第9話 知られてしまった秘密
「アイリス殿、俺とで、でで、デートしないか!?」
レックス様と出会ってからしばらく経ったある日、今日はハーウェイ家の庭で一緒にお茶をしていると、唐突にレックス様が切り出してきた。
唐突と言っても、先程からレックス様の心の妖精が、
『デートに誘いたい! でもまだ付き合ってもないのにデートなんて言ったら、きっと驚かれてしまう! もしかしたら気持ち悪いと思われて、嫌われてしまうかもしれない!』
といった感じに、ずっと悩んでいたのを見てきたので、実は知っていたんですの。
別に悩む必要なんてないですのに……少なくとも、私は出会ってから、互いになにか用事のある時以外、毎日のようにお会いしているレックス様から、お褒めの言葉や愛情をいただいております。そのおかげで、この世界でただ一人……レックス様だけは信じられるお方になっております。
そんなレックス様とだったら、デートに行っても良いと思っていたので、ずっと言葉にしてくれるのを待っていたんですの。
「はい、喜んで」
「そうだよな嫌だよな……え、いいのか!?」
「はい」
「……や……やったぁぁぁぁ!!!!」
思わず耳を塞いでしまうくらいの大声で喜ぶレックス様。耳は犠牲になりましたけど、ここまで喜んでいただけると、こちらも嬉しくなってしまいますわ。
「でも、どうして急にデートのお誘いをしてくださったんですか?」
「ほら、もうすぐ君の誕生日だろう?」
「……覚えていてくださったんですね」
実は一週間後には、私の誕生日が控えております。以前レックス様に聞かれた際にお伝えしてあったんですが、しっかり覚えていてくださったんですね。とっても嬉しいですわ。
……これは秘密ですが、レックス様ならお祝いしてくださるかもと、淡い期待はしておりました。
「本当ならサプライズにしたかったんだが、恥ずかしながら俺は隠し事が苦手だ!」
そうですわね。もし私が心が見える魔法が使えなくても、レックス様の考えてる事の半分以上はわかると断言しても良いですわ。
「だから、誕生日にアイリス殿の欲しい物をプレゼントして、その後もデートをしたいと思ったわけだ!」
「そうだったんですね。私のためにありがとうございます」
「礼には及ばん! 愛するアイリス殿のためだからな!」
「はうぅ……」
出会ってからずっと愛の言葉を言われ続けていますが、未だに慣れる気配はありません。
それに……どうしても私はレックス様の愛に素直に応える事が出来ません。レックス様が私を裏切るような事は無いとは思っています。問題は私なのです……いくらレックス様が褒めてくださっても、彼の隣を歩くのに相応しい女だと、未だに信じられないんですの。
いつかはちゃんとしたお返事をしないといけないのに……どうすればいいんでしょうか。なにかきっかけでもあればいいんですが……。
「では来週のアイリス殿の誕生日に、二人きりでデートをしよう! 街にある中央噴水に、朝の十時に集合にしようと思うんだが、どうだ?」
「私は構いませんが、その日は集合なんですか?」
いつもは必ずお迎えに来てくださるのに、どうしてその日だけは待ち合わせなのでしょうか?
「い、いやぁ……ほら! たまにはいいだろう!」
『い、言えん! 妹に借りたラブロマンスにあった、恋人が街中で待ち合わせをするシチュエーションをやってみたいだなんて……!』
申し訳ありませんが、全部筒抜けですわ……って、レックス様には妹様がいらっしゃるのね。知りませんでしたわ。
それにしても、ラブロマンスの真似事がしたかったなんて、レックス様にも可愛らしい一面がございますのね。ちょっとしたギャップというやつですわ。思わずドキッとしてしまいました。
「へぇ……随分と楽しそうに話してるじゃない」
「え? あっ……ディアナお姉様……」
「おお、ディアナ殿! 実はアイリス殿の誕生日にデートに誘っていてな!」
せっかくレックス様と楽しいお話をしていたのに、それを邪魔するようにディアナお姉様がやってきました。
あまりにもタイミングが良すぎる……恐らく私に心の妖精の声が届かない所から見ていたのでしょう。
「ところでレックス様は、随分とアイリスに入れ込んでるみたいだけど、あなたご存じ? こいつが人間の皮を被ったバケモノだって」
「お、お姉様!?」
急にいらしたと思ったら、何を言い出すんですの!? やめて、それだけはレックス様に言わないで! 心が見える魔法の事を知られたら、絶対に嫌われてしまう! これでレックス様に嫌われでもしたら……私……私っ!
「ほう、それはどういう事ですか?」
「やめて! 言わないで!!」
「アイリスは、人の心が見える魔法を常に使っているの! つまり……あなたの考えている事は、全てアイリスに聞かれているのよ!」
「なっ……!?」
——ああ、終わった。これでレックス様にもバケモノと罵られて、嫌われてしまう。私は、また孤独になるのね……。
「心が見える魔法……古い文献で少しだけ読んだことがある。確か妖精なようなものが見えて、それが心で思っている事を代弁すると……」
「よくご存じで! まさにそれよ!」
ディアナお姉様は満足そうに頷きながら、私へと視線を向けました。
『ふふっ、バケモノだってばらしてやれば、いくらこの男でも幻滅するに決まってる! 誕生日にデートに誘われて浮かれているところで嫌われれば、さぞかしつらいでしょうね! 暴露するタイミングを窺って正解だったわ~! ざまぁみろってね! バケモノはバケモノらしく惨めな生活をしてればいいのよ! ほらこの声も聞こえてるんでしょ~? ねえ今どんな気持ち~??』
「っ……!!」
今までディアナお姉様には、散々酷い事をされてきた。でも、今ほどディアナお姉様が憎いと思った事はない。
どうしてそんな酷い事をするの? 私があなたに一体何をしたっていうの? どうして……私をそんなに苦しめるんですの……!
「心が読めるという事は……ずっと俺の思っていた事が筒抜けだったのか……そんなの……」
お願い、そこから先は言わないで……! あと少しでいいから、私に幸せな時間を過ごさせてください……!
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