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教訓、十八。惚れている人の目を覚まさせるのは困難。 12

2025/05/29 改

 すると、そこにフォーリが待っていた。さっき、確認すると言っていた。もう、やってきたらしい。


「話は聞いていた。」


 向こうから聞いていた話をしてくる。


「そうか。まだ、何も分かっていない。」

「そのメルという女だけが怪しいわけではないはずだ。ここに集められている侍女も侍従も、わざとできの悪い者を集めてあるようだ。」

「お前もそう感じたか? 私も薄々、そうなのではないかと思っていた。」


 フォーリはシークを見て何か迷うように考えていたが口を開いた。


「ティールに足止めされている間に、向こう側におそらくお前がどういう人間か、バムス・レルスリがお前を生かしたことが伝わっているはずだ。つまり、一番、狙いやすいのがお前だということだ。私が敵なら、まず親衛隊の隊長であるお前を殺す。そうなれば、親衛隊を機能不全にできるし、全体に動揺を与えられる。」


「…そうだな。私も敵ならそうすると思う。ニピ族のお前は、どうしても後回しにするだろう。手練れだと分かっている。」


 シークは頷いた。だが、お前が一番、危ないと言われても実感はない。確かに従兄弟達にはめられて悲しい思いもしたが、赤の他人に命を狙われる実感はない。しかし、フォーリは真面目に心配してくれている。若様のためだとはいっても、忠告してくれるのはありがたかった。


「今、部下達が調べているが、早ければ今夜、何か動きがあるかもしれないと言っていた。」

「分かった。気をつける。お前の部下達は優秀だ。ただ、みんなお前に似て人がいいようだ。その分、心は傷つきやすい。」


 確かにロルも傷ついていた。本当にメルが悪い女だったら、後でどうやって(なぐさ)めってやったらいいのだろう。


「心を(きた)えるのは難しいし、どんなことでも同じだが苦労する意外に道はない。失敗の上に同じ失敗をするまい、と学ぶ意外に道はない。」


 フォーリが珍しく慰めてくれている。よほど、悩みが表情に出ているのだろうか。これは、まずい…。シークは気を引き締め直した。


「つまり、私が言いたいのは、周りがどれだけ言っても、聞く耳を持たなかったら、私達の出る幕はない。つまり、本人がその責任を負うしかないし、本人が身をもって学ぶしかない、ということだ。」


 ロルのことを言っている。だから、シークがいくら悩んだところで、答えは出ないと言っているのだ。前回のような失敗をしたら良くない。おそらく、フォーリはそのことも懸念している。


「すまない、フォーリ。大丈夫だ。そんなに悩んでいるわけではない。少しの間にみんなから、何か言われたんだろう。だから、オスターは謝罪に来た。一緒にメルのことを確かめるようだから、その辺はもう、ベイル達に任せてみようと思っている。」


 シークの答えにフォーリも納得したようだ。


「大丈夫なら、一つ、頼みがある。私が若様のご入浴や寝室の準備をしている間、若様の護衛をして欲しい。ベリー先生も何かとお忙しいようだから、お前に頼むしかない。」

「分かった。ベリー先生にも、前に頼まれていた。」


 二人は一緒に若様の部屋に戻ったのだった。


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