レルスリ家の使用人 2
レルスリ家の使用人達の話、第二弾です。
くせ者揃いの使用人が大勢いる、バムスのサプリュの屋敷に王様がやってきます。そこにピド族のミローがやってきて……。
ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、また、ラブ史劇がお好きな方、どうぞお越しください。
意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?
転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)
そして、この年はバムスの行動に異変がある年だった。いつもなら首府議会の後、すぐに領地に帰るが今年は帰らなかった。自領とは真反対のシェリア・ノンプディの領地に行った。
シェリアは首府議会の最中に、たまにやってくるごく親しい友人である。サプリュの屋敷にバムスが貴族達を招くことはほとんどない。やってくるのは、ごく親しい人達だけである。その中に、このシェリアも入っていた。大変な美女だが、シェリアの口はよく切れる剣のような人だ。
使用人達も二人は、仲の良い友人同士だと思っていた。そう、まるで男同士の親友のような感じだ。巷ではバムスとシェリアの間の噂が流れるが、使用人達はみんな、それはないと分かっていた。
それくらいシェリアは、雄々しくサバサバした性格の人だ。旦那様のバムスがいつも押され気味、ということも分かっていた。一体、どんな人がシェリアの好みなのか、使用人達の間でもこっそり取り沙汰されていた。
それが、セルゲス公の護衛になった、親衛隊の隊長を気に入り、つけ回しているというから驚きだった。ヴァドサ家の子息ということも分かり、なるほど家柄も目の付け所がいいと納得したものだ。
さて、長らくシェリアの領地に行っていた旦那様のバムスが帰ってきた。
帰ってからもバムスは忙しかった。しかも、途中でやっぱり新しく謎の男を拾ってきていた。八大貴族だということで、金目当てに近づこうとする輩が大勢いるから余計に出会う。怪しげな者に。
その男はベブフフ家で領主兵をしていたのだが、盗みの濡れ衣を着せられ、身の潔白を主張したが認められずにクビになった。その上、妻の実家から離縁するように迫られ、仕方なく離縁して力仕事などをして日銭を稼いでいた。
たまたまティールかサプリュに行こうと大街道を歩いていたら、八大貴族のレルスリ家の家紋がついた馬車が何台も走っているので、荷物でも運ぶ人足として雇って貰えないかと思い、近づいたという。
まったく隙が無く、これまで雇われた中でも、最も危険な匂いを漂わせていてサミアス達が最高に警戒している。しかも、サグがいなかった。四人が三人に減っている。
セルゲス公の護衛のために、サグをおいてきたという話を聞いて、使用人達は苦笑しつつも危険を感じた。
彼らは元々、訳ありの人々である。蛇の道は蛇、その男の危険性を嗅ぎ分けていた。元イナーン家のやくざ者だった人もいるし、外国で将軍をしていた者もいるし、外国に売られて剣奴をしていたという人もいる。
その新たにやってきた、トーハという男を警戒した。
「あいつのこと、どう思う?トーハという奴。」
元イナーン家のやくざ者だったイールクが、エイドという元泥棒集団の頭をしていた男に尋ねた。
「全く気に入らねぇ。旦那様、今までああいう、危ない目の奴は拾ってこなかったのに、なんで今回は拾ってきたかな。」
「分からん。時々、旦那様の思考は分からねぇ。分からねぇから俺達みたいなはみ出しもんを雇って下さるんだが。」
元剣奴のビオパが口を挟んだ。
「単純に、人手が足りなくなるから足そうと思われたのかもしれんのう。」
元外国の将軍だったジョー老人がぼやく。
「え?」
ジョー老人の言葉に、彼よりは若い三人は同時に聞き返した。
「さっき、サプリュの警備に当たる領主兵を減らしてティールに送ると言われていた。」
「はぁ…!」
三人は言って、頭を抱えた。
「なんで、危ない奴が来た時に限って、減らすんだよ…!」
イールクの言葉には口には出さないが、馬鹿、という思いがこもっている。
「サミアス達、反対していたんじゃ?」
エイドの言葉にジョーは頷く。
「しておった。だが、謎の組織が暗躍しているから、家族に何かあったらいけないと言って、ティールの方の警備を増やすと。ノンプディ家でも、相当危ない事件が起こったようじゃな。ここだけの話。」
ジョー老人は古株である。そのため、そういう話も聞けるのだ。
みんなは唸った。そういう理由があるなら、減らすなとも言えない。サミアス達がピリピリする理由が分かった気がした。
「サミアス達、ご愁傷様。」
ビオパが気の毒がる。
「いや、人手が足りない分、俺達が気をつけないといけないぞ。旦那様、内弁慶ならぬ、内ぼんやりだから。朝から晩まで、気づいたら同じ場所で同じ体勢で、ずっと考え事ができるお人だ。考え事をしているかと思えば、半日ぼんやりしていたと言われるし。」
「みんなに言って、旦那様の安全を気にするようにしよう。」
「トーハを見張ることもな。」
「トーハはわしが見張ろう。」
ジョーが手を上げた。
「古株だし、ここの生活を教えるふりをして、見張っておこうかの。」
「ありがたいな。ジョーさん。」
四人は言って、お互いに旦那様のことに目を配るようにしようと頷き合った。この四人が中核となって、訳ありの使用人達をまとめている。
星河語
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