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教訓、三十四。樹静かならんと欲すれども風邪やまず。 4

 お、遅れた……!次の日になってしまった!


 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、また、ラブ史劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?


 転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)


 シークの従弟のセグが死んだと分かってから、まる三日はヨヨから動けなかった。あまりの衝撃(しょうげき)にシークとベイルの二人が動けなかったのだ。二人は必死に、なんとか任務をこなそうとして、事務仕事なども行っていたが、ちょっとした時に放心したように悲しんでいた。

 とても陰湿な一手だった。二人に関係する従弟を殺す。フォーリは密かに怒りを殺した。若様の前では平然としたふりをして、心を落ち着かせた。

「フォーリ。ちょっと、おいで。」

 ベリー医師が若様が眠ってから、フォーリを手招いた。

「さすがの君も少し動揺しているだろう。ちょっとこのお茶を飲みなさい。」

 ベリー医師に勧められて花の香りのするお茶を一口飲んだ。なんとなく心が落ち着いた。自分でも思わないうちに、相当緊張していたようだ。

「分かっていると思うけど、今が一番、危ない。」

 ベリー医師はフォーリがお茶を全部飲んでから口を開いた。

「君はどう思った?」

「怒りを感じます。二人に関係する従弟を殺して、二人を同時に動揺させる。はっきり言ってヴァドサは任務をできるのか、少し不安です。」

「そうだな。元来優しい人だから、今回は苦しいだろう。」

「…ヴァドサは遺書を読んだんですか?」

 フォーリは気になっていることをベリー医師に尋ねた。

「読んだみたいだよ。胸が痛いって言っているから、鍼を打って薬を飲ませた。ベイルにも同じ処置をした。」

「…二人は…いつもなら、こう言うと思います。任務に支障が出るから、他の者に代わりますと。でも、二人は何も言わない。任務を続行しようとしている。私はそれがかえって心配です。」

「……。まあ、ヴァドサ隊長とこの叔父さん達が、二人が落ち着くまではいるって言ってくれているからね。フォーリもあんまり心配しない方がいい。」

 ヴァドサ家の達人二人が、シークとベイルが落ち着くまでは一緒にいてくれると言ってくれているので、助かっている。場合によっては自分達も一緒に行くので、出発して構わないとまで言ってくれていた。

 結局フォーリは、次の日、二人にこれからどうするつもりか話を聞いた。

「……二人に聞きたいんだが。」

 さすがのフォーリも聞きにくかった。

「二人は弔問に行かなくていいのか?」

 もう葬儀は終わっていると聞いていた。葬儀が終わってから来たので、遅くなったという。セグの頼みで見内だけでこじんまりと葬儀を行った。といっても、ヴァドサ家の身内は人数が多いので、それなりの人数にはなるが。後は仲が良かった同期が数人と、セグの上司と同僚が数名、葬儀に参加しただけだった。

 セグがそう頼んだのは、シークに動揺を与えるために、セグを死なせたのであり、葬儀のためにシークが帰京しないようにするためだった。シークが任務に失敗しないようにするため、セグは葬儀を大々的に行わないように頼んでいた。セルゲス公の護衛であり、さらに王から結婚するように命じられている。

 喪に服す期間等も含めて、セグは考えており、さっと終わらせてしまえば結婚式の準備を進めても、人の目もそう憚らなくて済むだろうと考えたのだった。

 セグは死後のことについても、周到だった。そのため、エンスもアレスもセグの遺言通りに動いているという。

「……。」

「もう一回聞く。二人とも弔問に行かなくていいのか?」

「行かなくていい。」

 ようやくシークが答えた。

「本当にいいのか?」

 思わずフォーリが聞き返すと、シークは頷いた。

「セグの遺言だ。」

 シークは言って、フォーリの顔を涙目でしっかり見上げた。

「セグは、私に…ベイルもだから、私達にだが、絶対にセルゲス公の護衛の任から離れてはならないと忠告している。セグがしてくれた忠告は、私が親衛隊に入る前にしてくれた忠告は、全て的を得ていた。

 だから、今回もその忠告に従う。」

「そうか…。分かった。他に何かあったのか?」

 フォーリはシークの様子に静かに聞き返した。鈍いところがある彼も、今回は相当参っている。

「……フォーリ。セグはこうも忠告している。私がセルゲス公の任務を外れたら、セルゲス公の命はないと。だから、絶対にセルゲス公の任務を全うしろと言っている。」

「…私にも。」

 今まで黙っていたベイルが口を開いた。

「私にも同じ事を書いてありました。私達二人だから、セルゲス公の命を守れていると。二人でなかったら、守れないから何が何でも交代してはならないと。どんなことがあったとしても、乗り切ってくれと…。まるで、自分の最期を予想していたかのような……。」

 ベイルは拳で涙を拭った。

「そうか、分かった。」

 フォーリは頷いた。

「だが…任務を続ける以上、失敗は許されない。若様のお命に関わるんだからな。」

 フォーリの厳しい声に二人は頷いた。

「フォーリ、お前の言うことはもっともだ。分かっているが……。もう少しだけ待ってくれ。前に心の折り合いがつかない内に行動しようとして、失敗したことがある。大けがをして死ぬところだった。」

「……心の折り合いなんてつくのか?」

「その疑問はもっともだ。でも、つける。セグが何を言いたかったのか、彼の最期の願いは何なのか、考えたらできると思う。頭では分かっているんだが、心の方がなかなか思うようにいかなくて。すまない。」


 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

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