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バムス・レルスリの顔 4

 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、また、ラブ史劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。

 ただ、転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)


 ファンタジー時代劇と言っても、そんなに堅苦しくありません。以外に読みやすいという感想を頂いたことがあります❗

 地団駄を踏みそうな勢いで怒っているサミアスをバムスは見上げ、その握りしめている右拳にそっと手を重ねた。

「サミアス、そう怒るな。落ち着きなさい。」

「だ…旦那様、私達は決して、決して、そのご容姿だけで主君を選んでいるわけではありません。」

 バムスはサミアスの動揺ぶりに苦笑した。ニピ族は優秀で有能だが、時に思いがけないところで感情を爆発させる。

「そんなこと、分かっている。私が一番、知っている。」

 じっと目を見つめて(うなず)きながら、微笑(ほほえ)んでみせると、サミアスは大げさなほど感動し、背中をのけぞらせるほどはっと息を飲んだ。普通、そこまで感動しないだろうが、ニピ族はするのだ。飼い主に呼ばれた子犬のように、嬉しそうに両目を(うる)ませる。しかも、彼らはそれをちっとも恥ずかしいなどと思っていない。

「当初、私の護衛になってくれるニピ族はなかなか現れなかった。子供だった私の考えが見えない、読めない、分からない、そう言われた。

 だから、お前が護衛になってくれて、とても嬉しかった。それまでに何人もの人が私の護衛を辞退して、護衛の必要性を感じていなかったし、いらないとさえ思っていたが、何人も辞退されて、そんなに扱いにくい子供なのかとさすがの私も落ち込んだ。

 そんな時に私の護衛になってくれたから、嬉しかったのを昨日のことのように覚えている。」

「!だ…旦那様…!」

 バムスがサミアスの右手を両手で包み込むようにして握り、言葉の最後に優しく微笑んだものだから、のぼせて気絶するんじゃないかというほど、感動して泣きそうになっている。

「……。」

「……。」

 店主とその護衛は妙な気分になった。何だか…見てはいけない場面を見ているかのような…。その後、何かそういう展開になりそうな…妙な雰囲気である。バムスだから恥ずかしげもなく、そんなことを人前で出来るが…というか、子どもの頃でなくたって、考えが読めないし、分からないんだが。

 見ているこっちが恥ずかしくなってくるような、妙な空気だったが、ふと、雷に打たれたように店主は気がついた。

(そうか!これだから、四匹の猛獣を飼い慣らせるのか!)

 マウダの一員でニピ族と接する機会のある店主にしてみれば、ニピ族というのは不思議で不可解な生き物だった。理解できない変な生物だ。

 最高の武術を持っているが、面食いで自分の主君を顔で選んでいる(本人達は激しく否定)。主君とはぐれたりなんだりすると、ぶち切れて殺しまくる。主君と出会えると人前で主君に口づけしそうな勢いで喜ぶ。

 普通、多くてもニピ族を護衛につけられるのは二人までと言われている。数が多くなると、誰が主人の側に護衛につくかでもめるからだ。だから、バムスが四人のニピ族を護衛につけているのは、異常な数である。

 目の前でちょっと恥ずかしくなるような、妙な光景が広がっているが、それを四人全員にしているから、飼い慣らせるのだ。店主に言わせればニピ族は珍獣で猛獣だ。それを四匹…もとい四人飼っているのは、もはや人技ではない。

(…そうか、バムス・レルスリは…相当な猛獣使いだ……。どんな“猛獣”でも飼い慣らせそうだ。)

 後で店主は別の“猛獣”の存在を知ることになる。店主が納得したところで、サミアスが落ち着いたようだった。

 店主は咳払いして質問した。

「それで、どのような貸しを私達に求めるおつもりで?」

「そうですね、マウダに流れてくる情報を私にも下さい。」

 おっとり穏やかに、女性ならたおやかとか、しとやかと言われるような、そんなふんわりした雰囲気でさらっと言った。

「!」

 思わず店主の護衛が身を乗り出した。店主もバムスを凝視(ぎょうし)した。なんだ、この笑顔と要求してくるものの落差は。

「…それは、(むずか)しいかと。百スクル程度の(もう)けでは、安すぎますな。」

 内心の動揺を取り繕って答えた。

「…そうですか。」

 バムスは言ったが、断られることは予想していたようだ。

「では…。」

 急にバムスの目が鋭くなった。

「何かあった時…私が協力を求めた時は助けて下さい。私が協力を求めたと分かる場合、代理人が来たとしても、助けて頂きたいのですが。」

 店主はバムスを見つめた。バムスが助けて欲しいという状況が起きるというのだろうか。

「まさか、レルスリ殿が助けて欲しいと言われることがありましょうか。」

「…起きるでしょう。近いうちに。」

 店主はバムスを凝視(ぎょうし)した。もし、他の八大貴族の誰かが言ったとしても、そこまで重大には思わなかっただろう。でも、うさぴょん質屋の裏を見抜いたバムスが言ったのだ。知らず緊張が走る。

「どういうことでしょう?レルスリ殿が言われると、少々穏やかではありませんな。」

「…まだ、起きると確定されたわけではありません。ですが、都のサプリュで事件が起きそうです。できるだけ、私も避けたいと思いますし、なんとか穏やかに終結させたい。」

 バムスの表情はにこやかな笑みを浮かべていた時とは全く違う、(すき)の無い表情を浮かべている。

(…これが、本当のバムス・レルスリの顔か……。)

 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

 ブックマークもありがとうございます(´・ω・)(´_ _)♪

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