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レルスリ家の使用人 1

 次に進む前に、レルスリ家の内情が少し出てきます。ここを読んでいないと、後で?という部分があるし、分かりやすいと思い載せることにしました。

 バムスが雇った人たちは、曲者ばっかりです。意外にバムスは天然でした。


 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、また、ラブ史劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?


 転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)

 サリカタ王国にはピド族という大きな体の人達がいる。森の子族の言葉で、体の大きな人、と言う意味である。一般的な人達よりも一回りから大きな人で三回り近くは大きかった。平均的には一回り半ほどから二回りくらいだ。

 彼らが山や森から出て来ると、大抵は国王軍に入り戦士として活躍した。昔から史書に()っている。ただ、彼らは平地に下りるとサリカン人と交わったので、身長が低くなっていった。そんな中で、血族を守ろうと近親結婚を繰り返す人達もいた。体の大きさを守ろうとすればするほど、近親結婚を繰り返し、かえって一族は繁栄しなかった。

 さらに、食糧の問題もあった。森の子族と同じような生活をしていたが、大きな体を維持するには、毎日、大量の食料を必要とした。簡単な農耕と狩猟、漁労の生活では維持するのが大変だった。

 その頃、すでにピド族は滅びようとしていたのである。

 そんなピド族がレルスリ家には、使用人としていた。ピド族の親子で、母はエッタ、息子はミローといった。

 エッタ親子は、血族を守ろうとしてきた一族だった。だが、妊娠しても流産が続き、三歳になる前に死ぬ子も多かった。そんな中、ミローは無事に生まれて大きくなった。だが、問題があった。知能が発達しなかった。五歳をすぎても、五歳児のような言動しかできなかった。

 とうとうミローが十二歳の時、エッタ親子はエッタの実の兄で夫に捨てられた。兄妹の近親結婚だった。自分達の両親も姉弟の近親結婚だった。両親はすでに死んでいた。兄が家長だったのだ。

 村を追い出されて、幾星霜。いろいろあって、エッタ親子はレルスリ家に世話になっていた。使用人として働かせて貰っていた。

 レルスリ家のサプリュの屋敷には、訳ありの人々が働いていた。

 外国から国を追われてきた者、故郷で罪を犯した者、故郷で食べていけず街に出てきたものの、騙されたりして食べていけず、泥棒集団に取り込まれて盗みをさせられていた者。

 詐欺集団につかまり、詐欺を働かされていた者、少し金持ちの愛人をしていたが子供ができた途端、捨てられた者。

 夫がばくち打ちで借金をこしらえてばかりなので、子供を連れて家を逃げ出してきた者、貴族の夫人の情夫をしていたが、夫に見つかり殺されそうになった者。

 日銭を稼いで生きていた者、親の借金を返すべく毎日盗みを繰り返していた者、ひったくりと万引きで生計を立てていた者、体を売って家族を養っていた者………。

 ほとんどの人がそういう人達ばかりだった。違うのは屋敷を管理している執事や侍従、侍女の頭だけである。

 最初の頃は、ほとんどの者が容姿の美しい旦那様に対して下心を持ち、人のいい旦那様をいいように扱おうと企んでいたが、結局、できなかった。

 なぜなら、自分達の方が旦那様に“落とされて”しまったからである。旦那様であるバムスには、そんなつもりは全くない。

 だが、訳ありの自分達に手を差し伸べ、生きていくことができるようにして下さった人に対して、そんな恩知らずなことができるのだろうか、ということを思うようになって、できなくなったのだ。

 中には反省する前に、手を出そうと企む(やから)もいる。だが、まず護衛にニピ族が四人ついている。その上、使用人の“先輩方”の(きび)しいおしおきが入る。どうしても反省せずに問題ばかり起こす場合、バムスに報告される。

 バムスは問題を検証し、三回言い聞かせて改める機会を与えても悔い改めない場合は、やめさせた。優しい顔は三度までだ。

 そんな使用人達だったが、実はみんな旦那様であるバムスに、どこか恋心を抱いていた。みんな、旦那様がサリカタ王国一の美男子に選ばれないのは、顔はいいのにモテない男達のひがみとやっかみのせいだと思っていた。

 『旦那様みたいないい女がいないかなあ。』と思っているうちに婚期を逃した者さえいた。男女を問わずモテるのだ。バムスが無類の女好きのように(うわさ)されているが、実際はそうではないことも使用人達は知っていた。

 たまに、旦那様であるバムスの好みでない女との噂が流れたりすることがあるが、おそらく優しく親切な性格を利用してニピ族達の目をかいくぐり、押し倒して逆に(おそ)ったせいだろうと考えていた。

 なぜなら、実際に以前そういうことがあった。逆手込め事件である。妓楼から逃げ出してきた女をバムスが拾ってきたことがあった。

 どうしても二人っきりで話したいことがあるとせがみ、ニピ族を追い出した上で、隠し持っていた薬をこっそり茶に混ぜて飲ませ、意識が朦朧(もうろう)とした所で妓楼の手管で押し倒した。

 しかも、両手首は服の帯で机の脚に縛り、口に手巾を詰めて声を出せないようにしてあった。ニピ族達がおかしいと踏み込んだ時には遅く、それで子供ができてしまった。

 ちなみにその後、正妻から第三夫人までと愛人三人の六人がやってきて話し合い、その女と子供の処遇について話し合った。そして、その女を連れて帰った。なぜか、彼女達は喧嘩せず非常に仲が良かった。

 彼女達は夫であるバムスに、くどくどと身寄りのない人達を雇うのはいいが、まだ素性の分からない人が淹れた茶を飲んだり、目の前で服を脱いだりしたらいけないと、しつこく注意してしばらく滞在してから帰った。

 その時の場合は、すでにサミアスが淹れた茶にこっそり入れたものだったが、二人っきりの時に飲んではいけないと注意された。

 バムスは外では、隙の無い完璧な微笑みの貴公子であるが、家に帰って身内だけになると、(おどろ)くほど隙だらけだった。一度、信用して雇った者は悪いことをしないと信じているかのようで、雇われた側の方が驚愕(きょうがく)した。 

 サミアス達は外でより、屋敷に帰ってからの方に気を使っている。なぜなら、特にサプリュの屋敷には、くせ者達がいるからだ。普段は大人しくしているが、いつ豹変(ひょうへん)するか分からない。

 それなのに、旦那様であるバムスは、大丈夫だとニピ族達に太鼓判を押している。なぜか根拠のない自信を持っていて、ハラハラさせられるのだ。使用人達も分かっていた。その妓女がやったことは、驚愕であったが、同時に先を越されたとみんな悔しがった。

 使用人達は普段は仲がよいが、そういう点ではお互いに見張り合っていた。そして、旦那様であるバムスの根拠のない自信になっている通り、今のところ、問題を起こしていなかった。

 だから余計に、きちんと安定した生活ができれば悪いことをしないようになる、という持論を正当化させる根拠となってしまっていた。


 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

 掲載するかどうか迷った箇所です。でも、ここを飛ばすとちょっと分かりにくいかな、と思うので掲載することにしました。

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