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教訓、三十三。時は得難くして失い易し。 4

 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、また、ラブ史劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?

 今の部分はややシリアスですが、謎の組織の男を捕らえるための作戦を実行します。上手くいくでしょうか!? 


 転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)

 そして、セグはバムスと話をした。謎の組織が黒帽子だと分かっていた。バムスが持っている情報量の多さにセグは(おどろ)いた。その日誌について、ビレスとバムスに相談したが、ナークに手伝って貰って検証することになった。

 そして、できるだけ多く書き写すことにした。一冊しかなければ、燃やしてしまえばおしまいだ。だが、何冊もあれば、それだけで敵には脅威(きょうい)だ。隠しておきたい情報であればあるほど、そうである。

 ただ、今は書き写す作業は父のビレスと母方の叔母のガルシャにして貰っていた。

 単純だが時間のかかる作業は口の堅い二人にしてもらい、セグとナークは資料室で黒帽子の痕跡(こんせき)を捜して、昔の記録をせっせと読みあさっては、怪しい事件を記録してまとめていたのだ。

「…不安なのは分かる。私も不安だ。」

 ナークがぽつりと言った。

「知れば知るほど、驚愕(きょうがく)するしかない。標的にした人間を徹底的に追い込む手口。その人間が破滅するまで続く。かなり、残酷だ。シーク兄さんのこともそうだ。最初は半信半疑だった。でも、言われて調べれば調べるほど、そうとしか思えなくなった。」

「…うん。それに、不安要素は何より、誰かを指している名前に違いないのに、解読した名前の人がいないことだ。ヴァドサ家の中にいる密偵について、書いてあると思っていた。だけど、名前が不明ではっきり言って、落胆したけど同時にほっとした。」

 セグが言うと、ナークも(うなず)いた。

「確かにお前の言うとおりに解読すれば、読める。でも、そうなると名前が一致しない。」

「つまり、これが本名なら、偽名で代々仕えてきたことになる。」

 ヴァドサ家に仕えている間者らしき人物の名前。ゾイド一家とは誰のことを指しているのだろう。ゾイドという名前の人はいない。過去のヴァドサ家の歴史の中にもいなかったのだ。

 セグは考え込んだ。もっと、確実にヴァドサ家にいる密偵をあぶり出さないと。確実にだ。一度で捕まえないといけない。二度目はない。なんせ、先祖代々(だま)してきた一族なのだ。それに、黒帽子の手口を見る限り、残忍である。残虐な殺し方というより、追い詰め方がえげつない。

 彼らの目的が分からなかった。だが、バムスが彼らの目的は内戦だと言った時、すっかり納得できてしまった。

 穏やかな微笑(ほほえ)みを浮かべながら、鋭く先を見通しているバムスに対し、これだから八大貴族の筆頭でいられるのだと理解する。

「…セグ、お前何を考えている?」

「なんでもないよ、ナーク兄さん。」

 ナークは少し考えた後、セグをじっと見つめた。

「セグ。何度も言うけど、あまり思い詰めるなよ。私達二人で、考え抜いた。そして、レルスリ殿も含めて考えて、最終的な案を父上、兄上、伯父上、そして、母上とガルシャ叔母上にも話して、みんなで検証した。

 ギーク兄さんもイーグも、みんなで考えて穴がないようにした。これ以上、ないくらいに準備をしてきた。

 黒帽子は確かに強敵だけど、みんなで乗り切るしかない。後数日で約束の日だけど、誰も犠牲者が出ないように気をつけよう。」

「うん…。ナーク兄さん。覚えておいて欲しい。」

「何を?」

 セグは資料を見つめながら、口を開いた。だが、見つめていても字を読んでいるわけではなかった。

「…黒帽子は…きっと、ヴァドサ家の次はレルスリ家を狙う。」

 ナークがセグを見つめた。

「なぜ、そう思う?」

「まず…この日誌だ。無くなってから、ドリスの部屋を捜した形跡があった。母上がドリスに渡したと言ったのだろう。

 ただ、私の部屋も捜した後があった。私がドリスと怒鳴り合ったせいだ。もし、静かにしていたら私が持っている可能性について、黒帽子の密偵は考えなかっただろう。その点については、後悔してる。」

「つまり、この日誌の本当の持ち主は、黒帽子の密偵に違いないと確信しているんだな?」

「十中八九そうだと思う。だから、必死になって捜すはずだ。誰が持っているのか、必死になっている。」

「私達はそれを利用して、罠をしかけただろう?」

 セグはナークの言葉に(うなず)いた。

「でも、もし、ヴァドサ家で見つからなかったら、きっと今度はレルスリ家を捜すだろう。大昔から存在しているようなのに、密偵の量が少ないわけがない。暗号でも示されている通り、レルスリ家にも密偵がいる。

 仮にヴァドサ家の密偵が捕まったとしても、この日誌が手に入らない限り追跡は続く。次は間違いなくレルスリ家だ。なんせ、レルスリ殿は切れる方だ。そんな人の元に重要な物が手に渡ったとなったら、絶対に取り返さないといけない。」

「……確かに。お前の言うとおりだ。私も敵なら、レルスリ殿に渡した可能性を考えるな。レルスリ殿に伝えたのか?」

「それは一応は。ニピ族が四人もいるような方だ。たぶん、大丈夫だとは思うけど。今度、念のためにレルスリ家の屋敷を見ておいた方がいいかも。ギーク兄さんが休みの日に、一緒に行った方がいいかも。」

 セグの言葉にナークは首を(かし)げた。

「なんでギーク兄さん?街の警備担当だから?そういえば、レルスリ家の近くを担当だったか。」

「うん。だからだ。警備の人数を含めて確認しておかないと。」

 二人は頷き合った。だが、それでもセグは不安を打ち消せなかった。あの男はセグを殺す自信があるようだった。ヴァドサ家全体に己の存在が伝えられる可能性だって、分かっているはずだ。それでも、あえてやってきた。その点が不安だったのだ。

(何かもっと…確実に密偵を捕まえる手段が必要だ。思わず敵が出てきてしまう、そんな手段が。)

 セグはその手段について考え始めた。いや、最初から分かっている。どうすれば、敵が動くのか。一度は選択しなくて良くなったように思えた選択しかない。

 みんなのために、こうするしかない。

 セグはすでに決心していたのだった。

 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

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