レルスリ家の使用人 7
ギークがミローに教育をしている間、セグとナークはバムスに謝罪する。そして、二人はある問題に気がつくのだが……。
ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、どうぞお越しください。
意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?
転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)
その頃、伸びていたガーディは目を覚まし、エッタもようやく起き上がって動けるようになった。
ギークの怒声や地響きが聞こえ、何やらヴァドサ家から来た若い客人に、ミローが灸を据えられていることは分かっていた。
「…しかし、本当に宙を飛んでいました。まさか、本当に投げ飛ばすとは思いませんでした。」
黙って成り行きを見ていたバムスが、感想を述べる。
「あのう、申し訳ありません、レルスリ殿。もう、何を言っても聞いてくれないと思います。」
「しかも、燭台も壊してしまって。本当に申し訳ありません。」
ナークとセグは急いで謝った。二人の困り切った顔を見て、バムスは吹き出して笑い出した。厳しく調度品を破壊したことについて、何か言われてもおかしくないし、請求されてもおかしくないのに、楽しそうに笑われて二人は顔を見合わせた。
「申し訳ありません。ですが……あまりにもそっくりなので、おかしくなってしまいました。従兄弟同士なのに、兄弟のようにそっくりです。」
セグとナークは苦笑いした。
「よく、言われます。誰と誰が兄弟で、誰と誰が従兄弟なのか、見分けがつかないと。」
「やはり、そうなんですね。ところで、お聞きしたいのですが、ギーク殿はどんな性格なんですか?」
バムスの方が身分も年齢も上なのに、丁寧に接してくる。少し緊張しながら、セグが口を開く。
「ギーク兄さんは、当家で一番の怖い物知らずです。伯父に対して睨み返せるのは、ギーク兄さんだけです。」
ナークも頷いた。
「父とはすぐに一触即発になります。一番、喧嘩しているかと。…あのう、彼のことはいいんでしょうか?もう、指導する気満々なんですけど。」
ナークの問いにバムスは、ふふ、とおかしそうに笑う。
「あれでも、ギーク殿はミローに対して手加減しているつもりなのでは?」
「はい、そうなんです。申し訳ないです。」
「仕方ありません。誰も止めることができなかったのを、ギーク殿が止めたのですから。そのまま放っておけば、ミローにもよくありません。私が甘やかしてしまったのです。」
その時、エッタがむっくり頭を下げた。
「違いますだ、旦那様。おいらがいけねぇんです。父親がいなかったから、余計にあぁなったんだと思います。おいらじゃ、父親になれなくて、こうなっただ。今、初めてああいう指導を受けてますだ。力で抑えねぇと、ミローは馬鹿な子になってしまいますだ。
旦那様、本当に申し訳ねぇだ。壊してしまいましただ。旦那様も危ねぇ目に遭わせてしまって…。」
「エッタさんのせいではありません。今までどれほど苦労をしてきたか、その身体中の傷が示しています。私が父親のような存在になれれば良かったのでしょうけれど、なれなかったので。」
話を聞いていた人達は、全員それは無理だと思う。バムスの容姿が整い過ぎている。彼の実の子供達以外は、彼を父親と認識するのは難しいだろうと思う。
もしかしたらミローは、彼に恋心さえ抱いているかもしれない、とナークとセグは思った。
つまり、客人に大好きな旦那様が取られているので、大騒ぎしたのだ。自分のものにしたいという独占欲から大暴れし、動物の雄が雌に自分の能力を示すように、自分の力を誇示していたのではないかと思うのだ。
だが、バムスはそれに気がついているのだろうか。彼の中では“幼い子と同じ”だ。確かにミローは頭の方は五歳児と同じかもしれないが、体は大人だ。性的な面も大人と同じなのではないだろうか。
「旦那様、やっぱり、おいら達はカートン家に行きますだ。この間、ミローに話したら、怒りだしただ。でも、こんなことが続いたらよくねぇだ。たぶん、それで余計に暴れたと思うだよ。」
エッタが申し訳なさそうに申し出た。
「…決心が固いようですね。寂しくなりますが、仕方ありません。戻ってきたかったら、いつでも戻ってきて下さい。」
バムスとエッタの会話を聞いて、ナークとセグは納得した。母親であるエッタは気がついているのだ。やはり、二人が思った通り、ミローは旦那様であるバムスに恋心を抱いているのだろう。ミローでなくても、知れば知るほどバムスという人は、性別を超えて好きになってしまいそうな人だ。そこは仕方ないかもしれない。
ただ、普通の人は我慢できても、ミローはできないかもしれなかった。
「…旦那様、本当にありがとうございます。今度カートン家に行って、話をするだよ。」
「分かりました。ここから、カートン家までは距離があります。ガーディに話をさせに行きます。カートン家の先生に来て頂き、話すといいでしょう。」
バムスの言葉にエッタはただただ、頭を下げた。
星河語
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