言う前に、トーハに手巾を口に突っ込まれた。喉が詰まりそうになる。

「くそ、貴様…!」

「早く武器を捨てろ。」

 その時、ピド族の男に軽く腕を捻り上げられ、バムスは思わずくぐもった悲鳴を上げた。二人が剣を床に捨てたのが見えた。それを確認して、寝室の扉をトーハが開けた。バムスを抱えたピド族の男が先に中に入る。

「貴様、何をするつもりだ!!」

 続いてトーハが入って扉を閉めた瞬間、扉に剣が突き立つ音がした。どっちかが投げたのだ。

 トーハは、ガチャ、ガチャと鍵をかけ、内側のかんぬきまでかける。何かあったとき、立てこもれるようにしてあった。それを逆手に取られたのだ。

 扉の取っ手がガチャガチャと揺さぶられた。ドン、ドン、ドンと扉も叩かれる。

「トーハ、貴様、許さないからな!!」

「旦那様を放せ、貴様、何をするつもりだ!!」

 二人が扉の外で叫んでいる。くぐもった二人の声が遠くで聞こえた。

 寝室に連れ込まれたバムスは、寝台の上に放るようにして寝かされた。もう、何をされるのかは想像がついている。逃げようにも、ピド族の男に両手両足首をつかまれ、逃げることもできない。嫌な思い出が頭をかすめる。できるだけ、思い出したくない。

 だが、それでも、自分の心をなんとか落ち着かせた。ここは正念場だ。

「バムス・レルスリ。私が誰か分かるか?」

 トーハが言った。おそらくトーハという名前ですらない。男はバムスの口に詰めた手巾を取った。

「……お前の本名は分からないが、黒帽子の実行指揮官という所ではないのか?」

 乾いた口で答えると、男はくくく、と喉を鳴らして笑い、(うなず)いた。

「さすがだな。バムス・レルスリに対して、あまりにも簡単な質問だった。

 ところで、もう、分かっているだろうが、お前にはあることをして貰う。このピド族の男を楽しませて貰おうか。さて、念のために聞いておく。」

 黒帽子の男はバムスを見つめ、ニヤリと口元で笑った。

「ヴァドサ・セグが残した書類はどこだ?冊子と言い換えた方がいいか。あれを誰かに託すとしたら、お前ぐらいしかいない。あれを有効利用できるのは、お前一人だ。あの冊子を素直に差し出すなら、そうだな、始める前にやめられるかもしれない。」

「…そうなると話が違う。」

 今まで一言も話していなかった、ピド族の男が口を開いた。

「ああ、そうだな。すまないが、バムス・レルスリ、お前にはしばらく苦しみを受けてもらわないといけないようだ。それでも、素直に言えば、少しの時間で済む。変わった趣向の拷問だ。声だけ聞けば楽しんでいるようにしか思えないだろうな。」

 男は両手両足をピド族の男に押さえつけられているバムスの(あご)をつかみ、上向かせた。

「どうだ、答える気になったか?私だったら、こんな恥辱と屈辱を受ける拷問は、最初からお断りだ。かなり嫌らしいからな。」

 セグからバムスは冊子を受け取っていた。セグはおそらく、次の標的はレルスリ家で、特にバムスだろうと言っていた。実際にそのようだ。セグはもし、本当に黒帽子が来たらさっさと渡した方がいいと言ったが、せっかくセグが手に入れた情報だ。

 それに、何冊か写しがあるとはいえ、あまりに軽々しく渡すと、かえって怪しむだろう。それに、その一冊が重要だと思わせた方がいい。写しを作った、という情報をみすみす渡してやらなくてもいい。

 うさぴょん質屋から帰ってから、何となくこういう危険に自分がさらされるような気はしていた。

 バムスは覚悟を決めた。今日がその日だとは思わなかったが、いつか来る日だった。

 命がけで守ろうとした上で、渡してやる。そうすれば、敵は一冊しかない自分達の重要な情報を回収したと思い込む。思い込んだ所に(ほころ)びが生じる。

 これから先の一手に繋げられるだろう。しかも、これはバムスが命がけで、体を張って守ろうとすればするほど、信憑(しんぴょう)性が増す。

「……そもそも、私に冊子を渡したと思い込んでいるようだが、私は受け取っていない。」

 男の顔が不気味なくらいに真顔になった。目が怒りに満ちている。バムスが受け取っているはずだと、確信しているのだろう。なんせ、ヴァドサ家の子息達がレルスリ家に出入りしているのだから。そして、バムスの留守中に部屋を捜したが見つからなかったので、この手に出たのだ。

「もう一度聞く。ヴァドサ・セグから受け取った冊子はどこだ?」

 バムスの顎に男の爪が食い込んだ。

「……(すご)まれても、知らないものは知らないとしか、答えようがない。」

 淡々といつものように答える。

「嘘をつくな…!渡されているはずだ…!早くそれを出せ…!」

 男が怒鳴り、唾が飛んできた。

「そう言われても困る。出しようがない。持っていないのだから。私の日記でよければ渡すが、そういう訳にはいかないだろう?」

 男の目が完全に怒りに満ちた。

「ふざけるな!」

「……うっ。」

 バムスの腹を殴ってきた。

「おい!痛めつけるな。綺麗な体を堪能できなくなるだろうが。街で見かけた時から狙っていた。ようやく手に入るっていうのに。」

 ピド族の男が文句を言う。


 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

 いいねをたくさんありがとうございます‼️

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