教訓、三十三。時は得難くして失い易し。 1
ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、また、ラブ史劇がお好きな方、どうぞお越しください。
意外に頭脳戦もありますかな……。
ただ、転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)
そんなに固い話ではないので、お気軽にお読み下さい。
「隊長、従兄弟達と仲直りしたいと陛下に言ったそうですが、誰と一番、最初に仲直りできそうとか、目星はついているんですか?」
移動途中のカートン家の駅で、ベイルが聞いてきた。側にはモナとロモルもいる。きっと、二人が聞いて欲しいとベイルに頼み、ベイルも気になっていたので聞いてきたのだろう。
「まあ、当てはある。」
シークは答えながら、書類の仕上げをしてベイルに渡した。ベイルも自然に受け取って確認してから、書類入れにしまう。
ヨヨで叔父エンスと従弟のセグに来て貰うことにしていた。二人に大金の祝儀を渡す手はずにしている。本当ならヨヨまで出て行く必要は無い。だが、ベリー医師曰く、あまりとっとと順調に療養地に行くのも良くない、と言ったので、寄り道することにした。
途中の大きな街で、ある程度、サプリュの動向を確認しておいた方がいいという判断だ。この辺ではヨヨが突端の比較的大きな街だ。
寄り道するにも理由はいる。とりあえず馬車の点検、馬具の点検、そんなことを理由にしておいた。
「今度、ヨヨで例の祝儀を手渡す算段にしているが、その時に従弟のセグに来て貰うことにしている。手紙を書いておいた。ベイル、お前なら分かるだろう。セグを選んだ理由は。」
ベイルは不承不承頷いた。
「…まあ、分かりますが。一番中が良かった従弟でしょう?」
「大丈夫だ、心配しなくても。元々、セグは嫌がらせに乗り気ではなかった。でも、母や兄達にせっつかれて、板挟みになりながら仕方なく参加していたのは分かっている。」
「…そうは言っても、本当に協力してくれるんですかね。」
モナが不審そうに口にした。
「大丈夫だ。セグなら。実を言うと、すぐしたの弟のギークよりセグの方が気が合う。馬が合うというか、何も言わなくても通じ合うところがある。今も変わらない。だから、本当は嫌がらせした後に泣いていたのを知っている。」
「……私達が何か言うのは、差し出がましいことは分かっていますが、心配です、隊長。隊長は人がいいから。」
ロモルも心配そうに口にした。
「そう心配するな。私が親衛隊に配属になって、一番最初におめでとうと言ってくれた身内はセグだ。
任命された後、家に帰る前に廊下を歩いている時に会った。どうしたのかと身構えたが、おめでとうと言ってくれた。大変だろうから気をつけてとも言ってくれた。誰もいなかったから、久しぶりに子供の頃に帰って、わだかまりなく話ができた。いろいろと助言もしてくれたし。実を言うと、今までセグの助言に従ってきた所がある。」
「そうだったんですか。心配ないなら、いいんですが。」
みんなどこか不安そうだ。
「大丈夫だ。私が仲直りしたと陛下に言わないと、罰せられるんだから、嫌でも仲直りするさ。」
シークがわざと言うとみんな苦笑した。
「そりゃあ、そうでしょうけど。ま、隊長がいいなら、いいですよ。でも、必ず上手くいくようにして下さいよ。大事にしたくないでしょうし、こっちも注目の的になるの嫌ですから。」
モナが言いたいことを言う。
「ああ、分かってるよ。」
そう言って、笑った。
星河語
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