表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

242/582

教訓、二十七。隠し事は必ず見つかる。Ⅱ 4

2025/10/16 改

「ベイルは任務か?」


 シークが涙を拭いてから尋ねると、ロモルは頷いた。あの後、王に休んでいいと言われたが、若様にしてみれば顔見知りがいいので、ベリー医師の進言でシークの隊が引き続いて護衛することになった。


「みんなに負担をかけている。すまない。」


「…いいえ、違います。隊長が…一人で頑張っていたんです。私達はもっと頑張って良かった。そのことについて、少なくとも副隊長は分かっていたし…私達も、もっとみんなに言っておけば良かった。今さらですが。


 そうだ、朝、起きてからの見回りだって、二人一組の交代でやってるんですよ。隊長が朝から起きて見回っていたでしょう。あれもみんな、ちゃんとやっていますから。

 もう少し歩けるようになったら、ブムの様子を見に行ってやって下さい。隊長が行かないから、最近、不機嫌なんです。」


 ブムの話が出て、急に馬の様子を見に行きたくなった。馬も生き物だ。ずっとシークが世話をしてきたから、行かないのでおかしいと思っているだろう。


「そうか、分かった。」


 そんな話をしていると、地響きが聞こえてきた。


「…? 地響きだ。馬が走っているのか?」

「そうですね、何かこっちに向かって来てませんか?」

「とうとうブムが隊長を探して走ってるとか。以心伝心でこっちに隊長がいるって、分かったんじゃないんですか?」


 渡り廊下でそんな話をしていると、目の前に五、六頭の馬が走ってきて、通り過ぎた。


「ブム…!」


 ロモルが言った通りで、先頭を走っていたのはブムだった。思わず呼ぶと、見えたのもあるのだろう、すぐに方向転換してやってきた。

 ブルルルー、と勢いよく鼻息をかけながら、首を伸ばしてくる。


「ブム、ごめんな、行ってやれなくて。急に行かなくなったから、心配になったんだろう。」


 渡り廊下から手を伸ばして鼻面を()で、首も撫でると顔をこすってきた。外に面した渡り廊下だから、できることだった。


「あぁ、まったく、こんな所にまで入って…! こっちへ来い!」


 馬丁達が大慌てで走ってきた。


厩舎(きゅうしゃ)の柵を壊した犯人がいたぞ…!」


 その声を聞いた途端に、ブムが落ち着きなく動こうとした。


「ブム、お前か、柵を壊したのは?」


 シークが言いながら確認すると、足を少し怪我したらしい。


「まったく、怪我をしてるじゃないか。ごめんな。代わりに謝っておくよ。」


 馬丁達は渡り廊下に人がいることに気がついた。


「申し訳ありません。私の馬です。体調を崩し、世話に行けなかったので私を探しに来たようです。」


 シークは寝間着の上に上着を着ているだけの姿だったが、隣には制服を着たロモルがいて、馬丁達はシークだと理解した。慌てて駆け寄ってくる。


「! 隊長さんですか…!? しばらく見ないと思ったら…! どうしたんですか? そんなに痩せてしまって…びっくりしました。」

「本当に噂は本当なんですか…!? 毒を盛られたとか?」

「顔色が悪いですね。大丈夫ですか?」


 シークは馬丁達の間にまで、噂が広がっていることにびっくりした。


「隊員の他のみなさんに聞く雰囲気でもないし、みんな暗いし。」

「…そうでしたか。みなさん、ご心配をおかけしました。この通り、だいぶ回復してきました。まだ、しばらくかかりそうですが。その間、ブムのことをよろしく頼みます。柵を壊したようで申し訳ありません。」


 シークが頭を下げると、馬丁達は慌てた。


「いえいえ、隊長さん、頭を上げて下さい。馬だって分かってるんですよ。心配だったんでしょう。でも、脚を怪我して。ちゃんと世話をしておきます。他の隊員の方が世話をしてますよ。でも、私達も世話をしますから。」

「はい。ありがとうございます。」


 シークは言ってから、ブムの鼻面をゆっくり撫でる。


「ブム。落ち着いたか。ほら、迎えが来たから戻れ。」


 ブゥー、と大きく鼻息をはくと、ブムは体を引いた。


「元気になったら行くよ。」


 ブルル、と返事をするように鼻を鳴らし、ブムは馬丁達に引かれて戻っていった。一緒に脱走した他の馬達も連れ戻されていく。


「…では、私達も戻りましょうか。」


 ベリー医師に促され、王達がいることを思い出し、一気にシークは気が重くなる。


「馬でさえ、ちゃんと戻っていくのに、戻らないつもりですか?」

「…分かりました。戻ります。」


 ベリー医師にきつく言われ、仕方なく返事したシークだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ