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教訓、三十三。時は得がたくして失い易し。 10

 ナークは命拾いした。ソドの息子のライクはナークに危害を加えることはできないと泣き崩れる。彼の娘が人質になっていることに気づいたナークは、とりあえず、自分を傷つけて娘を助けに行けとライクに言うが、彼は躊躇してしまい……。


 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、また、ラブ史劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?


 転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)

(…ああ、彼の涙か。)

 ナークは思った。信じられない気持ちのまま、自分は死んでいくのだろうか。だが、首を拘束されていた力が緩んだ。

「………できない。できない、こんなこと。」

 ナークの顔の上に涙がずっと落ちてくる。

「どうしたら……。」

 ライクの声は途方に暮れていた。

「…ライクさん。」

 遠のいていた意識が戻ったナークは、彼に声をかけた。

「…ナーク坊ちゃん。…申し訳ありません。」

「もしかして、先日生まれたばかりのニーナちゃんが人質に?」

 重いため息をライクがついて、ナークの顔の上に降ってきた。

「はい。私が血のついた短刀を持っていかないと、返して貰えません。私が自分で自分を傷つけただけだと分かった場合、殺されてしまう。私は怪我をしていたら、まずいんです。娘を返して貰えなくなる。」

 誰にとは言わなかったが、分かっていた。黒帽子とかいう組織は本当にひどいと思う。仲間でさえ、このように扱うらしい。仲間ではないだろうと思う。

「分かりました。ライクさん、そしたら急所を避けて私を刺して下さい。」

「え!?」

 ライクがぎょっとした声を出した。

「私の意識を保てる程度に、適度な深さで刺すんです。急所を避けて。そうすれば、誰かきても私が事情を説明できます。腕とかではなく、腹部などでないといけないんですか?」

「確かにどことは指定されていません。殺してこいと言われたので。」

「それだったら、余計にいい。暗くてどこを刺したか分からなかった。ということにして、私をとりあえず刺すんです。斬ってもいい。」

「……しかし。」

 ライクはそれでも躊躇(ちゅうちょ)している。ナークは暗がりの中、起き上がるとライクの短刀を手探りで探し当て、取り上げようとした。だが、ライクは取られまいとして、二人はもみ合った。

 焼け付くような痛みを腹部に感じ、ナークは動きを止めた。揉み合った拍子に刺さったのだ。

「!ナーク坊ちゃん!大丈夫ですか!!」

「……ちょうどいい。意識はあるし、深くもないみたい。抜いて持っていって、ニーナちゃんを助けて下さい。」

「…ですが。」

「早く…!赤ん坊は体力がありません。早くしないと手遅れになってしまう。」

「しかし…!」

 その時、地面から馬が走る振動が伝わってきた。

「誰かが来る。早く行って!早く!抜いて持っていけ!」

 ナークが小声で怒鳴ると、ライクはとりあえず短刀を抜いた。さすがに痛みが走り、ナークは(うめ)いた。急いで傷口を押さえるが意外に深いかもしれない。

 ライクは馬に乗ると、反対の方に走っていった。間一髪だった。灯りを煌々(こうこう)と照らしながら走ってきた。国王軍の巡回か?それにしては、人数がまちまちだな。そんなことをナークが思った時、知った声がした。

「ナークか?」

「ナーク兄さん…!?間違いない、馬がそうだ!」

 ギークとイーグの声だ。彼らは近くまで馬で駆け寄ると、慌てて降りて自分の足で駆け寄ってきた。

「大丈夫か!って、怪我してるじゃないか!まさか、ライクさんにやられたのか?」

「なんで、ライクさんだと分かる?」

「ソドさんが、自分が密偵だと。ところで、ライクさんは?」

 ギークとイーグに交互に言われて、ナークはおおよその事態を理解した。

「まだ、遠くには行っていないはずだ。すぐに追え…!」

「待て、ギーク兄さん!」

 信頼できる道場の弟子達に命じているギークを、急いでナークは止めた。

「ライクさんはニーナちゃんを人質に取られている。自分以外の血がついた短刀を持っていかないと返して貰えないらしい。だから、私が自分で刺そうとしたら、ライクさんに止められて、結局事故で刺さった。」

「何やってんだ、馬鹿!」

「結構、深そうだぞ!」

 ギークとイーグはすぐに医者を呼びに行かせた。カートン家が近いので、そこに呼びに行かせる。

「それで、ライクさんはどこに行った?」

「…ライクさんは…とりあえずニーナちゃんを取り返しに行って貰った。争った様子がないと、どこで見られているか分からないし。どうしたらいいか、分からないって相談してくれたから。」

 本当は(おそ)われたとは言わなかった。

「そうか、分かった。」

 そうこうしているうちに、医者が連れて来られた。カートン家はサプリュ中に大小構わず診療所を構えているので、こういう時には助かる。

 馬車に乗せられ、とりあえず馬車の中で応急処置を受けながら、診療所に向かったのだった。

 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

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