教訓、三十三。時は得難くして失い易し。 9
昨日、あらすじを間違えたようです。申し訳ありませんでした。
今日が昨日のあらすじです。謎の組織の密偵の情報により、セグとナークの命が狙われていることが分かります。真相を知った父親達は慌てて動き出しますが、果たして間に合うのでしょうか?
ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、また、ラブ史劇がお好きな方、どうぞお越しください。
意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?
転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)
「ソドさん、何を隠している?」
ビレスが詰め寄ると、ソドは泣き始めた。
「これは、セグ坊ちゃん一人の考えではないでしょう?」
「え?」
「ナーク坊ちゃんも噛んでいるでしょう?」
「どういうことだ?」
ソドはますます泣き崩れた。
「申し訳ありません。旦那様…。でも、たくさん、お子がいらっしゃるんですから、少しは痛みを分けて下さい。ユグスさん、セグ坊ちゃんには可哀想なことをしました。申し訳ありません。」
「泣いていないで、さっさと理由を話せ…!」
エンスがソドの胸ぐらを掴んで体を起こさせた。
「…わしがナーク坊ちゃんの名前で、セグ坊ちゃんを呼び出しました。奴らは見分けがつかないので、どっちの考えかは分かりませんが、とにかくそう言われたので、言うことを聞きました。」
「!なんだと!?」
「今、セグ坊ちゃんは出て行っていないはずです。そして、ナーク坊ちゃんの元に息子のライクを送りました。ライクには子供が生まれたばかりです。赤ん坊が人質に取られているので、必ず成し遂げるでしょう。」
三人は何を成し遂げるのか分かったが、一応確認した。
「…何をするつもりだ?」
「……。」
「言え!何をするつもりだ!?」
ビレスが怒鳴った。その凄まじいまでの迫力に、ソドは泣きながら涙を呑んで口を開いた。
「……今夜、ナーク坊ちゃんとセグ坊ちゃんは死にます。奴らが殺すからです。」
三人は真っ青になった。その時、誰かが廊下を走ってきた。
「大変です!」
ケイレの妹のガルシャだ。セグの見張りを頼んでいた。
「セグが!セグがいません!ちょっと目を離した隙に…!書き置きを残して…!何かおかしいと、あまりにうまく行き過ぎているから、確かめに行くと書いてあって…!もしかしたら、二人かもしれないと、何が二人なのか…!とにかく、いなくなってしまって!」
二人、という点にソドの話を聞いた三人は、突然理解した。ソドの言う“奴ら”のことだ。そして、先ほどソドを口封じに来た。
「そういうことか!しまった!私はセグを追う!どこに行くと書いてありますか?国王軍ですか?」
「いいえ、シークの所に確かめに行くと…!」
「!…シーク坊ちゃんのところに?さすがはセグ坊ちゃんだ。裏をかかれましたな。」
ソドは泣き笑いした。
「ですが…ナーク坊ちゃんは間に合わないでしょう。」
「そう簡単にはいかないだろう。ナークは戦略部門にいるが、ヴァドサ家の子供だ。シークやギークより剣術の才が劣るとは言え、そう簡単には殺せない。」
「!お義兄さま、一体、何の話を?」
ガルシャが困惑の声を上げた。
「説明している暇はない。ギークとイーグに今すぐナークの所に行くように伝えなさい。」
「分かりました。」
困惑しているもの、ガルシャはすぐに頷いて走って戻った。
「私もすぐに行く。きっと、シークの所なら、大街道を走っているはずだ。」
ガルシャの持ってきたセグの書き置きを確認した後、エンスは言った。
「私も行く…!」
「ユグス、お前は無理だ。ここで待っていろ。」
「待てない、セグが殺されるかもしれないのに…!大丈夫、遅れたら置いて行ってくれていい、私も行く…!行かせて欲しい…!」
ユグスはすでに寝台から降りて、寝間着の上に服を着始めた。
「分かった。だが、無理はするな。コンバさんにお前と一緒に行って貰う。」
ビレスが許可したので、ユグスは急いで杖をついて歩き出した。
「私は先に行く。」
エンスはすでに先に走って行っていた。残されたビレスとソドはそれを見送ったのだった。
その頃。
ナークは仕事を終えて帰ろうとしていた。北方の戦況や何かを分析して資料にまとめる仕事をしているが、地図の作成に時間がかかるのだ。何とかして地図を簡単に大量生産できないものだろうか、そんなことを思いながら厩舎に向かい、馬を引き出した。
もう、サプリュに帰る人達は帰ってしまった後なので、国王軍の門前は静かだった。門から下って少し道を回った所で、ナークは馬に乗った。暗いから気をつけなくてはいけないが、歩いて帰れば朝になってしまうだろう。ヴァドサ家はサプリュの外れにあるので、馬は必要な移動手段だった。
「ナーク坊ちゃん。」
馬を歩かせようとした所で、声がしてナークは振り返った。使用人のソド老人の息子のライクだ。一番下の子供が先日生まれたばかりだ。
「ライクさん、どうしたんですか?」
「今日はこういう日だから、用心してお迎えに上がるようにと父に言われてきました。」
ライクは馬首の向きを変えてから答えた。
「そうですか。ソドさんらしい。」
「それにしても、今日はこっちの方面から帰るんですか?」
「はい、ちょっと暗いけれど、早く帰りたいから。」
二人は一緒に馬を走らせた。やがて、一層、暗い道に差しかかった所で、ライクが馬の歩みを止めた。
「どうしました?」
ライクは乗馬も上手い。夜道だから上手く乗れないとかあり得ない。ライクは持っていたランプを持ったまま降りると、暗がりの道を進んだ。何かを確認しているようだ。ナークも馬を下りると、ライクの隣に並んだ。ライクが見つめている先を一緒に目を凝らした。
「何かいますか?」
「……。」
ライクの横顔を彼の持つ灯りで見ると、何か強ばって妙に緊張しているようだ。誰かいるのだろうか。不思議に思って、暗がりに目を戻した瞬間、腕を掴まれ地面に引き倒されそうになった。
「!っ。」
突然、ライクが襲ってきた。ランプが地面に落ちて割れ、その音で馬がびっくりしていなないた。ナークは近くの空き家の建物の壁に背中を押しつけられた。
一体、どういうことか、冷静に彼が謎の組織の密偵だったらしい、と思っている一方で信じられない気持ちで一杯で、本気になれなかった。なぜ、セグでなく自分が狙われているのか、それも解せない。
とうとう地面に倒された。柔術技で抵抗しようとするが、ライクも同じ流派だ。使用人も等しく技を教授されるため、かなりの猛者が使用人にもいる。ライクもその一人だった。
本気になれない上に、実力はナークより上だ。柔術技で体を拘束されて、首を絞められた上に、短刀を鞘から引き抜いた音がした。
「……すまない、申し訳ありません、ナーク坊ちゃん…。こうするしか…。こうするしか子供は戻ってこない。」
ライクが耳元で囁いて、嗚咽が漏れた。暗くて見えないが、何か滴が顔の上にぽたぽたと落ちてきた。だんだん意識が遠のいていく。
星河語
最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
今日は(昨日は)29日のうちに投稿できませんでした。日にちをまたいでしまいました。




