魔王城へ
ま!そうと決まれば回復だな!神の恩恵あれ、第4階位魔法パーフェクトヒール」
俺がそう唱え終わると緑色の光が魔族に集まり身体中と傷が癒え始めた。
魔族の傷はものの数秒で完治し戦う前の状態に戻った。
一瞬の出来事に魔族は驚いたような顔で言う。
「これは、第4階位魔法、、貴様我を回復してどういうつもりだ」
「いや?お前言ったじゃん、魔族側来いって。行くって決まったならお前は仲間じゃん?話したいこともあるし」
「ほんとに来る勇者がいるか!だがまぁ何だ、感謝する」
少し呆れたような口調でそういう魔族
「で?お前名前は?」
「戦う前名乗っただろう!!忘れたのか貴様!」
「いやー、なんだっけ?あるば?めんば?だっけタラバだった気も」
「メルバだ!メルバ・バルバトス!」
「あ〜そうそう!俺はレイルだ。レイル・グランウォーカー」
「レイルか、覚えよう。それで?本当に来るのか」
お互いの名前を名乗り合いメルバは尋ねた。まだ目は懐疑的だ。メルバは何か策があるのではないか、と考えていた。普通に考えれば人間にとっての最大勢力である勇者が魔族側に寝返るなど前代未聞でしかない。
死にたくない一心で放った言葉ではあったため未だに疑いの目を向けていた。
「まぁなー。人間社会にも勇者にもうんざりなのさ」
「そうか、今は信じよう」
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草木が生い茂る森林の木に飛び移りながら俺ら2人は音速にも到達する勢いでどこかへ向かっていた。
「で、どこへ向かっているんだ?」
「魔王城だ、もう少ししたら魔族領に入る。魔族領の中心に魔王城がある。もうすぐ着くだろう、、、それでだ貴様相変わらず本当に人間か?僕はこれでも四天王だ。魔族の中でもいや、四天王の中でさえも僕は身体能力は高い。なおかつ身体強化を施している。今の僕の早さを超えるのは魔族でも四天王1位と魔王様くらいだ」
「まぁ、俺身体強化魔法は割と得意なんだよ。好きで練習してたのもあるな〜」
「好きで練習して貴様くらいになれたら苦労しないんだよ」
「まあそう言うな。今の速さでもまだ3割くらいだ」
「、、化け物め」
そんなにたわいもない話をしながら俺らは走る。
「そういえばメルバ、お前なんで人間領になんで来てたんだ?」
そう、何者かが人間領で不審な行動を取っているという情報が上の方に入り、まずはじめに正体をつきとめるという任務が言い渡された。
バレないように捜査をし、四天王と発覚。
俺が単独で森林に呼び寄せ討伐するという流れだった。
メルバが、人間領で行っていた事は
・紅晶石という人間領でよく採掘される鉱石を買い占めていたこと
・勇者育成科・剣術科・魔法科について調べていたこと
・勇者の情報を調べていたこと
・アストラルリーフと呼ばれる神話に登場する伝説の薬草について調べていたこと
俺が調べた限りでは以上4つだった。
この4つの関連性について俺は正直よく分からない。
聞くのが手っ取り早いと思ったのだ。
またこれらの情報を俺が知っているということは恐らくメルバは知らないであろう。
ここは知っていることを伝える前に聞きだし信用を得れているか確かめるのがいいと思った。
「うむ、実の所僕もよく知らされていないのだ。魔王様の命令は絶対だ。僕は4つの命令を受けた。1つ、紅晶石を買いしめること。2つ、教育機関について情報を得ること。3つ勇者について情報を得ること。そして4つ、神話に登場するアストラルリーフについて情報を得ること、だ。」
「何故そんなことをした?」
「魔王様からの命令に従ったとしか言えない、僕程度が魔王様の脳内を理解するなどおこがましいのだ。僕らは魔王様の部下にして駒だ。魔王様のためにこの命がある。」
「見上げた忠誠心だな。」
「忠誠こそが僕らが存在する目的だ」
ここまで正直に話すとは正直思っても見なかった。普通ならば未だに疑い深くは話さないはず。
「詳しく話してくれるんだな」
「信頼とはこちらが信頼しないと始まらないであろう。それに貴様ならば今ここで僕を組み伏せ尋問することも出来る。嘘をつく方が怖いからな」
「もう僕は人間側にいないのは本当だが、そこまで信頼してもらえているのはありがたいな」
こいつほ、律儀なだけなのかそれとも策士かそれとも魔王が策士なのか、または、ただの馬鹿か。今は分かりかねるな。
俺も大概だが魔王に忠誠を誓っているなら勇者を魔族側にスカウト、なんて真似は不自然だ、俺が回復した時に全力で姿をくらますはずだ。まあそんなこと俺はさせないが、だ。それが自然な反応というものだろう。俺も大概不自然な行動を取っているがこいつも大概だ。
もし仮にメルバの言っていることが本当だとすれば、魔王は何を考えているのだろうか。
まあそれも魔王に会えば分かる。
今は魔王城を目指そう
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「着いたぞ」
メルバにそう言われ、俺の目の前に広がっていたのは20mほど塀に囲まれた町と塀よりも遥かに高くそびえ立つ城だった。