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バムス・レルスリの顔 5

 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、また、ラブ史劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。

 ただ、転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)


 バムス・レルスリ氏は、先の先まで時代を読んでいます。何が起こるのか、彼の洞察力による推察は果たして当たっているのでしょうか。

「…物騒な話ですな、都で事件とは。して、その根拠は何でしょう?」

「あなたが危惧(きぐ)していることと同じ理由です。」

「…私が危惧している?」

 バムスは(うなず)いた。

「はい。例の黒帽子です。彼らは表に出すぎました。多くの人を巻き込んでも(かえり)みない事件を起こし続けている。あなたもそのことを危惧しているのではありませんか?マウダを彼らの目的のためだけに使うことを警戒(けいかい)している。」

「……。仮にそうだったとして、あなたに何の関係が?」

「今さら、しらばっくれるのはよして下さい。ご存じでしょう。私がノンプディ家の所領に行っていたことを。なぜ行ったのか、その理由もご存じのはず。」

 店主は鼻の頭をかいた。

「確かにそうですな。これは失礼致した。ですが…セルゲス公暗殺に彼らが関与しようとしている。というか、王妃を動かしていると言った方が無難か。」

「やはり、そうなんですね。彼らが妃殿下を操っている。」

 バムスの確認に店主は苦笑した。さすがにそこまでは知らなかったらしい。どこまで知っていて、どこまで知らないのか全く予想がつかない御仁だ。

「ある人が…先日あなたが(さら)わなかったセグ殿が、王宮に彼らの密偵がいる可能性があることを指摘していました。」

 店主はぎょっとした。裏の裏でしか知らないようなことだ。だが、最近黒帽子が派手に動いているので、知る者も増えてきているのが現状ではあるが、そこまで公に知ることはできない。

「…彼がなぜ、黒帽子を知っているのですか?」

「黒帽子が彼に接触したからです。彼らは今、ヴァドサ家を巻き込んで何かしようとしている。彼がここに来たのも、黒帽子のせいです。私が剣を買い戻しに来たのも、そのせいですよ。」

 店主は、はっとした。

「ちょっと…お待ちを。」

 めまぐるしく頭を働かせる。

「…もしかして計算の上ですか?あなたがここに来ることは、黒帽子も計算の上のこと。それで、あなたはそれを利用してここに来て、私達を巻き込むつもりですか?」

 思わず店主はバムスを(にら)みつけた。

「勘違いしないで下さい。先に巻き込んだのは、黒帽子の方です。わざわざここに接触するようにしたんですから。なぜでしょうね。そうしないと遊びが面白くないからでしょうか。一方的に自分達が勝つ遊びは、楽しくないからかもしれません。

 でも、せっかくそうする機会をくれたので、大いに利用しようと思いまして。そうでないと、なかなかマウダの重鎮と、こうして面と向かって話をする機会などありませんから。」

「…なるほど。すでに黒帽子の“遊び”に私達は巻き込まれていると。一つ確認を。彼らの目的はセルゲス公の暗殺です。それを達成させたら、かえって都は安泰なのでは?」

 すると、バムスはじっと店主を見つめ、眉をひそめた。

「私は、一人の孤児の命で都の安泰(あんたい)を買いたくありません。セルゲス公は身分こそ高いですが、両親がいない上に虐待を受けていた可哀想な少年です。そんな子の命で、都を安泰にしろと?」

「……。私達は人を売ってなんぼの外道な商売を生業にしております。道徳を説かれても、どれほど感じると思いますか?」

「少なくとも、あなたはマウダの生き方が外道だということは分かっている。だから、先日、セグ殿を無傷で帰したのでは?」

 店主は苦笑した。

「…それは、ちょっと事情がありましてな。でも、いいでしょう。あなたがどういう人かは分かりました。世の(うわさ)とは当てになりませんなあ。」

「……。」

 ちょっと冗談めかして言ってみたが、どうやらバムスは本気で怒っているらしいと分かって、店主は咳払いした。

「セルゲス公を殺したら、それこそ王国は安泰ではいられない。彼が死んだ時、それも暗殺された時、一気に均衡が崩れます。黒帽子の目的は、セルゲス公の暗殺ではない。それは目的の通過点に過ぎない。」


 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

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