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教訓、二十七。隠し事は必ず見つかる。Ⅱ 13

2025/10/30 改

 その後、シークにしてみれば妙な展開になった。なぜか、国王軍内での“いじめに繋がる行きすぎた悪ふざけ”について話をさせられ、ギルムまで呼び出されて何年も前の話をさせられることになった。それらは通称“寝込みを(おそ)われた時のための対処の訓練”や“闇討ちの対処の練習”などと呼ばれている。シークはそんなことをしたことないが、されて何度も返り討ちにした。


 なんで、こんなことになったのだろうと、シーク自身が何かとてつもなく悪いことをしたかのように、針のむしろの上に座っているように居心地が悪い思いをし続けた。だが、いじめに(つな)がるので除隊理由がその一つにあるということを訴えた。


 結局、シークは洗いざらい何でも話せと言われ続け、街の警備中に起きた話とか、教官時代にあった出来事など、話をさせられるはめになった。もちろん、若様の護衛の話も当然入る。謎の組織の話も含め、ひたすら話をさせられた。


 昼食の時間が来ても解放されず、ベリー医師が来てシークに食事をさせると言った所、王は自分とギルムの分の食事を医務室に持ってこさせ、食事をしながら話すことになった。

 ただ、シークが黙々と勢いよくお(かゆ)を平らげていたので、さすがに食べ終わるまで待ってくれた。お粥を三杯おかわりしたので、ベリー医師は少し機嫌が良くなった。ずっと、シークが無理をして起きて話をさせられているので、機嫌が悪かったのである。


 そして、シークが解放されたのは夜になってからだった。それも、ベリー医師が強制終了しなければ、まだ続いただろう。

 ベリー医師に促されて、王とギルムが立ち上がって後ろを向いた瞬間に、シークはぐったりと倒れ込んだ。寝台に倒れ込んだ音で、三人は振り返って苦笑した。


「陛下、これではすぐに治せというご命令は実行できません。」


 国王だろうと関係なく、ベリー医師は言うべきことは言う。


「分かった、悪かった。かなり無理をさせてしまったか。だが、話を聞いて良かった。現場にいなくては分からん話がでてきたからな。明後日から大いに命令を遂行してくれ。」

「明後日ですか?」


 王は頷いた。


「明後日、帰る予定にしている。明日はグイニスと話をする予定だ。」


 王はそう言って、ようやく医務室から去って行った。


「…まったく、どこが少しなんですか。長過ぎなんです。」


 ベリー医師は見送った後に一人で愚痴(ぐち)り、シークに布団をかけてやった。起きた時にはなかったくまが目の下にできている。疲れ切っただろう。

 王はかなりシークを気に入った様子だった。安心して(おい)を任せられると思ったようだ。ずいぶん、楽しそうだった。


「……分かってますか。あなたが(ねた)まれる理由を。こうやって、上の人に可愛がられるからですよ。あなたの人徳でしょうね。飾らずにありのままの自分で話をさせてしまう、そんな所があなたにはあるんですよ。あなたになら、話しても大丈夫だと思わせる。誠実な人柄だからなんですよ。


 だから、私もあなたには変わって(もら)いたくないです。そのままでいて下さい。どこか抜けていても、とんちんかんな所があってもいいですから。その抜けた所があるから、上の方々も安心するんです。そうでないと、警戒(けいかい)されまくりですよ。剣術の腕も立って頭も悪くないし、若様の覚えがいいとなれば。

 どこかのんきだから、いいんです。だから、変わらないで下さい。」


 ベリー医師は、軽い寝息を立てているシークに話しかけた。衝立の向こう側に出て黙って立っている二人に、手で向こうに行こうと合図を送った。


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