表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

150/582

教訓、二十。油断大敵。 16

2025/06/23 改

「…殿下。今日はここまでに致しましょう。あまりに長々とお話ししすぎてしまいましたわ。」


 シェリアの言葉に、グイニスは我に返った。


「…ま、待って。私は…何か…分からないけれど、ノンプディとレルスリ…二人と話していたら、何かが見えてきた気がする。だから……二人ともっと話がしたい。今の話を聞いていたら…私は分かったような気がする。


 私は今まで権力が怖かった。私には、ただただ力は怖い物で…その力を持ったら、悪いことになるんだと思ってた…。でも、なんか分かった気がする…。

 もしかして…ノンプディ。私の王子の血筋とセルゲス公の位は、私の周りにいる人達も危険に巻き込むものだって…思っていたけど、でも…本当は逆に…私の周りにいる人達を守ることができる力なのかなって…話を聞いていたら、そう思った。」


 シェリアは驚いてグイニスを見つめていた。そして、にっこりと微笑んだ。


「ええ、殿下。さようでございます。使いこなせさえすれば、強力な力になります。でも、使い方には注意が必要ですわ。殿下はどうなさりたいのですか?」


 どうしたいのか、グイニスは問われて、自分は何をしたいのだろうと、今頃になって考えた。ただ、周りにいる人達を守りたいだけだ。それ以外は考えていない。


「……私は…私はただ、私の周りにいる人達を守りたい。ただ、それだけだから…。それ意外のことを聞かれても分からない。」

「それで、十分です、殿下。そのためには力を蓄え、身につけなくてはなりません。」

「…教えて。教えて欲しい。明日から…家庭教師の勉強は、少しお休みする。ここにいる間に…ノンプディやレルスリに力の使い方を教えて貰う。…私は…みんなを守りたい。それに、従兄(あに)上もお助けしたい。」


 グイニスの急な申し出にも、シェリアは嫌な顔一つしなかった。にっこりと微笑んだ。


「分かりました、殿下。そのように致しましょう。」

「…それで、聞きたい。どうして…ヴァドサ隊長に意地悪したら、彼を守ることになるの? 権力を見せつけることが…どうして、首府で起きることに関係あるの?」

「殿下。この屋敷にも密偵がおります。そのため、どのようなことが起こったか、サプリュに知らされているのです。」


 まさか、そこまでとは想像していなかったグイニスは、びっくりした。


「……それは、どうして? 私が…セルゲス公だから…? それに、誰がそんなことを?」

「殿下。密偵を送るのは必ずしも、敵ばかりではございません。」


 シェリアは静かにグイニスを見つめた。


「…どういうこと?」

「たとえば、陛下も送られています。」

「え? …叔父上が?」


「はい。殿下にとって叔父上でいらっしゃいますが、陛下は王でもございます。殿下にその気が無くとも、殿下を(さら)い、担ごうとする者が出て来ないか、また、殿下に危険が及んでいないか、そのために陛下は密偵を送られております。」


 グイニスは、そのことを把握しているシェリアの方に驚いた。


「どうして…密偵だと分かっているのに、そのままにしているの?」

「わざとですわ。」


 シェリアの目は研ぎ澄まされた剣のように澄んでいるが、口元は優しく微笑んでいた。


「わざと? …人数を全部数えているの?」


「ええ。知る限りは。そして、本当に危険な人物以外は、排除しません。なぜなら、その密偵を排除しても、新たな密偵が送り込まれます。そして、その新手の密偵が誰なのか、しばらく分からなくなります。

 そのため、わざと放置しているのです。知らないフリをして。分かっていれば、その人物だけ気をつければよいのですから。」


 シェリアの言葉に、グイニスは度肝(どぎも)を抜かされた。


「その密偵達が、殿下がどういうことをされているか、雇った者に逐一、報告しているのです。その結果、首府でたとえばヴァドサ殿に対して悪評を流すなど、そういうことが起こります。


 わたくしが、わざとヴァドサ殿に言い寄るのは、その密偵達にシェリア・ノンプディが言い寄っている、という構図を見せるためです。そうすれば、殿下と男女のような仲だというような、噂を流しにくくなります。それだけでなく、他の女性を使って首府に帰った時に言い寄らせる、などの手管を使いにくくもなります。


 なんせ、八大貴族のシェリア・ノンプディが気に入っていて狙っているのですもの。みな、わたくしが冷酷な女だと知っておりますわ。わたくしが唾をつけた殿方に何かしたら、後の仕返しが恐ろしいですもの。」


 したり顔のシェリアをグイニスは見つめた。


「……し、仕返しって?」


 思わず、グイニスは唾を飲み込んで聞き返した。


「そうですわねえ、サリカタ王国で生きていけないようにしますわ。ヴァドサ殿はおそらく、命を取ることは望みません。ですから、その程度にしてあげます。でも…時と場合によりますわ。」


(!…目が本気だ……。)


 グイニスはシークに何かあったら、シェリアが許さないのは本当だろうと思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ