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第2話 唐突な告白

「いや~、普段はパーティーには参加していなかったのだが、たまたま参加したパーティーで、こんな見目麗しい令嬢に会えるとは、俺も幸運だった!」


 ――結婚を前提に付き合ってくれ。


 そのあまりにも直球な愛の言葉に対して、私は深々と溜息を吐いてしまいました。


 この人もハーウェイ家の血が欲しいんですね。はあ……まあいいわ。とりあえず心を見てしまえば、相手の思惑がわかります。


『うおぉぉぉぉ!! 初対面なのに言ってしまったぞ俺!! とりあえず噛まずに言えて安心……だが! なぜかキョトンとした顔をされてしまった! さすがに出会って即告白はマズかったか!? あぁ……でもそんな顔も美しい……こんな女性がこの世にいていいのか!? そもそも、強い魔力で有名なハーウェイ家のご令嬢だったなんて!』


 ……この方の心は、ずいぶんと賑やかだわ……でも、口で言っている言葉と、心の妖精の言葉はだいたい合っている気がする。


 それにしても、驚きですわ。ハーウェイ家の血を求めていないのもですが、こんなに口に出した言葉と、心の妖精の言葉が一致している方は見た事がありません。


 あ、どうでもいいかもしれませんが、私は心が見える魔法で見える妖精の事を、心の妖精と呼んでいますの。


「……その、手を放してくれます?」

「おっと、大変失礼した! なにぶん一目見て惚れてしまい、そのまま舞い上がってしまってたもので!」

「そ、そうなんですか……それで、その……どうして私が美しいとか仰っていられてたんですか? 私、そんな風に自分を思った事がなくて」

「…………」

「レックス様?」

「その謙虚さ……なんて素晴らしい人だ! 俺は……感動しだぁぁぁぁ!!」

「…………」


 なぜかはわかりませんが、レックス様は突然滝のような涙を流しながら、その場でうずくまってしまいました。心の妖精も同様に涙を流しているので、この言動も本心みたいですわ。


 なんていうか、悪い人じゃなさそうな気はしますけど、いろいろと凄すぎて、ついていけませんというのが本音です。


「では、僭越せんえつながら、俺が伝えさせてもらう! 君の美しい所は、その謙虚なところはもちろん! 青い空にも負けていない、綺麗な水色の髪! トパーズのように輝く大きな瞳! そして先程も申した洗礼された佇まい、喋り方……そして心の強さと優しさ! 今日出会ったばかりなのに、これほどの美しい点を知れた俺はなんて……なんて幸せ者なんだぁぁぁぁ!!」

「え、えぇ~……」


 これ、私はどう反応すればいいのでしょう。いつもみたいに心の妖精が醜い事を言ってるのだったら、適当にあしらえばいいんですが……この方は本心で私の事を褒めてくださってます。そんな時の対処法は、残念ながら持ち合わせておりませんわ。


「そう仰られても……私はそんな褒められるような価値のある女じゃありません。私よりも素晴らしいお方はたくさんいらっしゃいますわ」


 そう、私はバケモノ……どんな人でも隠しておきたい、心に秘めたものを勝手に見てしまう、気持ちの悪い存在。そんな私には、褒められる資格も、愛される資格も、生まれた意味もありません。


「誰がそのように決めたかは定かではないが、俺にとって、アイリス殿は十分すぎる程の価値があるから問題ないな!」

「でも……私は……」

「なら、俺がアイリス殿と一緒に過ごして、どれだけの価値があるかを伝えようではないか!」


 嘘偽りのない心と、真っ直ぐな目。それは私の心から、僅かとはいえ、不信感と不安感を消してくださいましたわ。


「それでどうだ、俺と付き合ってはくれないか? 俺の愛は本物だぞ! なにしろこれが初恋だからな! 他の女に興味も無い! 君の望む事なら、なんだってしようじゃないか! 君のためなら、たとえ火の中水の中!」

「……なら、地獄の底で凶悪な悪魔が守っているという、賢者の杖を取ってこいと言ったら取ってきますか?」

「なんと! そんな杖があるのか!? よし、俺にまかせ――」

「冗談ですわ! だから真に受けないでくださいまし!」

「む、そうなのか?」


 まさか本当に探しに行こうとするとは思ってもみませんでした……この方、将来変な人に騙されたりしないかしら。人間嫌いな私ですら、不安になってしまうくらいですわ。


『なんだ嘘か! だがよかった……そんな過酷そうな所に行ってしまったら、愛するアイリス殿との時間が取れなくなってしまう! そんなのつらすぎる!』

「…………」


 よ、妖精の声を使って不意を突くように想いをぶつけてくるのは卑怯だと思いますわ。この方はどれだけ私の事が好きなんでしょうか? そもそも一目惚れも信じられませんし、仮に一目惚れだったとして、そんなに好きになれるものなのかしら?


「と、とにかくあなたのお気持ちはよくわかりました。ですが、今日初めてお会いした方に、急にお付き合いと言われても困ります」

「い……言われてみれば確かに! これは大変申し訳ない! ではまずはご友人ということから始めさせていただいても!?」

「………………………………まあ、それくらいなら」


 自分で答えておいてなんですが、人間嫌いでバケモノな私にお友達ができるなんて、人生で初めての経験ですわ。


 それにしても、どうして私はレックス様の願いに了承してしまったのかしら? 人間なんて誰も信じられない私が……。


「ありがとう、アイリス殿! このレックス・ディヒラー! 今日以上に嬉しい日はないぞ!」

『よかった! 嫌われなくて本当によかったー! 勇気を出して声をかけてよかったー!! うおぉぉぉぉぉん!!』


 ……声も心の妖精もうるさいのが玉にキズですが……邪な事は考えておられないようですし、悪い方ではない……ですわよね?


「ではアイリス殿! 友人から恋人に昇華するために何をする!? 散歩か? 乗馬か? ショッピングか? 食事か? 君の望む事ならなんでもしよう!!」

「か、顔が近いですわ!」


 もう少し顔を前に出したら触れてしまうのではないかというくらいまで顔を近づけるレックス様から、咄嗟に距離を取った私の顔は、驚きと緊張で顔が熱くなっていました。


 あービックリしましたわ……少しは距離感というものを覚えてほしいものですわ! いくら人間不信な私でも、異性にそんなに顔を近づけられたらドキドキしてしまいます!


「っと、これは失礼!」


 ……それにしても……なんてキラキラした目なのかしら……まるで純粋な子供の様な目。心の妖精もそうですけど、この方は本当に穢れを知らない方なんでしょうね。正直、少し羨ましい……。


「と、とりあえず今日のところはお引き取りくださいませ」

「うむ、わかった! ではまたすぐに会いに来るから、それまで達者でな!」

『うおぉぉぉぉお!! やったぞー!! 今日は盛大に祝うぞー!!』


 言葉と心の妖精の二重の喜びによる声は、あまりにもうるさいものでしたが……まあ他の醜い方々と比べれば、全然ましかもしれませんね。声が大きすぎて、耳がキーンってしますけど。


 それに……彼といれば、バケモノとして恐れられる私が、なぜ生まれてきたのか……わかるかもしれません。


 もしも……私にもそんなのがあったら……とても嬉しいですわ。

ここまで読んでいただきありがとうございました!


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