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教訓、二十七。隠し事は必ず見つかる。Ⅱ 9

2025/10/24 改

「…ところで、お前の年はいくつだ?」

「二十九です。誕生日がくれば、じきに三十になります。」


 王は頷いた。


「なぜ、結婚していない? 婚約を破棄(はき)したと言っていたな。なぜ、破棄した? いつ死ぬか分からないからだと言っていたが、その前に結婚していておかしくない。そもそも、婚約した後に子ができていておかしくないのに、なぜ結婚していない?」


 サリカタ王国では婚約後、子が出来てから結婚する。つまり、婚約して子ができない方が不思議がられるのだ。その上、婚約せずにできちゃった婚も普通であり、子ができたのに結婚しない方が密通という扱いになる。だから、きちんとした家では、必ず婚約をする。


 えーと…。なぜ、こんな話になったのだろうか。思わずシークは視線をさまよわせたが、王がじっと答えを待っているので、仕方なく口を開いた。


「……その…婚約者とは…八つ近く離れているので、なんだか妹のような感じがして、どうしても…そういう気分になれなかったので…。」


 王は眉間にしわを寄せた。


「年の差が八つだと?」


 その後、王は驚愕(きょうがく)の発言をした。


「たかだか八つではないか。年が二十も三十も離れているわけでもあるまいし。王族の結婚は年が十五の二十の差があってもする。政略結婚だからな。」


 シークは思わずびっくりして、王の顔を凝視(ぎょうし)した。


「十歳未満なんて、かなりいい条件だ。貴族でも喜んで結婚する条件だ。想定内だし、さすが、ヴァドサ家は良い条件を考えているではないか。もちろん、相手は親族会議で決まった相手だろう?」

「……は…はい。」


 なんだか、とても落ち着かない。


「早く子を作れと尻を叩かれないのか?」


 えっと、なぜ、こんな話になっているのだろう? すごく答えにくい。言いにくい。それでも、じっと王が見ている。答えないわけにはいかない。


「……その…婚約が決まってから、彼女が二十歳になるまで待ちました。それでも…その後は、母や長老方の命令で…休みの日には、二人でいるように言われていました…。」


 なんとか答えたものの、全身から汗が吹き出るし、顔も真っ赤になっているのが分かった。


「…ふむ。やはりそうだろうな。…まさか、お前は母や長老の命令を破ったのか?」


 な…なんで、こんなに追及してこられるのだろうか…。


「どうなのだ?」


 思わずあたふたして答えられないでいると、さらに追求され、シークは慌てて口を開いた。


「…い…いえ、そんなことは決して…!」


 口走ってしまってから、穴があったら入りたいほど恥ずかしくなった。王の顔を見れなくて深くうなだれる。


「ラブル・ベリー、心配しなくてよいぞ。」


 なぜか、王は衝立の向こう側に向かって、大声でベリー医師に呼びかけた。


(一体、何を心配しなくてよいと?)


 王の言いたいことが分からなくて、うつむいたままシークは首をひねる。


「こいつも男だ。ちゃんと婚約者とやることはやっているらしい。剣が恋人ではないようだから、心配ない。」

「!」


 シークは恥ずかしさのあまり、心臓がどうにかなりそうだった。早く…早くこの拷問(ごうもん)が終わって欲しい……。シークは切実に願った。


「まあ、シェリアが気に入っているくらいだから、初めてではないと分かってはいたが。」


 長距離を全速力で走っているかのように、心臓が早鐘を打っている。


「今度、サプリュに帰ったら、とっとと婚約者と結婚せよ。」


 はあはあ肩で息をしていると、王がそんなことを言った。


「お前の婚約者は、しっかり者の気立ての良い娘だろう?」


 なぜ会ってもいないのに、そんなことが分かるのだろう。しかし、答えないわけにはいかないので、必死になって息を整えてから、口を開いた。


「……そうです。なぜ…お分かりになったのですか?」

「簡単なことだ。お前はしっかり者のふりをして、抜けたところがある。夫婦そろって抜けていたら困るだろう。」


 やはり、王というのはただ者ではないらしい。たったこれだけの会話で、シークの性格を正確に見抜いてしまったようだった。

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