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ストレス
この家で一人息子として暮らし始めてから早数ヶ月。母が時々見ている育児指南のようなテレビ番組では、育児において降りかかる様々な困難が流れていた。
母は恐らく世間的にそれなりに恵まれた環境であると言えるのだろう。母の両親や祖父母は非常に協力的で、母を気にかけている。父が仕事で不在の際も頼れる相手がいるようだ。
しかし問題はその母である。
どうやら我が母親はそれがストレスになってしまっているように見えて仕方がない。父もテレビの中のように帰りが遅い訳ではなく、午前、午後共にすぐ近くにいるようで、母の手助けをしている。それもあってか家事が滞ることも無く、結局母を手伝いに来た人はなにかすると言うよりは母と談笑しては帰っていくのだ。
ならば、と。
俺は両親以外の人間をできる限り拒否した。そもそも不特定多数に触れられるなど耐えられたものでは無い。
これは利害の一致だ。
そう考えて実行に移せば、『俺のストレスになる』という理由で人がこの家に来ることが少なくなった。
そして、何故かそれまで以上に俺が両親より甘やかされることとなっていった。