教訓、二十七。隠し事は必ず見つかる。Ⅱ 10
2025/10/24 改
王はさらに続けた。
「よいか。これは仮にお前が除隊しても関係なく行うのだ。一度、グイニスをベブフフの領地に送った後、グイニスをサプリュに戻さねばなるまい。セルゲス公の位を受けてから、一度も正式に王宮に入っていない。
グイニスの様子を見る限り、この分だと儀式も行えるだろう。セルゲス公の位を授ける儀式を正式に行う必要がある。タルナスも会いたがっているし、護身術も多少覚えたようだから以前よりは安全だろう。
お前はその時に祝言を挙げよ。グイニスにセルゲス公の位を授ける儀式を行い、お前達をグイニスの親衛隊に任ずる任命式をその時に行う。
その後、グイニスがサプリュにいる間は、お前達は休暇で臨時の親衛隊員と交代だから、祝言を挙げるのだ。これは命令だ。その時にはグイニスを祝いに使わす。」
恥ずかしくて顔を上げられなかったシークだったが、慌てて顔を上げた。あまりに急展開で、シークは頭の考えをまとめられなかった。
「……。」
なんて言うべきか、言葉を出せないでいると王が苦笑した。
「混乱しているようだな。グイニスの親衛隊の隊長が祝言を挙げるのだから、グイニスが祝いに行って当然だ。バムスに式を挙げるための準備を手伝わせる。セルゲス公が出席する結婚式になるのだから。」
シークは今度は青ざめた。ようやく王の言っている意味が理解され始め、なんだか大変な事態になっていることが分かった。
「……し…しかし、陛下! 私は婚約を勝手に破棄して来たので、今頃、実家では騒ぎになっていると思います…! その上、今度、また婚約を戻すとか、そういう勝手なことはできないと考えられます。しかも、任務がある限り、いつ死ぬか分からない身ですし、妻になったらすぐに寡婦になってしまう可能性が…。」
焦って思わず勢いよく言ってしまったが、王の表情が険しくなり、シークの言葉が尻すぼみになった所で、王に怒鳴られた。
「馬鹿者…! 任務がと言っておったら、いつまでも結婚できんだろうが!」
その上、げんこつで頭を叩かれた。なぜか身内に対するような接し方をさっきからされて、シークは困惑していた。
「よいか、いつ死ぬか分からんから、とっとと結婚せよと言っておるのだ! この分からずやめ…!」
「…はい。」
思わず父に叱られているような気分になり、身を縮ませて返事をしてしまった。
「分かればよい。しかも、自分でも勝手に婚約を破棄してきたから、問題になっているだろうと分かっているのだな? きちんと手紙を出しているのか? その分だと書いてないようだな。遺言書ばかり確認していないで、家族に手紙を書け。もちろん、婚約者にも書くのだぞ?ちゃんと書いたら、私に見せよ。私が添削してやろう。」
「…え?」
言っている意味が分からなかった。なぜ、王が手紙の添削を?
「お前の性格は分かった。お前のことだから、恋文の一つもちゃんと書けないだろうから、私が見てやると言っているのだ。」
えぇぇ!? 心の中でシークは叫んだ。なんで、こんなことになっているのだろう!?
「……しかし、陛下、陛下にそのようなことをして頂くのは恐れ多く…。」
慌てて話していたら、息切れして最後まで言えない。シークにしてみれば、冗談ではない話だから笑い事ではないのだが、ボルピスの顔がさっきから笑っていることに、まったく気がつかなかった。
「とりあえず、書くのだぞ。もしかしたら、添削している暇はないかもしれん。」
王の言葉にシークは心底、ほっとした。実はシークがあまりに焦って具合が悪そうになっているため、ボルピスはからかいが行き過ぎたかと、そう言っておいたのだった。




