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教訓、三十三。時は得難くして失い易し。 6

謎の男は、セグだと思って接していたが、男にとって重要な『冊子』の話が出たので、思わず問い詰めると……。


 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、また、ラブ史劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?


 転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)

「それと、最後に確認したいことがある。少しいいか?」

 セグは言って、男を手招いた。男は少し考えたが、セグを殺す自信があるほどの武術の腕前がある。だから、セグに近づいた。

「聞きたいこととは何だ?」

「母の部屋から妙な冊子を発見した。」

「!」

 余裕だった男だが、セグのこの発言には(おどろ)かされた。

「母が自分の身辺整理を始め、その中にあったものだ。日誌のようだが、よく分からない。暗号で書いているようだ。もしかしてと思ったんだが、それはお前達の冊子なのではないかと思って。お前に反応があるかどうか、確かめたかった。」

「……。」

 さすがの男も咄嗟(とっさ)に言葉が出て来なかった。

「やはり、お前達の物なんだな。」

「どこにやった?」

 男は知らないふりをするのはやめて、開き直って尋ねた。

「さあ。信頼できる人の元にある。聞かれて答えると思うか?これから、私は死ぬ。だから、お前は私が隠したその冊子の行方を知ることはできない。」

 セグは言って、短刀を抜いた。

「待て…!」

 男は思わずセグの手を(つか)んだ。

「!お前は誰だ…!!」

 セグの顔がはっきり見えて、セグだと思っていた若者がセグではなかった。その若者の手を放し、逃げようとしたとたん、手首に(ひも)が巻き付いた。さらに、腹の急所に短刀が突きつけられる。

「とうとうバレちゃった。バレちゃったなら仕方ない。」

 若者はへへ、と飄々(ひょうひょう)と笑う。

「貴様、貴様は一体、誰だ?」

「へーえ?全員の名前を覚えているのかと思っていたけど、違うんだ?まあ、いいや。私の名前はヴァドサ・イーグ。どうぞ、よろしく。」

 男は理解した。顔が似ているいとこだった。だから、顔が影になるようにずっとうつむいていたのだ。

(謀られた…!私としたことが…!てっきり、誰にも言わなかったと思ったが…!)

「ところで、私の紐術はどうだった?なかなか良かっただろ?」

 ちなみに、イーグの紐術は後に「イーグ式」と名称が与えられ、国王軍や公警、民警の捕り物専用の紐術として採用され、後世まで残ることとなる。

「逃げようと思わないことだな。」

 男の後ろからも声がした。

「よう、初めてだな。ついでに名乗っておこう。私はヴァドサ・ギーク、よろしくな。シーク兄さんに随分(ずいぶん)、世話になっているみたいだな、お前。」

 男は逃げることもできず、二人によって縛られた。両手をぎっちり縛られた上、猿ぐつわもかまされる。足も歩ける程度に縛られた。走ることができない歩幅になっている。

「さあて、向こうはどうなっているかな?」

 ギークが男に向かってにやりと笑った。

(向こう?どういうことだ?)

「そういえば、さっき言った、よく分からない冊子をセグが見つけたのは本当だ。あれ、一体、何?」

 イーグが男に尋ねた。まだ、内容を解読しきれていないのが、幸いだ。そう簡単に解ける暗号ではない。男は彼らが内容を知らない様子であることに安堵(あんど)した。


 その頃。

「……全く、セグは一体、なぜ私にこれを解読して欲しいなどという難題を。私はセグほど頭がよくない。私とチャルナの間に生まれた子が、なんでこんなに頭がいいのか、全く不思議でならない。」

 ユグスはぼやきながら、セグに預けられた一冊の書物を(にら)んだ。しばらく、字を見ながらあれこれ考えていたが、何を指しているのか、何を言いたいのか全く皆目見当がつなかない。

 王とバムスが来た日から、何かがヴァドサ家で起こり始めたのは分かっていた。セグの様子もおかしかった。いや、もっと前から起こっていたのかもしれない。顕在(けんざい)化し始めたのは、シークが親衛隊に任命されてからだろうか。

「…困ったな、全然分からないぞ。時間だけはあると言ったものの…。」

 セグが夕方になって、冊子を持ってきて言ったのだ。解読を試みて欲しいと。何も分からないかもしれないと言ったが、セグは何も分からなくてもいい、とにかく考えてみて欲しいと頼んできたので、引き受けたのだ。

 めったに息子が頼み事をすることはない。ユグスが体を悪くしてからは本当に息子達との接触がめっきり少なくなった。療養のためと称して、子供達と切り離されていた。

 だから、あの日、王とバムスが来てから、本家の方に移されたが、その日からの方がセグやドリスがやってくるようになったので、息子達と接する時間が増えた。それが嬉しかった。なんとか、何かとっかかりを見つけて、少しくらい父親の面目を立てたいが…何もできなさそうだ、とユグスはため息をついて肩を落とした。

 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

 

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